台湾幼児教育協会の皆さんと協会の顧問である翁麗芳教授・鍾志聡教授が、あおぞら保育園の見学にいらっしゃいました。
台湾幼児教育協会では保育研修の一環として海外視察を行っており、今回は日本の保育・幼児教育を学ぶために来日されたそうです。
皆さんとても熱心で、細かいところまで見られ、質疑も予定時間を越えての実施となりました。
台湾幼児教育協会の皆さんと協会の顧問である翁麗芳教授・鍾志聡教授が、あおぞら保育園の見学にいらっしゃいました。
台湾幼児教育協会では保育研修の一環として海外視察を行っており、今回は日本の保育・幼児教育を学ぶために来日されたそうです。
皆さんとても熱心で、細かいところまで見られ、質疑も予定時間を越えての実施となりました。
コロナ禍により、世界中が一変した三年間。
当然のことながら子どもたちの生活も変わり、たくさんの我慢を強いられた日々でした。
それがこの5月、新型コロナ感染症が〝5類感染症〟に置き換わり、ようやく長いトンネルの出口が見えたようです。
もちろん、この先のことは誰にもわからないですが、それでも大きなものをひとつ超えた、そう信じて前に歩き出してもいいんじゃないかって、そんな思いではじまった5月の「にじいろワークショップ」です。
そこで今回は、この三年間に溜め込んだ子どもたちの重い気持ちを、青空の下で春の新鮮な空気を感じながらおもいっきり発散できたらと思い、当ワークショップの松澤先生が特別に企画したプログラムです。
テーマは、『日常の生活ではなかなか許されないことだけど、それを堂々とやらせてあげたい!』
それを実施する場所として選んだのは、なんと車専用の駐車場です。
と言ってもご心配なく・・・当園に隣接した送迎用駐車場ですから、関係車両以外は入出できません。
では、その駐車場でなにをするのか?ということですが、その広い敷地すべて(全面)をキャンバスにして、子どもたちに絵を描いてもらいます。
絵を描くというよりは〝らくがき〟あそびをする、という方がわかりやすいかもしれませんね。
ですから、絵を描くための画材(道具)も〝らくがき〟あそびにふさわしく、自然から採られた「ろう石(せき)」を主に使用します。
「ろう石」と聞いて、ある世代の方にはとても懐かしく思われることでしょう。
特に昭和世代の子どもなら一度は手にしたことのあるものですし、それを使ってアスファルトやコンクリートでできた道路や壁に〝らくがき〟あそびをしたものです。
しかしいまでは「ろう石」をご存知ない方が多いかと思いますので、簡単にその説明をしておきます。
「ろう石」とは、蝋のような光沢や感触を持った、半透明でやわらかい鉱物や岩石を指します。
今回使用するのは「石筆(せきひつ)」と称される、筆記用具のように細くきれいにカットされたもので、主に建設現場などにある鉄板やコンクリート面などに作業のための記号や文字を書き入れるときに使用するものです。
また同じく自然界の成分を含んだ「カラーチョーク」も用意したので、併せて使うことにしました。
ではさっそく、子どもたちと一緒に園の門を出て駐車場に向かいましょう。
気温はやや高めですが、天気はまずまず。
季節的にはちょうどいいころ合いかもしれませんが、そんなことをいちいち気にするのはおとなだけ。
子どもたちはいつもと違った環境、しかも青空の下というだけで解放感に満たされ、誰もが弾けるような笑顔ではしゃぎまわっていました。
まずは年中クラスの子どもたちですが、みんな揃ったところできちんと整列して先生へのごあいさつです。
子どもたちはここでなにがはじまるのか、そわそわ、わくわくと、なんだか落ち着かないようす。
先生はそんな子どもたちに大きな輪を描きながら広がるように促し、いつものウォーミングアップをはじめました。
心なしかそれさえもいつも以上にのびのびとしていて、とても楽し気に見えました。
子どもたちのからだも気持ちも十分にほぐれたところで、先生はその場に座り込むように言いました。
次に先生はゆっくりと地面に自分の両手のひらを押し当てて、
「みんなも地面に手をおいてごらん」と言いました。
子どもたちもそれに倣って地面に手のひらをつけました。
その瞬間、
「熱(ア)ちっ!」
「ほんとだ、あついぞ~」とみんなおどろきの声を上げました。
アスファルトでできた駐車場の地面は、朝からそそがれた太陽の陽射しで温度が高かったのです。
さらに先生は地面をゆっくりなでながら、
「この地面はたいらで、廊下みたいにつるつるしてるかな?」と聞きました。
すると子どもたちもいっせいに地面をなでてみて、
「たいらじゃないし、つるつるしてない!」
「ざらざらで、でこぼこだ」
と、見た目の予想に反していたのか、やはりおどろきの声で答えました。
子どもたちがいつも見ていた駐車場の地面は、きっと冷たくて、たいらでつるつるしているものと感じていたのでしょうね。そんな思い込みは、いっぺんに吹き飛びました。
先生はいつも、こう話しています。
「対象となる素材(今回は自然環境としての地面)を自分の手や足で直接触れること。
子どもたちには、つねにそうした皮膚感覚を大事に欲しい。
いまは触れたことがなくても映像や動画で簡単に見られるから、そのものが持つ感触さえもイメージや第三者の説明だけで決めつけてしまいがちです。
でも実際に触れてみると、温かい、冷たい、つるつる、でこぼこ、硬い、柔らかいなど、見た目とは違っているものです。
本来、そこから得られる情報は、頭で想像する以上に深くて大きいのです」
さて、いよいよお絵描き、いえ、〝らくがき〟あそびの開始です。
先生は1本の「ろう石」を取り出して、地面に絵を描きはじめました。
「石の棒なのに、こんな地面に白い線が描ける!?」
そんな心の声が聞こえてきそうなほど、子どもたちは不思議なものを見るようにじっと見つめていました。
突然ひとりの子どもが言いました。
「先生、こんなところで〝らくがき〟してもいいの?」と。
先生はすぐさま笑顔で答えます。
「そう、ほんとはここでこんなことしちゃダメだよね。でも今日は特別だから、いいんだよ!
この駐車場いっぱいに〝らくがき〟してね」
先生と保育士が子どもたち一人ひとりに「ろう石」を配りました。
最初はどの子も初めて手にするその画材(道具)に戸惑っているようでしたが、一度使い出すとあっという間に上手に使いこなします。
子どもたちのすばらしさは、おとなのように周囲を気にしたり遠慮や躊躇することがなく、自ら積極的に実践していくところです。これは、おとなも見習うべき点ですね。
子どもたちにとって、これほど広くて大きなキャンバスに絵を描くのは初めてです。
それは年中・年長クラス共にそうですし、おとなにしてもこのような経験を持っているひとはそうそう居ないと思います。
それでも子どもたちは臆することなく、どんどん敷地内(地面)のあちらこちらに描いていきます。
年中クラスの子どもたちは、点や丸、四角から描きはじめ、そのうちそれがなにかの形になり、さらにそれらが集まって大きなかたまりの絵になりました。
また一本の道のような絵から、それが二本の線に変わり、長くまっすぐに伸び、途中でカーブし、しまいには本物の電車が走っていきそうな線路になりました。
なかには地面だけでは飽きたらないのか、隣接する園と駐車場を隔てた壁にも描き出す子がいました。
それから、おもしろいことに気づいた子どもたちが、
「先生、地面よりここの方がすべすべしていて描きやすいよ!」
と大声でいうので行ってみると、なんと駐車場の各レーン内に設置されている車止めブロックのことでした。
確かに触ってみると手触りがよく、たいらですべすべになっているため「ろう石」の描き具合が地面に比べてなめらかでした。
どのように発見したのかはわかりませんが、これこそ実際に触れた感触から得た確かな気づきです。
しばらくして、色のある「カラーチョーク」も配りました。
「ろう石」だけの白線で描いたものに色を加えることで、その〝らくがき〟がまた別のものに見えてきます。
もちろん「カラーチョーク」だけで描き出すのもOKです。
年中クラスの子どもたちは、ワークショップの終わりに自分の手のひらを自慢げに見せてくれました。
どの子の手のひらも「ろう石」の白い粉や、「カラーチョーク」の色彩に染まっています。
地面の絵を消そうとしてこすったのでしょうか、それとも手のひらを地面につけながら次々と描いていったからでしょうか、いずれにしても夢中で描いた証です。
年長クラスの子どもたちには、もう先生からの細かな説明は不要です。
はじめに先生が「ろう石」の使い方について見本を見せると、子どもたちはその場で試し描きをはじめました。
あっという間に描き方を会得したようで、先生はすぐさま好きな場所で、すきな絵を描くように指示しました。
それから先は慣れたものです。
この広くて大きなキャンバスを自由に駆け回り、自分の描きたい場所を見つけ、仲良しの友だちと、またはひとりで描きはじめました。
さすがに年長クラスの子どもたちは、最初から形のあるものを描きます。
なので「カラーチョーク」も併せて配り、画材の選択肢をひろげました。
ひとつの場所で描き終えると、またその次の場所へと自ら移動していきます。
やはり隣接する園と駐車場を隔てた壁や車止めブロックにも目をつけたようです。
さらには駐車スペースを示す白ラインの上までびっしり絵で埋まっていきました。
それも具象的な形や抽象的な模様だったり、地面との色合いを考慮した色彩のおもしろみであったりと、そこに表現された〝らくがき〟は、全体で見ても、個々で見てもすでに〝らくがき〟とは言い難いものがたくさんありました。
いく人かの子どもが年中クラスの子どもたちの描き残していった線路をみつけ、さらにその線路を駐車場のいたるところに描き足していきました。俯瞰で見れば、まるで現実に存在する路線図のようです。
ワークショップの終わりが近づいたとき、子どもたちがひとつの提案をしてきました。
それは、地面に描かれたそれらの線路に沿って、みんなで電車ごっこのように走りたい、というものでした。
そこで、せっかく何本も線路があるのだから、先生も交えていくつかのグループに分かれ、それぞれのグループが描いた線路の出発点上に並び、号令と共にいっせいにスタートしよう、ということになりました。
先生の「よーい、出発!」のかけ声と共に、各線路の出発点にいたグループは同時に走りはじめました。
直進するグループがあれば、くねくねと曲がってばかりいるグループもあるし、線路が敷地の端まで行っていきなり線路が消えていたのか、あわてて引き返すもグループもあり、交差する線路上ではいくつかのグループが衝突する始末で、行ったり来たりの大騒動となりました。
それでも、どのグループの子どもたちもとびきりの笑顔で、時間いっぱい走り続けていました。
わずかな時間でしたが、年中・年長クラス共に子どもたちのこの三年間の重い気持ちがおもいっきり吹き飛んでくれたらいいな、と思います。
最後になりましたが、企画・指導する松澤先生に今回のワークショップを振り返っていただきました。
まずは地面に描くということですが―
「地面への〝らくがき〟は、日常のお絵描きと違って、手先や腕ばかりではなくからだ全体の動きを使って痕
跡を残すという行為です。
幼少期の絵画はからだの動きそのものですから、情緒や知性といったものを盛り込むような表現ではなく、敢えて身をもって体感したものをそのまま素直に写し出して描くということに意味があります。
それも画用紙のような小さく区切られたスペースではなく、今回のような子どもたちにとっては限りなく広く大きなキャンバスに向かうという、それだけでも貴重な経験になったはずです」
具体的な成果などはありますか―
「直接手のひらや指で感じ取ったままの情報にからだ全体で反応し、それをいかに表現していくかというのはなかなか普段の生活ではできませんからね。今回はそれが実践できたことです。
はじめは対象とする地面によってガタガタしたり、ざらざらしたりと描きにくさを感じたはずです。
そのうちに子どもたち自身が、車止めブロックならスムーズに描けるということを発見しました。
これって、簡単なことのようで意外にすごいことです。
また、年長クラスの子が最後に線路を走ろう、と言いだしたことにも感心しています。
私や保育士に言われたものではなく、おそらく自分たちで描いた痕跡を見て思い浮かんだのでしょう。この発想を導き出したことがとても大きな成果ですし、重要なことです」
さらに先生は話しを続けて、こう締めくくりました。
「最初は目的などない〝らくがき〟あそびではじまりましたが、最後は子どもたち一人ひとりが目的をしっかりもった〝らくがき〟あそびに変化、成長していったこと。これは目に見えない、形には表れないことですが、確実にひとつの得難い成果だったといえるでしょう。
子どものうちは、はじめから〈アート〉として何らかの目的を持たせて学ばせても意味がないんじゃないか、むしろそのことを進めていくうちに自分なりに少しずつ目的を見つけたり、気づいたりしていく方が自然に〈アート〉を捉えることができるんじゃないか、そんなふうに考えています」
春の空気を感じて~らくがきあそび~
春の柔らかい風や、暖かい空気の色はどんなイメージかなと考えます。
ふわふわ、さわさわ、ポカポカをどんな風な色で表現できるかな。
少し特別なチョークやパステルを使って指や手で擦りながら描く面白さに触れたいと思います。
written by OSAMU TAKAYANAGI
事務連絡
令和5年5月10日
市内保育施設
施設長 各位
羽村市子ども家庭部
新型コロナウイルス感染症に罹患した子どもの再登園について
日頃より、羽村市の行政運営にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、新型コロナウイルス感染症に関する令和5年5月8日以降の対応につきましては、令和5年5月2日付の事務連絡でお願いさせていただいたとおり、国の「保育所における感染症対策ガイドライン」に沿った対応に取り組んでいただいていることと思います。
その中で、新型コロナウイルス感染症に罹患した子どもの再登園にあたっては、「検査陰性証明書の提出を求める必要はない(ガイドライン31ページ参照)」旨をお伝えしておりますが、ガイドラインでは、「子どもの負担や医療機関の状況も考慮して、各保育所において、市区町村の支援の下、地域の医療機関等と協議して、その取扱いを決めることが大切である(ガイドライン82ページ参照)」と記載されております。
そのため、市におきまして、羽村市医師会会長に確認を行ったところ、新型コロナウイルス感染症については、「これまでも再登園にあたって医師の意見書などの提出を行っていない状況も踏まえ、医師の意見書などの提出を求める必要はないと考える」との見解を示していただきました。
このことを踏まえ、市内保育施設におかれましては、再登園にあたって医師の意見書の提出を求めることはせず、登園届の提出などにより対応いただくようお願いいたします。
令和5年5月2日
保護者の皆様
社会福祉法人陽光福祉会
理事長 大庭正宏
2023年5月8日以降の新型コロナウイルス感染症にかかる対応について
新型コロナウイルス感染症が、2023年5月8日をもって五類感染症に移行することに伴い、「保育所における感染症対策ガイドライン(こども家庭庁)」が一部改訂されました。これを踏まえ、あおぞら保育園における2023年5月8日以降の新型コロナウイルス感染症にかかる対応を下記の通りとさせていただきます。
【現行】
園児及び園職員が5名以上同一の感染源から感染したと疑われる場合は休園となる場合がある。
【2023年5月8日以降】
今後は休園は行わない(多数の職員が感染し、職員体制が整わない場合、休園を行う場合がある)。
【現行】
園児に発熱(37.5℃以上)や呼吸器症状等の風邪症状が見られる場合は、症状が治まり24時間が経過するまではお預かりできません。
【2023年5月8日以降】
37.5℃を超えた発熱、かつ、元気がなく機嫌が悪い・食欲がないなど、全身状態が不良な場合は登園をお控えください。
【現行】
症状がある場合は発症日を0日目として7日間経過後(無症状の場合は検査日を0日目として7日間経過後)に登園可能
【2023年5月8日以降】
発症日を0日目として5日間経過後(無症状の場合は検体採取日を0日目として5日間経過後)、かつ、症状が軽快した後1日経過後に登園可能
★詳細は「新型コロナウイルス感染症の出席停止期間について」をご参照ください。
★登園の際には「登園届(保護者記入)」の提出が必要となります。
【現行】
5日間は登園停止
【2023年5月8日以降】
登園可能
※5類移行に伴い「濃厚接触者」の特定は行われなくなります。
※陽性となったご家族の方の送迎はご遠慮ください。
2023年3月8日にお知らせした「マスク着用の考え方について」の通りとなります。
※職員のマスク着用については、園内・園外ともにマスクの着用は求めず、職員個人の判断に委ねることとさせていただきます。
新型コロナウイルス感染症の陽性が確認できた旨をお知らせする一斉メールは中止とさせていただき、今後は他の感染症と同様に、掲示でのお知らせとさせていただきます。
事務連絡
令和5年5月2日
市内保育施設利用者 各位
羽村市子ども家庭部子育て支援課長
「コロナ禍における保育施設利用ガイドライン」の廃止と今後の新型コロナウイルス感染症への対応について
日頃より羽村市の行政運営にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。
今般、新型コロナウイルス感染症に関する対応に変更がある旨、政府から発表があり、令和5年5月7日をもって、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが変わることから、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」や業種別ガイドラインが廃止されることとなりました。
それに伴い、これまで市で策定し、皆様に対応をお願いしてまいりました「コロナ禍における保育施設利用ガイドライン」につきましても、同日をもって廃止いたします。
令和5年5月8日以降につきましては、令和5年5月2日付で改定された国の「保育所における感染症対策ガイドライン」に基づき取り組んでまいります。
なお、主な変更点は下記のとおりとなりますので、保育施設利用者の皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
保育施設では引き続き、感染症予防など子どもの安全を第一にした取組みを行いつつ保育を実施してまいりますので、保護者の皆様におかれましても日頃からのご家庭での感染症予防・体調管理などのご協力をお願いいたします。
ご不明な点等がございましたら、下記担当までお問い合わせください。
【問合せ】
子育て支援課保育・幼稚園係
電話042-555-1111 内線241
メール s304000@city.hamura.tokyo.jp
ちょうど昨年の4月、同テーマで「にじいろワークショップ」の新年度がはじまりました。
ですから、年長クラスに進級した子どもたちは2度目となります。
もちろん年中クラスの子どもたちにとっては、初めて体験するワークショップです。
同じテーマとはいえ、子どもたちが日々成長し、新しく変化していくように、今年度の「にじいろワークショップ」も、その内容や取り組み方などあらゆる面において新しく生まれ変わっています。
なぜなら、当ワークショップが扱う〈アート〉の世界もまた、日々変化し続けているからです。
昨年はまだコロナ禍の影響も大きく、日常生活も園での生活も思うようではありませんでした。
そんななかでも、子どもたちは毎回毎回持てる発想力と想像力を存分に発揮し、明るく、のびのびと〈アート〉に接してきました。
それはそれで、明らかにそのときにしか存在し得ない〈アート〉がそこにはあり、そのときの〈アート〉を全身全霊で体感してきました。
そう考えれば、今年度には、今年度にしか存在し得ない新たな〈アート〉があるはずです。
これからはじまる新しい一年。
どんなワークショップになるのか、どんな作品が生まれるのか、そして子どもたちがどんな体験をしていくのか、いまから大いに楽しみです。
インスタレーション( Installation )とは?
アートを展示する空間そのものをひとつの作品としてとらえることで、壁・床・天井まで含め、その空間に存在する全てのものが鑑賞の対象となるということを指した言葉です。
「ウォーミングアップ」という言葉はもう誰もが知っていると思いますが、これって、なにもスポーツのためのものとはかぎりません。
なにごとをするにも、適度な準備運動は必要です。
からだをならすことで次の動作へスムーズに移れるし、そのことで精神的な緊張や不安を軽減することもできます。
とくに子どもたちが体現する〈アート〉系ワークショップにおいては、これがとても大切になります。
にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生は、年中・年長クラス共に、毎回ワークショップのテーマ(本題)に入る前には必ずこの「ウォーミングアップ」を行います。
かといって過度な運動をするわけではなく、遊びながら手足や背筋を伸ばし、全身を軽く動かすことと、子どもたちが大はしゃぎするほどの笑いのツボを刺激します。
これを行うことで、子どもたちの緊張や不安が一気にほどけていきます。
ましてや初めてワークショップに臨む年中クラスの子どもたちには、もっとも有効なはじまりになります。
これは当ワークショップへの導入には欠かせない、先生ならではの〝全身運動+笑い〟による「ウォーミングアップ」です。
まずは年中クラスですが、先生は100個の紙コップが収まっている四角柱の細長いパッケージを数箱取り出して、子どもたちの前に差し出しました。
中身を知らない子どもたちは黙ってそれを見ています。
先生は、いつものように子どもたちの笑いを誘いながら、それをつみきのように立てたり、横にしたり、それからトンネルのようなものをつくって、子どもたちにくぐらせるなど、まさに「ウォーミングアップ」をはじめました。
次にパッケージの中から100個重なった紙コップを取り出し、そのまま煙突のように床に立てたり、手に持ってゆっさゆっさと揺らせてみせました。
ここでも子どもたちの笑いは途切れません。
続いて、その紙コップをひとつ、ふたつと床に並べ、子どもたちにその紙コップの上にさらに重ねて置くように指示しました。
子どもたちは順番に1個ずつ紙コップを積み上げて、いくつかの三角形の山をつくりました。
どこにでもある紙コップなのに、こうして積み上げることでかたちも大きさもみるみる変化していきます。
子どもたちはそのさまを不思議そうに、また面白そうに見つめています。
ワークショップ開始からわずかな時間で、子どもたちは今回のテーマ(本題)にすんなり入っていきました。
さて年長クラスの子どもたちはというと、今回は2度目ということもあり、先生はすぐさま紙コップを一人ひとりに渡して
「みんな覚えているかな、去年もやったよね?」
と問いかけました。
もちろんその返答は
「おぼえてる!」
「やったよ」
とホールに響きわたる大きな声。
どの子も紙コップを目の前にして、瞬時に昨年の記憶がよみがえったようです。
先生は「さすがに年長さん!」と言いながら、子どもたちに紙コップを配りはじめました。
こうして、年中・年長クラスの子どもたちはテーマ(本題)の創作活動に入っていきました。
より高く、より大きく、より広く。
ときには保育士の手を借りながら、年中・年長クラス共に子どもたちは紙コップを上手に積み重ねていきます。
ひとりで黙々と積み上げる子もいれば、お友だちとふたりで積み上げる子、もっと大勢の仲間で力を合わせてつくりあげる子どもたちもいて、ホール中がちょっとした工事現場のように見えてきます。
でもしばらくすると、紙コップが崩れ落ちる音があちらこちらで聞こえてきます。
それに合わせるように大きなため息や悲鳴にちかい声も聞こえてきます。
それでもまた子どもたちはつくりはじめます。
そのたびに次々と新しいかたちが生まれていきます。
時間が経つにつれて、崩れる音やため息や悲鳴の回数が増えてきますが、それが徐々に笑い声や、元気のいいかけ声に代わっていきました。
ひとつひとつは紙コップという小さな素材ですが、時間をかけて積み重ねていくうちに、それは長く続く壁になったり、自分の背たけをはるかに超えるタワーになったり、そこに座れば自分だけの小部屋にもなり、それらをいくつかつなげて巨大なお城になったりとさまざまなかたちになって現れていきます。
そればかりか、真っ白な紙コップであるのに、出来上がったそれらはそれぞれに色とりどりの色彩や模様まで見えてきます。
強いていえば、ホールに差し込む太陽の光がそれらに陰影を与えてはいますが、つくられた壁にはレンガ色が施され、タワーには鋼鉄の銀色が光輝き、小部屋にはカラフルな水玉模様の色彩が映り、お城には重厚な土壁さえ存在するかのようです。
筆者のような者でもそう感じさせるのですから、おそらく子どもたちの目にはもっと豊かな色彩や美しいデザインが見えているに違いありません。
いや、それどころか、そういうおとなの鈍い感性などをはるかに超えた、まったく別の世界を構築した感覚を体感しているように思えます。
この真っ白で、ごく普通にある紙コップを素材としている理由を先生に尋ねました。
「もっともシンプルなかたちであり、日常のどこにでもあるものだけど、それがふたつ、みっつと増えていくとまったく新しい景色に見えてくる、かたちになる、そういうことに気づかせてくれる素材としては最適です」
という答えが返ってきました。そして
「コップは水を飲むものという、誰もが理解している当たり前の概念も、ちょっと視る角度や考え方を変えるとこんなことにもなるんだ、という驚きや発見にもつながるでしょ」
先生はこの小さな紙コップひとつから得るものは、想像以上に大きいといいます。
また、真っ白であることの必然性を
「これに色や柄があったら、それに引っ張られてイメージが固定されてしまう。青なら空や海、緑と茶色なら
森や山、ピンクや赤ならきっと女の子しか選ばない・・・それって、つまらない。
だから、そんな概念にとらわれない真っ白こそ、そこに個人個人でさまざまな色彩やかたちを想像することができる、ってことです」
そう話してくれました。
ワークショップも終了に近づくと、年中クラスのなかには、崩れて紙コップが豪快に飛び散るさまに興味を抱いたのか、わざわざ積み上げて完成させた紙コップの山を思いっきり押し倒して大喜びする子どもたちの姿も見えました。
また、最初に紙コップ(100個)を入れていた細長い空箱を何本も集めてきて、それを電車や車に見立てて遊ぶ子どもたちも。
それはそれで、きっと、その子どもたちにしか見えない世界があきらかにそこに存在していて、そのなかを自由に飛びまわっているのでしょう。
年長クラスの子どもたちは、最期に昨年の年長クラスでも行ったように、たくさんの紙コップを重ねて一本のロープ状にして、その端と端をつないで大きな輪をつくります。
そして、そのロープ状になった紙コップの輪を囲むように子どもたち、保育士、それから先生も交えて等間隔に並んで座り、各自の目の前にあるロープ状になった部分をやさしくつかみます。
先生は子どもたちに「そおっと、やさしく手にもったら、ゆっくり、ゆっくり持ち上げるからね」と声をかけます。
子どもたちの無言のまなざしと、緊張した空気が伝わってきます。
先生はそれを確かめるように見回すと「さあ、上げるよ!」と号令をかけました。
それに合わせてみんながいっせいにゆっくりとその輪を持ち上げました。
先生と子どもたちの手によって、そのロープ状になった紙コップの輪は、そのままのかたちを保ちながら少しずつ床から離れていきます。
どこも接着などしていない、ただ重ねただけの紙コップでつくったロープ状の輪は、確かにその数秒間、宙に留まっていました。
その後、どこからともなくつなぎ目が外れて、紙コップはガラガラガラ~と大きな音を立てながらばらばらになって床へ落下していきました。
その瞬間、子どもたちはもちろん、先生も保育士たちも一斉に歓声と拍手でそれを讃え合いました。
これで、今年度最初の「にじいろワークショップ」は、さわやかな余韻を残したまま終了しました。
松澤先生は、今回のワークショップを振り返り
「紙コップはそこに重ねて置くだけなので、当然のことながらほんの少し触れただけでも、すぐにかたちは壊れてしまいます。
どれほど高く積み上げても、またはどれほどたくさん並べても、そのことに変わりはありません。
だから、完成を目指すには、何度でも〝壊れてはつくりなおす〟、時間の許す限りそれを繰り返すしかないんですね。
でも、この繰り返す行為こそが、このテーマでもっとも重要なことなんです」と話しました。
つまり、実は完成することが真の目的ではないということです。
先生は続けて
「たとえば、壊すことに抵抗のある子は、慎重になりすぎてなかなか作業が進まないんです。
また、繰り返す行為でも、壊れてしまうと元のかたちに戻す作業をはじめる子もいます。
いずれの子も、慎重さやまじめさにおいてはほめてあげたいし、それは必要なことですから否定はしません。
ただ、そういう子は、ほとんどはじめたときのままのかたちで止まっています。
〈アート〉系のワークショップにおいて、それはあまりほめられる行為とは言い難いんです。
止まっていることは、新しいことに向かっていこうという思いまで止めてしまいます。
それでは、チャレンジ精神みたいなものは育ってこない。
〈アート〉も生きものと同じで日々変化しているのですから、それに順応していくことが必要で、それは裏を返せば、自らも変化していくことが求められているということです。
まさに生きていくことと同じです」
さらに言葉を重ねて
「いわば、壊せないとか、壊れるのが怖いということは、その先へ進むことができないということ。
壊れるまたは壊すことにためらわず、何度でもトライする。
そのたびに新しい発想や技量の獲得ができ、まったく違う新しい景色が見えてくるはずです」
先生は、そういう体験こそがいまの子どもたちには重要なことだと説きます。
そして最後に先生は
「いまという時代は、つねに破壊と再生の繰り返しの上に未来を築いているようなもの。
だからこのワークショップは、〈アート〉を通じてそういうことも学ぶ場であって欲しいんです。
それは理屈ではなく、体感として」
そこまで言うと、笑顔でこう締めくくりました。
「だって、日々変化していくこれからの未来を、ほんとうに築いていくのはこの子たちだから!」
紙コップのインスタレーション
今回は紙コップ一つから始まります。
一つの小さなものでも、それが大量に集まると、大きく景色や空間を変えることが出来るのです。
紙コップが積み上がる、高くなる
しかし、一瞬にして崩れる緊張感も伴います。
構築から破壊へ
破壊があるからまた新しく生まれる
そんな隠れたメッセージも内包しているインスタレーションです。
written by OSAMU TAKAYANAGI
令和5年3月8日
保護者の皆様
社会福祉法人陽光福祉会
理事長 大庭正宏
マスク着用の考え方について
令和5年2月10日に、厚生労働省「マスク着用の考え方の見直し等について(令和5年3月13日以降の取扱い)」により、令和5年3月13日からマスクの着用は個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断に委ねることが示されました。保育園では、園児のすこやかな発育・発達の妨げとならないよう配慮し、次のとおりの取扱いといたします。ご理解ご協力の程よろしくお願いいたします。
1. 児童(これまでと同様の対応となります)
※ 基礎疾患等により感染不安を抱き、マスクの着用を希望する児童に対しては適切に配慮します。その際、子どもがマスク着用を嫌がる場合は、マスクを外させていただくこともあります。また、園庭や散歩などの外あそびの際には、十分な呼吸ができなくなるリスクが指摘されていることから、マスクを外させていただきます。
2. 保護者・来園者等
個人の主体的な選択を尊重し個人の判断に委ねることとし、着用を求めません。
3. 職員
※ 5月8日以降は屋内についても、マスク着用は求めず職員個人の判断に委ねることとします。
備考
卒園式については厚生労働省子ども家庭局保育課「保育所等におけるマスクの着用の考え方の見直し等について」に基づき、園児はマスクを着用しない、保護者の方はマスクの着用を求める、職員については見守りの職員はマスクを着用し、それ以外の職員はマスクを着用しないこととさせていただきます。
お願い
マスクの着脱について、他者に強いることがないようお願いいたします。
「三寒四温」なんていう言葉を古いひとは想い出すのですが、
いよいよ春の訪れももうすぐですね。
自然のなかに生息する無数の生き物たちも、長い冬眠から目覚めの準備をはじめているかもしれません。
もっとも、深く静かな穴のなかでぬくぬくと落ち葉にくるまりながら眠っている生き物たちには、まだちょっと春は先延ばし、というところでしょうか。
今回のにじいろワークショップは、そんな生き物たちの冬眠の情景を思い浮かべながら、〈インスタレーション( Installation )〉を体験します。
年中クラスの子どもたちは初めての〈インスタレーション〉ですが、年長クラスの子どもたちは一昨年の10月に「クモの巣」を想定した〈インスタレーション〉を行っています。
〈インスタレーション〉とは、空間そのものをひとつのアート作品としてとらえる、ということです。
さて、今回はいつものホールが、子どもたちの想像力と創造力でどんなアート空間に仕上がるのか楽しみです。
子どもたちが入室する直前まで、先生と保育士はワークショップの準備で大わらわでした。
それというのも、今回の〈インスタレーション〉は大仕掛けだからです。
では、準備のようすを簡単に記しておきましょう。
まずは黄、オレンジ、赤、ピンクなどいくつかの色のすずらんテープを用意します。
すずらんテープは、色ごとに一定の長さで十数本ずつ切り分けます。
切り分けるその一定の長さとは、天井から床面までです。
ただし、天井から床面まで垂直に測った長さではなく、ホールの天井中央の一点を起点にして、そこから斜めに床面へ降ろした長さです。
当然、斜線の傾きがゆるやかなほど無限に長くなるので、ここは床面の幅に応じた斜線の傾きを想定し、その長さ測りました。
次に、各色十数本ずつ切り分けられたすずらんテープを、同色でまとめて束ねます。
黄、オレンジ、赤、ピンクで4つの束ができあがりました。
最後に、同色ごとに束ねた一方の端の部分のみをひとつに結びます。
1本ずつばらばらだったすずらんテープも、これできれいにまとまりました。
実は、これが今回のワークショップの土台となり、これをつくるのに先生や保育士が天井と床面を測り、すずらんテープを切り分け、ひとつに束ね・・・とその準備に追われていたのです。
でも、以上で準備OKです。
というところで、年中クラスの子どもたちの登場です。
大きな声でごあいさつをすませると、先生は準備しておいたすずらんテープの束を持って子どもたちの前でゆっさゆっさと大きく揺らしたり、吹き流しのようにすばやく空中を走らせて見せました。
目の前でパラパラ、ひらひら舞い踊るすずらんテープに、早くも子どもたちは大さわぎです。
ですが、ここまではいつもの序章です。
先生はそのすずらんテープの束をひとつ手に取ってホールの中央へ行き、椅子の上に立って天井に備え付けられている金具にそのすずらんテープの結んだ部分をしっかり固定しました。
この天井の金具ですが、子どもたちが乗る、揺れるなどの感覚刺激を受けて遊べる〈感覚遊具〉を支えるための特別なものです。園舎を建てる際に、このホール天井に設置しました。
今回はその金具を大いに活用させてもらいました。
先生がそのすずらんテープを天井に固定し終えると、十数本のすずらんテープがいっせいに天井から降りてきました。
その1本1本のすずらんテープを先生と保育士は床面の四方八方へ斜めに引っ張り、その1本1本を床面に養生テープでしっかり留めていきました。
天井の1点から放射線状に床面へ伸びた十数本のすずらんテープは、まるで円すいを形づくるように見えます。
あるいは、円すい形のテントの骨組みのようです。
その光景を見ていた子どもたちは、最初はなにがはじまるのか不思議そうでしたが、みるみる円すい形に仕上がってくると、「すごい、すごい」と声を上げてはしゃぎはじめました。
そこで先生は、はじめて今回のワークショップのテーマを話しました。
「この季節は、自然のなかで生きている動物や昆虫たちはまだまだ冬眠しているよね」
子どもたちは冬眠の意味を理解しているようで、
「うんうん!」とうなずきます。
「なので、今回はこの部屋いっぱいに冬眠するためのお家をつくります」
と先生は言うと、子どもたちに出来上がったばかりの円すい形の中に入るよううながしました。
子どもたちは待ってましたとばかりに入ろうとしましたが、
「ちょっと待って、その前にひとつ注意しておきます」と先生は子どもたちの動作を留め、
「このお家は壊れやすいので、1本1本のテープを蹴ったり、手で押したりしないこと」
子どもたちは「はーい」と元気よく答えたものの、どうやらまだ勢いあまって飛び込んでいきそうです。
そこでさらに「もし、このお約束が守れないなら、今日はそこで終わりにします」と。
その厳しいひとことはさすがに効いたようで、子どもたちも自ら気をつけながらゆっくり円すい形のスペースの中に入っていきました。どんなことにも守るべきルールはあります。
ことアートワークは繊細で、注意深く行動することが必要ですから、それを子どもたちにも知って欲しかったのです。
でも中に入ったら、それだけで気分は高まっていきます。
暴れないように、と自分を律しながらも、どこか落ち着かずにおともだち同士で押し合ったり、くっついたりと気持ちは今にも暴れ出しそうです。
そんな子どもたちを中に見ながら、先生と保育士は天井から縦に伸びた十数本のテープの外周に、今度は新たなすずらんテープを横にぐるぐると巻きはじめました。
円すい形のお家は、まるで色とりどりの縦糸と横糸で編みこまれたようです。
またその勢いのまま、保育士が壁部分にもほかのすずらんテープの束を固定し、同じように床面に向かって1本1本のすずらんテープを斜めに伸ばして固定し、もうひとつ新たな小さなお家をつくりました。
これでふたつの冬眠用のお家ができました。
先生は子どもたちに一旦円すい形の中から外に出るように指示し、
「いまのままじゃ、ちょっとお家が寂しいね、なにか飾りつけをしようかな?」と言いました。
子どもたちはもちろん、その意見に大賛成です。
先生は、あらかじめ用意したお花紙を子どもたちに見せました。
「このお花紙は、とってもやわらかくて、手のなかでまるめるとふわっとした形になるから、これでお花をつくったりできるよ」とお花紙の特性を話しながら花の見本をつくって見せました。
それからその花を円すい形のお家にセロテープで貼り付けました。
骨組だけだった円すいのお家が、そこだけパッと明るくなったみたいです。
子どもたちは思い思いの色のお花紙を取ると、いつものように自分だけの独創的な花をつくって貼りつけていきました。
ふたつの円すい形のお家にどんどん花が咲き、春を迎えて目覚める準備がすっかり整ったように見えます。
そんな飾り付けが終わると、先生は
「じゃ、最後にぐっすり冬眠できるように、温かな布団を敷きましょう」と言って、古新聞を子どもたちにわたしました。
子どもたちはその古新聞を折ったり、丸めたり、ひろげたりと自由にそのお家のスペースに置きはじめました。
おそらく子どもたちの目には、そこに敷き詰められたのは古新聞ではなく、温かなベッドや布団や枕に映っているのでしょう。
そのうちに、ある子が、いきなり新聞をひろげて壁に貼り付けました。
「それ、なーに?」と聞くと、
「テレビだよ!」と答えました。
その発想にはただただ脱帽です。
すると別の子が新聞をおりがみのように折って、かわいいテーブルをつくって運んできました。
もう、おとなのつまらない思考や想像力をはるかに超えています。
ワークショップの終わりは、全員で古新聞のふとんにくるまって眠りにつきました。
子どもたちが見上げたホールの天井も、きっと、いつもの天井ではない別の景色に見えていたのでしょうね。
今回は年中クラスの子どもたちがつくった円すい形のお家は、そのまま年長クラスの子どもたちが引き継ぐことになりました。
もちろん、年長クラスの子どもたちも同様にお家づくりをしてもらいます。
なので、天井の金具を起点にした円すい形のお家がふたつ、壁を起点にしたものがふたつと、いつもの大きなホールも子どもたちがつくったお家でいっぱいになりました。
そうそう、今回のワークショップは今期最後になります。
ですから、年長クラスの子どもたちにとっては、これがほんとうに最後のにじいろワークショップです。
いわば、2年間の集大成です。
最後の最後まで自由に、のびのびと、こころもからだもおもいっきり解放して臨んでくれたら、と先生は願っていました。
そこで、先の年中クラスでは円すい形のお家の原型づくりを先生と保育士で行いましたが、年長クラスの子どもたちは先生と保育士との共同作業で行うことにしました。
まず天井の金具にすずらんテープを固定し、そこから床面に垂れた十数本のテープ1本1本を子どもたち一人ひとりが握ります。
それから大きな円を描くように一人ひとりがひろがって、1本ずつ床面にすずらんテープを貼り付けていきました。
そうして出来上がった円すい形のお家に、年中クラスと同じように別のすずらんテープを横にぐるぐると何周も渦を巻くように張り巡らせていきました。
年長クラスの子どもたちも、やはりそこへ飾り付けをしましたが、ここは敢えて冬眠のためのお家づくりと限定せずに、
「お城でも、隠れ家でも、また別のもので良いから、お友だち同士数人でこのホールにあるお家を選んで、自由に飾り付けをしていいよ」と急きょ先生は子どもたちの自由意志に任せることにしました。
お花紙を使ってお花をつくるもよし、きれいなリボンをつくってもよし、古新聞をどんなふうに利用するもよし、もしも看板などを付けたければ短冊サイズに切った画用紙に文字や絵を描いてもよし、そんなふうに選択肢に幅を持たせました。
元気の良い男の子たちのグループは「へびのいるばしょ、きけん」などと看板を掲げて、怪しげな飾り付けをしはじめました。
女の子は数人で一番小さなお家のなかを、赤やピンクのすずらんテープをたくさん用いて華やかに飾りつけをしていました。
一番大きなお家を占領した子どもたちは、そのなかでゴロゴロ寝ころびながらふざけたり、楽しそうに笑い合っていました。
そして最後は、やっぱり古新聞をその中に敷き詰め、全員でおやすみなさい、のポーズです。
年長クラスの子どもたちそれぞれが見上げた天井もまた、いつもの景色とは違うものが見えていたことでしょう。
年長クラスのワークショップ終わりは、先生に2年間の感謝を込めたごあいさつを送りました。
年長クラスのみなさんへ
この2年間、にじいろワークショップで学んだこと、経験したことは、すぐに役立つようなものではないけれど、いつの日か必ず、どこかで支えてくれたり、元気づけてくれるはずです。
おとなになっても、また世界中のどこにいても、ここで身につけた想像力と創造力は一生失うことのない宝ものですから。
にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生からのコメントを紹介して、今期最後のワークショップを締めくくろうと思います。
「すずらんテープひとつで、非日常の世界に入り込める。これって、すごいことですよね。
とくに子どもたちの想像力の豊かさはおとなのそれではとうてい及ばない領域にあります。
指導の範疇をはるかに超えた、まったく予想外の発想やそれを実現化する力は毎回驚かされますが、そういう部分をむしろもっと伸ばしてあげられたらと考えています」
先生は、いつも子どもたちに寛容です。
〈のびのび〉と〈自由〉な発想やアート的な行動に対しては、子どもたちと一緒に感動し、どんな些細なことでもほめてあげることを忘れません。
もっとも、そのために最初に予定していた指導がその場の子どもたちの反応によってよく変更になるので、現場で準備をする保育士たちは大変そうですが(笑)。
そして、今回のワークショップをこんなふうに語りました。
「この〈インスタレーション〉では、自分もアートの一部になるということを体感してもらいたかったので、
それは自然に全員がこのアートの世界に溶け込んでいたのでよかったです。
逆にいえば、子どもたちがそこに居なければ成立しないアートの世界を、みごとにつくりあげてくれたな、と思います。
細かなことでいえば、天井から床面に向かってふりそそぐシャープな放射線から得られるインスピレーションをどこまで感じとってくれたかということが重要です。
今回は視覚的なことですが、普段のホールにはない状況ですからね、それだけでもかなり子どもたちには特別な光景として刺激を受けていると思います。
何気ないすずらんテープ1本でも、普段そこに見えていた景色が一転するのだ、というアート的な思考を学んでくれたらうれしいですね」
来期もまたのびのびと自由に、そしてあそびながらアート体験ができる最高のワークショップを行っていきます。
冬眠 ? 空間あそび ― テープのインスタレーション
冬になると動物や虫たちはどうしているのだろう?
そんな疑問からホールテントをいくつかつくり、子どもたちを遊びに誘ってみます。
テントは新聞紙やすずらんテープを骨組みとして、周りにいろいろ飾っていきます。
子どもたちから、どんな発想が出てくるでしょうか?
材料をいろいろ用意して、楽しい冬の物語を一緒に参加したいと思います。
written by OSAMU TAKAYANAGI