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HP担当陽光福祉会 の紹介

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Education Design Magazineの皆さんが施設見学に来ました

2024年3月2日 土曜日投稿

ドバイに拠点を置くEducation Design Magazine(現代教育に関するオンラインB2Bプラットフォーム)の皆さんが、発達支援Kiitos羽村とあおぞら保育園の見学に来ました。
メンバーは、中東・北アフリカ地域の専門家や教育学者、建築家の方々だそうで、多岐にわたる質問をいただきました。

【一般】3/12 子どもの発達・ことば個別相談会

2024年2月7日 水曜日投稿

「ことばの遅れを指摘された」「吃音が出てきたみたい」「発音の間違いが気になる」など、お子さんのことばに係わる悩みや心配に、言語聴覚士がお子さんの様子を観察しながらお答えします。

実施日時
2024/3/12(火) 9:00~17:00 ※申込締切 3/5(月)
※相談時間は40分程度となります。
※相談にはお子さんと一緒にお越しください。
相談場所
発達支援Kiitos羽村 相談室
(羽村市五ノ神3-15-11 コスティール沖201)
相談員
中塚誠先生(言語聴覚士・発達支援Kiitos羽村アドバイザー)
言語聴覚士の養成校で常勤講師として働きながら、付属する「ことばの指導相談室」で11年間臨床を行う。現在はフリーとして保育園や幼稚園、特別支援学校を訪問し、支援者や保護者への支援や講演を行いながら自治体のことばの教室で臨床を行う。
料金
無料
社会福祉法人陽光福祉会の地域貢献事業として実施しているため、料金は一切かかりません。
申込方法
下記アドレスの申込みフォームからお申し込みください。
https://forms.gle/JzzydQXyojeJ7a2k6

【羽村市】ポットラックプロジェクト トーク&ワークショップ参加者募集!

2024年1月24日 水曜日投稿

S&Dスポーツパーク富士見子ども広場で日常を楽しむプロジェクトが始まります!
皆さんの身近にある公園を、自分の庭のようにもっと自由に使ってみませんか?
趣味や得意なこと、やってみたいことを持ち寄ると、
暮らしに合った過ごし方や新たな発見があるかもしれません。
新しく何かを始めたい人、公園を普段使っている人、
暮らす待ちにちょっと楽しい場所があるといいなと思う人など、
どなたでもご参加いただけます。
まずは一回だけでもぜひご参加ください。

1月28日(日):トーク、ワークショップ
2月10日(土):トーク、ワークショップ
2月18日(日):ワークショップ
3月2日(土):トーク
3月2日(土)、3日(日):各種イベント
※詳しい時間、内容については、添付ファイル(市公式サイト)をご覧ください
https://www.city.hamura.tokyo.jp/0000018350.html

【にじいろWS 2024-01月】自分だけの恐竜をデザインしよう

2024年1月18日 木曜日投稿

創作はいたってシンプル。でも、そのプロセスに意図があります

2024(令和6)年がはじまりました。
思い返せばこの数年、世界においても日本においても、笑うことより悲しむこと、怒ること、苦しむことの方が多くなったように思います。
それでも新しい年のはじまりは、どんなことにもめげず、夢や希望を持ち続けていきたいですね。
特に、子どもたちの笑顔が絶えることのないように。
この一年もまた、そんな気持ちで「にじいろワークショップ」に臨みますのでどうぞよろしくお願いします。

さて、2024年1月のワークショップですが、そのテーマは
「自分だけの恐竜をデザインしよう」です。

みなさんもご記憶にあるかと思いますが、昨年日本各地でにぎわったイベントの上位に〝恐竜〟関連のものが並びました。
実際、各地で開催された恐竜関連の展示会やリニューアルオープンした恐竜博物館などには連日小さなお子さまを連れた家族が押し寄せ、予想以上の盛り上がりを見せたといいます。
またアメリカ映画ですが、1993年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督作品『ジュラシック・パーク』のシリーズ6作目となる『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 』(スピルバーグは製作総指揮)が一昨年の2022年に公開されたことも恐竜人気への火付け役になったようです。
もっとも、恐竜という存在は人類の歴史より遥かむかしの2億3千万年ほど前に生息しはじめ、約6千6百年前に絶滅したといわれていますので、当然現代にその姿を見ることはできません。
それでも未だに子どもからおとなまで魅了するのですから、なんとも不思議な生き物です。

にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生は、こうした恐竜人気に着目し、今回のワークショップのテーマに恐竜を採り上げました。
具体的な創作は、5つに分けた恐竜の部位(パーツ)を組み合わせて、自分だけの恐竜の姿を平面で構成し、それに色を付けて仕上げるという、いたってシンプルなものです。
でも、今回はその仕上がりより、完成に至るまでのプロセスに先生の意図があります。
では早速、本年初となるワークショップをはじめましょう。

5つの部位のパーツで恐竜をつくり、色付けは〝叩く〟!?

先生は、今回のワークショップについてこう話しました。
「結果(完成作品)はさておき、そこに至るまでのプロセスに意図することが二つあります。
ひとつは、恐竜を構成する5つのパーツを組み合わせながら、子どもたちそれぞれが独自のかたちをつくり上げること。
ふたつ目は、絵の具で色付けをする際に筆は使わず、塗るのではなく〝叩く〟ということで色彩を施していくという技法を習得することです」

ひとつめに示した5つのパーツとは、頭・首・胴体・足・尻尾という恐竜の姿を構成する部位のことです。
とはいえ、それぞれの部位はリアルなものではなく、フリーハンドで描かれた単純な曲線からつくられたかたちだけのものです。
なので、ひとつひとつの部位をじっくり眺めても、たとえば頭や胴体の部分などは見る向きによってはできそこないのジャガイモのようにも見えますし、手に取ると小さなバッグにも似ています。また首や足の部位などは背の高い煙突か、横長のベンチのようにも見えてきます。
ただし、各部位ごとに同一の大きさとかたちに揃えているので、どの子も同じパーツを必ず5枚使用することになります。
それらの部位(パーツ)は白色の厚紙から切り出し、パーツごとに色画用紙の上に分けて置くことにしました。
そしてその使い方ですが、あらかじめ以下の三つを提示しました。

  1. ➀どのような向きにしても、自分の思う位置に配置すればよい
  2. ②そのパーツにハサミを入れて口やキバ、またはトゲトゲを表現するなど多少の変化を加えてもよい
  3. ③基本パーツの5枚以上に、切り出した不要の厚紙などを利用してもよい

つまり、これだけのことを意識していれば、各パーツの使い方や発想次第でいく通りものかたちを表現できるということです。

ふたつめに示した色彩の方法ですが、従来絵の具は筆などを使って色を塗るという行為を基本にしてきました。でも今回は、スタンプを押すように〝叩く〟という行為で色を付けていきます。
これは乳児などでも遊べる「タンポ」というものです。
簡単にいえば、布を手ごろな四角形に切り、その真ん中に綿などを丸めて置き、それを布で包み込むようにして輪ゴムで止めたものです。
それを水分の多い絵の具に浸して、画用紙をポンポンと叩くようにしていくと色が付いていきます。
軽く叩いても、強く叩いても、またはこするだけでもさまざまな色彩の変化が得られて、まさに乳児などでも十分に楽しめるものです。

そこで今回は、子どもたちの力加減によって色彩の変化やかたちの面白さが明確に表れ、かつ使用頻度の高い丈夫なものを特別に作成しました。
まず凹凸の波がある段ボール紙を細長い長方形に切り、それをのり巻きのようにくるくると巻き込んで筒状にしたら輪ゴム止めます。仕上がりサイズとしては、子どもの手に握れるほどの大きさにします。そう、太巻き寿司のようなかたちを想像してみてください。
そして、その筒状にした頭部分の片側に、気泡緩衝材(プチプチのある梱包用ビニール)を小さく正方形に切ってかぶせます。
この部分に絵の具を付けて、対象とする画面に叩きながら色を付けていくのです。
ビニール素材は絵の具を弾くので、画面に対してその都度絵の具の乗り具合も変わりますし、その叩き方によってもさまざまな模様が浮き上がります。もちろんこすっても使えるので、表現における汎用性も高まります。

上記の二つが今回の意図するところであり、同時にワークショップを行うための準備となります。

パーツの配置を少し替えるだけでも、姿かたちが大きく変わります

今回もワークショップの進行過程は、年中・年長クラス共に同じです。
また、今回は両クラス共に、自分たちがいつも過ごしている教室内で行いました。

はじめに先生が『恐竜図鑑』を子どもたちに見せながら、恐竜についてお話をしました。
恐竜に詳しい子どもたちはページを繰るごとに「あ、テラノサウルスだ!」「トリケラトプスはないの?」「イグアノドンがいいな」などと大声で反応していました。
そんなイラスト図を見ながら、自ら恐竜の真似をする子もいました。
そうしていくつかのページを開いたあとに、先生は図鑑を閉じて子どもたちに言いました。
「今日は恐竜をつくりますが、いま見たようなものじゃない、自分だけの恐竜をつくってください!」
先生はさらに説明を続けました。
「誰も本物を見たことないし、ここに描かれた恐竜の絵だって、いろいろな人が研究したり調査したりして、
こんなだったかもなぁ、っていう想像でつくり上げたものです。
からだの色だって、本当にこうだったかなんて写真を見たわけじゃないものね。
だから、自分が思う恐竜をつくってください。むしろ図鑑にはない姿や色で、思いっきりヘンテコなものでも、かわいらしい恐竜だっていいんだよ」
先生は誰もが持っている恐竜のイメージにとらわれることなく、自由な発想で創作して欲しいということをしっかり伝えました。

 

それから先生は、子どもたちを一か所に集めて、これから行う創作の手順について説明しました。
あらかじめ用意した恐竜の5つの部位(パーツ)を一つずつ取り出して、
「これは頭、これが胴体、それから首と足・・・」
それらを床に並べながら一頭の恐竜の姿をつくって見せました。
子どもたちからは「すげえーっ」と歓声が上がりましたが、先生は自らつくった恐竜の頭の部位(パーツ)をつまみ上げると、先の位置とは逆さに置きなおしてみました。
さらに尻尾の部位(パーツ)も下向きから上向きに替え、首も斜め上から少し下向きに垂れるように並べ替えました。
先生が次々にそれぞれの部位(パーツ)の位置を動かしていくと、どんどん恐竜の姿が変化していくのがわかります。
こうして何度もそれぞれのパーツを動かしていき、最終的に自分の思う恐竜の姿が決まったら、各部位(パーツ)同士が繋がっている部分に工作用のボンドを付けて貼り合わせます。
これで、先生(自分)だけの恐竜の姿が完成しました。
子どもたちはいっせいに「おお~っ」という感嘆の声を上げました。
先生は子どもたちに、まずはここまでの創作を行うように指示しました。
子どもたちは色画用紙の上に置かれた各部位(パーツ)を取りに行き、いよいよ創作開始です。

仕上がりは平面なのに、立体のように動き出す恐竜たち

年中・年長クラス共に、それぞれ個性的な恐竜の姿をつくり上げました。

この時点でも子どもたちは自分だけの恐竜を満足気に持ち上げ、「ギャオーッ」と鳴きまねをしながら教室内を歩き回っていました。
ほぼ全員が完成したのを確認し、先生はまた子どもたちを集めて、最終仕上げである色彩についての説明を行いました。
ここでは前述のように「タンポ」の方法を教えました。

しかしどうしても絵の具は筆などで塗るという動作に慣れているせいか、なかなか〝叩く〟という動作で色彩を施していくことに戸惑いがあるようです。
特に年中クラスの子どもたちは、パーツを組み合わせた白地の恐竜にうまく色が乗らないことに不安なのか、叩くよりもこすりつけて色を伸ばしながらムラなく白地を埋めていくことに力を注ぐ子が多くいました。

年長クラスの子どもたちは、やりはじめは戸惑いをみせた子もいましたが、〝叩く〟ことに面白さを覚えていき、最終的には器用にこなしていました。
いずれにしても、両クラス共に、ひとつとして同じ姿、同じ色彩や模様を持つ恐竜はなく、それぞれ個性豊かな、それこそ自分だけの恐竜に仕上げることができました。

 

本来の流れではこれで終了ですが、実はこの後、予期せぬ子どもたちの行動に驚かされたのです。
それは年中・年長クラスそれぞれに起こったことです。
まず年中クラスの子どもたちですが、色付けまで終わり完成したと同時に、誰に言われるではなくひとり、またひとりと自分の恐竜を手にしてベランダへ飛び出して行きました。
すると、そこに置かれた草花や野菜の植わったプランターにそれぞれの恐竜の頭部を差し入れたのです。
また、床に垂れた水にやはり頭部を浸ける動作をはじめる子もいました。
何をしているの?と尋ねると、誰もがみな、「草を食べてるの!」「水を飲んでるんだよ」と答えました。
気づけば、全員がそうしてベランダに出て大さわぎです。

そのうち、教室内でも机の下に潜り込んで、友だちの恐竜とじゃれ合うなど、しばらくそんな状況が続いたのです。
また年長クラスでは、仕上がった恐竜を一か所に並べるように指示をしたのですが、恐竜をそこに置いたまま誰もがなかなかその場から離れようとしません。
そこで先生は何気なく茶色の色紙を小さくちぎって、
「○○くん、これは肉だから恐竜にあげてみたら?」
と言って渡したのですが、その子は嬉しそうにその茶色の色紙を自分の恐竜の口元に差し出して、
「おいしい!って言ってるから、もう1枚ちょうだい」と催促してきました。
先生は一瞬呆気にとられた様子でしたが、もう一枚ちぎって渡しました。
今度はそれを見ていたほかの子どもたちも、
「先生、ぼくにも」「わたしにも」と次々にそれを要求しはじめました。
そのうちに、「ぼくの恐竜は草食系だから、草がいい」と言い出し、先生は急いで緑色の色紙をやはり小さくちぎって渡すと、それにもほかの子どもたちが「わたしにちょうだい!」とまたまた催促しはじめました。

年中・年長共にこんな展開になるとは、さすがに先生も予期せぬこの出来事に驚いていました。
そればかりか、年長クラスの子どもたちは自分の恐竜に名前まで付けたのです。

最後は各教室に並べて飾るなどして、絵の具の乾くのを待つことにしました。

その後、1階にある〈ブックラウンジ〉に作品を飾りました、と担当の保育士からその写真と共に報告を受けました。こうして観ると、展示スペースを占領した恐竜たちが、今にも肉や草を求めて動き出しそうですね。

かたちは自らの意思で決める、タンポという技法、そして著名な絵本作家のおはなし

本年最初のワークショップについて、あらためて松澤先生に聞きました。
「今回の狙い(意図)は先にも話したように2点です。
まずはパーツの組み合わせですが、同じパーツを使っても個々人でどう配置していくか、どう組み合わせてい
くかでそこに表れる姿かたちがまるで違うものになるということを直接体験して欲しいということ。
動かせば動かすだけいろいろなかたちに出会える(見られる)というのは、ちょっと不思議でおもしろいでしょ。
しかも自らの意思で納得するか、しないかの選択を繰り返し、最終的なかたちを決めるのも自らの意思ですから、大変なことですがとても重要なことを学ぶことにもなります。
これってアートにおける創作活動そのものですよね、プロもアマチュアもいつだって描いては消し、消してはまた書き直す、その繰り返しで、最後は自ら決断で作品を仕上げていく。

それから、〝タンポ〟ですが、やはり絵の具を叩いて色付けをしていくのは難しい動作だったかもしれません。むしろ乳児ならば叩くことを無意識にできるのでしょうが、年中・年長ともなれば今まで塗ることで成立していた動作がからだや指先に染み込んでいますからね。これに抗うことになるので、戸惑うでしょう。
ただ、これをさらに発展させていくと、たとえば美術工芸などで用いる〝スタンピング(型押し)〟という技法にも繋がるので、この機会に塗ることばかりが正攻法ではなく、叩くということも有りだということを覚えておくことも必要かなと思って、敢えてこの技法を採り入れました」
先生はそんなふうに話すと、
「ちょっと残念だったのが、もう少しユーモアのある、本当にヘンテコな恐竜が表れるかと思ったのですが。
意外と固定観念にしばられている感じでしたね、多分この恐竜人気で、図鑑にあるようなお決まりの恐竜が露出しすぎているせいかもしれません。その辺りは難しいところです」
こんな感想ももらしましたが、それでも今回の意図するところは十分に汲み取られ、一定の成果が得られたのでは、と振り返りました。

そこで話題を変えて、年中・年長クラス共に、終わりに見せた予期せぬ出来事について聞くと、
「あれには驚きましたね、まったく考えてもみなかった行動でした。それをただ幼いとか純粋などと言ってしまえばそれまでですが、それだけ子どもたちは自分のつくり上げた恐竜に愛着を持っていたということでしょ、創作者がもっとも自分の作品を愛するというのは当然のことですからね。
それは愛玩というか、まるでペットに接するような気持ちなのかもしれませんが、そうした思いが強ければ強いほど、自分のつくり上げた世界のなかに容易に入り込むことができるのだと思います。
しかも、男児、女児関わらずほぼ全員がそうでしたから、余計に驚きましたし、感動さえしました」
先生はそう言うと、嬉しそうに目を細めました。

話しの締めに、先生はこんなことを話してくれました。
「実は今回の恐竜制作には、世界的に有名なある絵本作家の描く世界を意識していたのです。あまり声高には言えませんが、アメリカの絵本作家エリック・カールの作品世界です。
彼の作品が持つ鮮やかな色彩と、作品に登場するユーモラスな姿かたちのものって、どれもがみな魅力的で、いつまでも印象に残りますよね。
ご存知のように、彼はさまざまな色や模様のついた色紙を切り抜いて、〝コラージュ(貼り絵)〟という技法で作品をつくり上げています。そうした部分だけでも、ほんの少し意識的に採り入れることができたらすばらしいかな、って」

そんな先生の話しを聞いて、今回のワークショップはどことなく彼の描く作品世界と通底しているようにも思えてきました。さらに先生は、
「でも本当に彼の技法なり創作をベースにしてワークショップを行うとしたら、そうとうな時間と手間をかけないと実現しないでしょうね。とうてい無理なことですが、せめてその周縁でも感じとれるワークショップができたらいいでしょうね」と笑いました。
先生は折に触れ、その理想とするところ、目指すところを冗談交じりに話しますが、そうしたポジティブな志向があるからこそ、毎回濃密なワークショップが行えるのだと思います。
あらためて今回の子どもたちの作品を見なおすと、いくつかの作品のなかに、エリック・カールが描く昆虫や爬虫類の絵を想起させるものがあったような・・・まあ、それを先生に言えば、一笑に付されて終わりでしょうけど。

ドキュメンテーション

太古の昔に生きた恐竜について考えてみます。

図鑑や博物館でみる恐竜は迫力があって、こどもたちは大好きです。
しかし、その色や肌については詳しいことは解明されてはいません。
そこで、頭、手、足、首、胴体のパーツを組み合わせながら自分の恐竜を作り上げてみます。
肉食?草食?空を飛ぶ?海にいる?もちろん色も自由に楽しむこと、ヘンテコなことを考えることもアートには不可欠です。
誰とも違うオリジナルを考えます。

written by OSAMU TAKAYANAGI

【にじいろWS 2023-12月】「小麦」のおはなしと小麦ねんどでつくるオーナメント

2023年12月27日 水曜日投稿

一年を締めくくる12月のワークショップは、「小麦」を知る・つくる・飾る

2023(令和5)年も年の瀬を迎えました。
今回のにじいろワークショップも本年最後となります。
この数年、一年を締めくくる12月のワークショップは、日々子どもたちの栄養バランスを考え、安全でおいしい給食づくりに取り組んでいる当園の栄養士および調理師との共同企画で、〈食〉と〈アート〉のコラボレーションを行ってきました。
昨年の12月は、画家・アルチンボルドへのオマージュとして、実際の野菜や果物を素材にした肖像画の制作を行いました。

そこで今回も〈食〉をテーマにし、誰もが知っている、そして誰もが食している「小麦」という食材にスポットを当てたワークショップとしました。

ご存知のように、小麦はパンをはじめ、うどん、ラーメン、パスタといった麺類から餃子の皮やタコ焼き、お好み焼き、またはお菓子の類など、多種多様な食品に使用されています。
それらは子どもたちも口にする大好きな食品ばかりですが、意外とその元となる「小麦」について知ることはほとんどないと思います。

今回のワークショップは、最初にそんな「小麦」についてのお話を栄養士から聞き、それからそれを使った小麦ねんどを子どもたちと一緒につくり、最後はその小麦ねんどでクリスマスなどのオーナメント(飾り・装飾品)づくりを行います。
ただし残念なことに今回は完成品を食べることはできません。
それでも当然食べることが可能な素材と実際の調理を想定した工程を踏みますので、実践的な疑似体験としても子どもたちには想い出深いワークショップになると思います。

食物アレルギーへの対応について
[小麦]によるアレルギー反応を起こすお子さまもおりますので、にじいろワークショップを実施するにあたり当園の規定に準じた安全な対応を取らせていただきました。

栄養士の「小麦」のおはなしから、小麦ねんどができるまで

まずはいつものようにワークショップのための準備です。
先生は子どもたちへの見本として、小麦粉を用いたねんどづくりをはじめました。
調理用ボールの器に小麦粉を入れ、水と油と塩を加えて手指で混ぜあわせながらなんどもこねます。
感触がモチモチになった時点で、小麦ねんどはできあがります。
あとは色付けの黒・緑・青・赤・黄色の食用色素と、ねんど板代わりに牛乳パックやトレーシングペーパーを人数分用意して完了です。

では、これよりワークショップ開始です。
今回は年中クラス・年長クラス共に、先生がまずあいさつをして、それを受けるように当園の関塚郁美栄養士が子どもたちに「小麦」のお話をしはじめます。
関塚栄養士はいく枚かの写真パネルを用意し、収穫された種子が製粉され、小麦粉として誕生し、それがその後にパンや麺、お菓子などの食材に変化するという一連の流れを順序だててていねいにわかりやすく説明しました。
子どもたちは初めて知る内容になんども写真を眺め、関塚栄養士のお話にも興味深く耳を傾けていました。

お話がひと通り終わると再び先生が子どもたちの前に立ち、いつものワークショップがはじまりました。
先生は事前に準備しておいた小麦ねんどのかたまりを、薄く伸ばして牛乳パックに貼り付けた状態のまま子どもたちの前に差し出しました。
しかし子どもたちはそれほどの反応を示しません。一見すると、いつもの工作用ねんどと変わらないからです。
でも先生がその小麦ねんどの端を指で引っ張ると、途中で切れることなく、おもちのように長く伸びていきました。それを見た子どもたちは、予想に反したものだったので「え~~~!?」と声をあげました。

先生は、これが先に関塚郁美栄養士がお話した「小麦(粉)」でつくったねんどであることを伝え、子どもたちにそれを少しずつ渡して、小麦ねんどの持つ感触を確かめてもらいました。
そのもちもち、ぷにゅぷにゅしたなんともいえない感触に、誰もが思わず笑顔になりました。

そこで先生は、
「今日のワークショップは、まずその小麦ねんどをみんなにつくってもらいます!」と言いました。

小麦ねんどをつくる工程は、年中クラス・年長クラス共に同じです。
数人のグループに分かれてテーブルに座り、そのテーブルに調理用ボールの器(※以下ボールに省略)をグループにひとつずつ置いていきます。
それからそのボール一つ一つに、小麦粉を適量入れます。
そこで先生は
「このさらさらした粉状のものが小麦粉だよ、じゃあ、それもそっと指で触ってみようか」と言いました。
子どもたちは待ってましたとばかりに、いっせいに指を差し込みました。
「ああ、さらさらだ」
「ふわふわしてる」
「気持ちいいね」
と初めて触った小麦粉の感触について、それぞれがさまざまな感想を口にしました。
「これがこの先にパンになったり、麺になったり、お菓子になるんだから不思議でしょ」
先生は笑いながらそう話しました。

 

それから先生は「いまは真っ白だから、これに色を付けます」と言いながら、保育士と手分けをしてボール1個につき1色ずつ食用色素を垂らし込みました。
「先生、これ何色?」と子どもたちから声があがりました。
そう、それだけでは全体に色が表れません。
「これから魔法の水をかけるからね、そしたら色が浮き出るよ」
先生はそう言うと、また保育士と手分けしてそれぞれのボールに水を注ぎました。
子どもたちは「ウソだ~魔法の水なんてないよ」と笑って応えました。
水は一気に注がずに、少しずつ数回に分けて加えていきます。
またサラダ油と塩もこの段階で少量加えます。

小麦粉と水がほどよくボールのなかで混ざり合ったころ
「また指で触ってごらん、今度はやわらかなおもちみたいだよ」
先生はまた感触を確かめるように言い、
「じゃあ、そのなかを今度はよーくこねて」と付け加えました。
するとどこからか、
「あれ?色が変わった!赤色だ」
「ほんとだ、こっちは黄色」
と次々に色の変化に気づいた子どもたちの声が響きわたりました。
子どもたちがこねたことで、色の変化が起こったのです。
こねればこねるほどそれぞれのボールによってさまざまな色が染み込んで広がっていきます。
先生が子どもたちの驚く声に
「だから言ったでしょ、魔法の水だって」と返しました。
子どもたちは半信半疑ながら、ひとつのボールのなかを競うようにこねました。
そのたびに色がどんどん深まり、こねればこねるほどやわらかさが増していきました。
子どもたちはそのことにただただ夢中ですが、きっと、この鮮やかな色彩と指の感触は記憶と五感に残るでしょう。

でき上った小麦ねんどは、まさにおもちのようにボールにべったりと貼りついているので、それを取り出してひとつのかたまりにまとめます。
その作業は先生と保育士、栄養士が手分けして行うことにしました。
そこで先生は次の作業に移る前に、1本1本の指に付着した小麦ねんどをすべて落としてから一度手洗いをするように言いました。
子どもたちは両手の指を何度もこすり合わせながら、付着した小麦ねんどをきれいにボールのなかに落としていきました。

と、そのとき偶発的に起こったエピソードがあったので~本稿の趣旨とは逸れますが~記しておきます。
それは、指に付いた小麦ねんどを落としているさなかのこと、年中クラスのある子がこんな歌を唄いだしたのです。
♪~おやゆび おやゆび / こちょこちょ こちょこちょ
あらって あらって / くりくりしましょ (*一部省略)
この歌のメロディは、手遊び歌の『カレーライスのうた』(作詞:ともろぎゆきお 作曲:峯陽)ですが、それを看護師が「てあらいのうた」という替え歌にして子どもたちに手を洗うことの大切さを教えたものです。

その子と一緒にいたグループの子どもたちも、示し合わせたように大きな声でこの歌を唄いだしました。
それは日常唄う場面とはまったく無関係な場所で、ほんとうに突然唄いだしたことに何事かと驚きました。
でも、そのうちその光景が微笑ましく、またとてもすばらしいことように感じてきました。
おそらくその子らにとって、そのときの動作と指から伝わる感触が瞬時にその手遊び歌を呼び起こしたのでしょう。結果、なんら意図することもなく、歌唱という行為でその状況を表現したにすぎないのです。
あることに触発された瞬間、自らの発想や想像がまったく予期せぬ世界にジャンプしていくことがあります。
特に芸術の分野ではそれが往々にしてあり、そんな瞬間を待ちわびることさえあります。
だから、そうした子どもたちの感性や表現~たとえ、その場の物事とは異なっていても~を見過ごすしたり、止めたりせず、むしろそうした行為を寛容に認めてあげることが重要ではないかと思ったのです。
そして、それがもっともできる場は、このにじいろワークショップのような気がしました。
長々と横道に逸れましたが、本稿に戻します。

オーブンで仕上げたオーナメントは、食べたくなるほど香ばしい匂いが

子どもたちが実際に手指を洗いに行っている間、先生と保育士たちででき上った小麦ねんどのかたまりを回収し、それらを小さく切り分けて子どもたちのテーブルに戻しました。
手洗いを済ませた子どもたちが順々にテーブルに戻ると、自分たちがつくり上げた小麦ねんどのかたまりが、いつしかいくつもの小さなあめ玉のようなものになってテーブルの上にあったのでびっくりしたようです。
「なんだ、これ?」
「さっきのねんどか?」
子どもたちは確認するかのように、指でつまんだり、つついたり。
なんとなくざわつきながらも全員がテーブルに戻ると、先生はいったん自分の周りに子どもたちを集めました。

先生は小さく切り分けた小麦ねんどをいくつか持って、牛乳パックでつくったねんど板の上に並べました。
「これはさっきみんながつくってくれた小麦ねんどです。みんなが使いやすいように切り分けました。
で、これを使っていまからクリスマスツリーや壁などに飾ることのできる作品づくりをします」
先生はそう言うと、小さな小麦ねんどのひとつを手のひらに乗せ、くるくると丸いかたちに整えました。
それを牛乳パックのねんど板の上にひらたくつぶして置き、また別の小麦ねんどを取り、こんども形を整えたら先に置いた小麦ねんどに貼り合わせるように置きました。
それを何度か繰り返すと、牛乳パックのねんど板の上にかわいらしい動物の顔が現われました。

そんな先生のお手本を見定めると、子どもたちは自分のテーブルに戻って、早速作品づくりにかかりました。
年中・年長に関わらず、どの子も素材は違えどねんど細工は慣れたものです。器用に丸めて、貼り合わせて、さまざまな色合いとかたちで作品をつくっていきました。

そうそう、先生はいつものように年長クラスの子どもたちには作品づくりの上でひとつだけねじり合わせる手法を教えました。
ひも状に太く長く伸ばした色の違うねんどを2本用意して、それをねじりながらクルクルと交互に絡ませて巻いていく方法です。2色の違う色が絡み合うそれは、なんとも不思議で美しいものです。
ある女の子は、でき上ったものを自分の腕にブレスレットのように巻き付けて嬉しそうに眺めていました。

「仕上げるときはなるべく薄く、たいらにしてね」
先生は完成が近づいた子どもたちに、仕上げに関しての留意点を伝えました。
仕上げた作品に厚みを持たせないのは、装飾品としての完成形を考慮したことと、最後にオーブンで焼き上げるのですが、その際に厚みのあるものは焼き時間の設定が難しく、場合によっては作品がこげてしまうこともあるからです。
先生はオーブンで焼く前にあらゆる仕上がり状態を想定して、栄養士や調理師と入念な準備を行いました。

こうして子どもたちはオリジナル・オーナメント(飾り・装飾品)の最終仕上げとして、オーブン用の天板に自分の作品を乗せていきました。
特に年長クラスの子どもたちは、自らの作品を天板に乗せるという作業にも積極的に参加しました。
天板の上に並べられた作品をみんなで囲み、いつものように自分自身の、そしてお友だちの作品を鑑賞しながら感想やら自慢やら、楽しいおしゃべりを交わしていました。

栄養士と調理師は手際よく仕上がった作品を天板の上に乗せ、目の前にあるキッチンへと運んでいきました。
しばらくして、最初にオーブンに入れた年中クラスの作品の一部が焼きあがってきました。
どうやら、焼きこげることもなく上手にでき上ったようです。
近くに鼻を寄せるとクッキーやパンが焼き上ったときの香ばしい匂いがして、ちょっとつまみ食いをしたくなるようでした。
関塚栄養士の話しでは
「オーブンの設定として基本は160~170度で10分ほどですが、いろいろ試したところ150度で15分くらいじっくり、ゆっくり焼くのがよさそうです」とのこと。

その後、担当の保育士から聞くところによれば、午後にはすべてが焼き上がり、どれもきれいに仕上がったそうです。あとは作品ひとつひとつにニスを塗って仕上げ、それを園内に飾るとのことです。

もはやアートといえる職人の〈手仕事〉を、子どもたちが疑似体験

栄養士による「小麦」のお話、そして小麦ねんどづくりからオーナメントとしての作品の創作、さらにオーブンでの仕上げと、今年を締めくくるのにふさわしい盛りだくさんの内容だったと思います。
もちろん、年中クラス・年長クラス共に子どもたちはあわただしくもよくやり遂げました。

では、最後はやはりにじいろワークショップを企画・指導する松澤先生に締めてもらいましょう。
「昨年同様に〈食〉をテーマにしましたが、敢えて言うまでもないですが〝食べもの〟は人間にとって最も重要なものであり、最も身近に存在するものだということを再認識する意味でも、こうして一年に一度でもワークショップとして採り上げることは子どもたちにとって重要かと思います。
特に〈食〉と〈アート〉のコラボレーションは魅力的な題材です。
昨年のアルチンボルドもそうですし、今回も一般的に見れば自然から生まれた単なる食物ですが、それがちょっと見方を変え、工夫を施すと、飾ったり眺めたりできる鑑賞用の美術品に変化するというのがおもしろいところです」
先生は、そうした〈食〉から〈アート〉への変化や展開がおもしろいのだと強調していました。
確かに本来ならばすべて食べられるものですから、〝食べもの〟が〝観るもの(装飾品)〟に変わる?と考えたら不思議な気持ちになります。

先生はさらにこう続けました。
「例えば、日本でいえば和菓子職人、西洋でいえばパティシエかな、それぞれに文化や嗜好は違っても目指すところはより〝おいしく〟、そしてより〝美しく〟だと思うんですね。
それで〝おいしく〟は好みにもよりますが、〝美しく〟は万国共通の認識ですから、誰の感性にも訴えることができる〈アート〉と同義ととらえたら、あきらかに和菓子も洋菓子も芸術の領域です。
しかもその両者共に、AIが先端をいくいまという時代に、未だすべて手仕事の技でつくりあげるのですからすごいじゃないですか。
そういうことでいえば、今回子どもたちが行った創作行為もすべてにおいて職人の手仕事そのものを疑似体験したようなものです。
ですから、そこから得た知識や体感が必ずひとりひとりのなかに残っているはずです。
職人はその指先に残った食物の感触やそのときの経験が、そのものを食するたびに自然によみがえってくるそうですから、子どもたちにも同様のことがあるかもしれませんね。
これからは毎日の給食もただ漠然と食べるということから、もっとその素材に思いを寄せるというか、興味を持ちながら戴くというか、気持ちの在りようが変わってくるんじゃないかな、そういう点でも〈食〉をテーマにするこの企画の意義があると思います」

そんな先生の話しに大いに納得したところで、2023(令和5)年ももうすぐ終わりを告げます。
一年間、松澤先生、保育士のみなさん、そして子どもたち、ほんとうにお疲れ様でした。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

ドキュメンテーション

written by OSAMU TAKAYANAGI

【にじいろWS 2023-11月】落ち葉が揺れるインスタレーション

2023年11月29日 水曜日投稿

自然のなかの〈季節感〉を室内に具現化し、インスタレーション・アートとして鑑賞

11月というのに季節はずれの暖冬のせいか、本来感じるはずの秋の気配をなかなか実感できませんね。
そうかと思えば、急な寒さに「今年はもう一気に冬到来か」などと戸惑うこともあります。
なんとも変動の激しい気候に、気持ちも体調もいまひとつ。
それでも自然は、少しずつ季節の移ろいを私たちに見せはじめています。
気づけば木々の葉が鮮やかな色に染まり出し、それがはらはら風に舞いながらゆっくり地面に落ちていく光景を目にすることも増えました。
緑一色だった遠くの山々も、それにつれて赤色、茶色、黄色とさまざまな色に変化し、眺めるたびにその美しさが際立ってきています。

今回のワークショップは、そんな自然のなかの〈季節感〉を、なんと室内に具現化しようというものです。
最終的には、子どもたちと一緒にその空間いっぱいに表現されたインスタレーション・アートとして鑑賞します。

にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生は、
「秋の陽射しの温もりや時おり吹く冷たい風をからだいっぱいに感じるいまだからこそ、それをそのままひとつのカタチ(アート)として具現化しようと思います。
自然のなかで受ける体感、つまり感覚的な刺激というものを、目に見えるカタチに置き換えて室内に持ち込んだら(表現したら)どうなるのか、ということが今回のテーマです」と話しました。
さらに先生はインスタレーション・アートにも言及しました。
「完成形としてはインスタレーション・アートとしますが、すでに当園では何度も実施しているので、今回はその空間(展示領域)をできる限り広げてみたらどうなるか、という試みにも挑戦してみようと思っています」

どうやら今回のワークショップも予定調和とはいきそうにありませんが、それがまた予期せぬすてきなアート体験を生むことになるでしょう。

天井(大木)から無数に伸びたテープ(枝木)は、ホール内からさらに園庭の木へ

この季節を具現化するための主とする素材は、色づいた落ち葉としました。
そこで、まずはその素材集めから子どもたちは始動です。
ちょうど2年前の11月、当ワークショップで「羊毛と石のペーパーウエイト」を行ったときに子どもたちが河原で石ころを拾ったように、今回の素材も自然のなかからいただきました。
近くの公園へ散歩に出たおり、大きな木の周りに落ちているさまざまな形や色をした落ち葉を子どもたちがたくさん集めてきました。

それでは、ワークショップの具体的な準備をはじめましょう。
最初に取りかかったのは、長尺のすずらんテープをいく本にも切り分けてホールの天井に設置された金具に結びつけ、その1本1本を部屋の隅々まで張り巡らせていく作業でした。
このすずらんテープの1本1本は、大木から無数に伸びた枝木に見立てています。
ですから、まるでたくさんの枝木が四方八方に伸びていくように、部屋の壁へ、ベランダ扉のガラスへと、先生と保育士たちは次から次へとすずらんテープを引っ張りながらあらゆる場所に固定していきました。
そう、これは2年前の10月に行った「蜘蛛の巣・インスタレーション」の光景に似ています。

でも今回はこれに留まることなく、先生が冒頭で話されたように〝その空間(展示領域)をできる限り広げてみたらどうなるか〟ということにも挑戦です。
それを試みるために、天井から伸ばしたすずらんテープのうちの、さらにいく本かをガラス扉を開け放ったままベランダにある外塀へ、そして園庭に立つ1本の木にまで思いっきり引っ張り出して固定しました。
これでいつものホール(屋内)はもちろんのこと、ベランダの外塀周辺と園庭の木(屋外)までのすべてがインスタレーション・アートの空間(展示領域)になりました。

次に先生と保育士たちで四方八方に伸ばしたすべてのすずらんテープに、長さ30cmほどのマスキングテープを垂らすように貼り付けていきました。
1本のすずらんテープに十数本のマスキングテープが下がり、まさに一本の大木から枝木が伸び、それに小枝が無数に伸びているように見えます。

最後に子どもたちが拾い集めた落ち葉を入れるための、クラフト紙でつくった「葉っぱのプール」を二つほどホールの真ん中に用意して準備完了です。

落ち葉を1枚貼るだけで、さっきまで見えていた世界が変わる

年中クラスの子どもたちはホールの中、そして外へと張り巡らせたすずらんテープにすかさず反応し、
「なんだ、これ?」
「え~今日はなにするの?」
と疑問符だらけの声を上げました。
そこで先生は、子どもたちをホールに用意したクラフト紙の「葉っぱのプール」に集めました。
先生はそんな子どもたちに、あらかじめ園の図書コーナーから選んだ数冊の絵本を取り出して見せました。
選んだ絵本は、どれもがこの季節の、特に紅葉(落ち葉)や冬支度をする山のようすなどを描いたお話です。
先生は一冊の本を読み終え、子どもたちもそれ以外の本を回し読みしました。
しばらくすると、子どもたちは絵本の世界に描かれたこの季節ならではの自然の美しい景色や、山のなかの生きものたちのこと、または自然から受けるさまざまな事象を感じとることができました。
先生はそれを待っていたように、早速ワークショップの具体的なアートワークについての説明をはじめました。

先生と保育士たちは落ち葉を詰めた袋から、二つの「葉っぱのプール」にそれらを流し込みました。
プールのなかはみるみる落ち葉でいっぱいになりました。
先生は「このプールのなかは水じゃないから泳げないよ」と子どもたちの笑いを誘うと、そのなかから1枚の葉を取り出して、目の前に伸びたすずらんテープに下がっているマスキングテープにその葉を貼り付けました。
「あー、葉っぱがくっついた!」と子どもたちは声を上げました。
さらにもう1枚。また別のマスキングテープにももう1枚。
最後に先生のおでこもマスキングテープにペタリ・・・またまた子どもたちは大笑い。
でも、これだけのことで、さっきまで見えていた世界が一変しました。
「今日はこの落ち葉をこうして貼り付けて、このホールいっぱいに、絵本で見たようなこの季節の世界をつくります」
先生は今回も難しい説明などしません。
創作自体もいたってシンプルな行為ですから、それだけ言えば子どもたちには充分です。
それに先生は確信していました。
この一年余り、いろいろな体験を積み重ねてきた子どもたちですから、理屈ではなく、アート的思考や感性が芽生えているはず。だから、自分の思うまま、自由にこの創作に取り組めば、結果十分にアートとして成立する、と。

子どもたちはいっせいに落ち葉のつまったプールをのぞき込み、自分の気に入った葉を選び、そして思い思いにあちらこちらに下げられたマスキングテープにそれを貼り付けていきました。
1本のマスキングテープに、同じような形の葉を下から上へと順番に貼り付けていく子。
さまざまな形の葉を両手につかみ、部屋中のマスキングテープに貼り付けて回る子。
貼り付けるより、その1枚の葉を慎重に選ぶことに集中している子。
何度も何度も同じ葉の貼る位置を修正し、貼ったり、はがしたりする子。
お気に入りの落ち葉を一番高い位置に貼り付けたいと、保育士に抱っこをせがむ子。
葉を選ぶのも、貼り付けるのも、それがその子の個性で、誰もがその瞬間は無二のアーチストです。

年中クラスの子どもたちがひと通り貼り終えると、先生はあらかじめ用意した画用紙やおりがみに、自分で想像した色や形の葉、木々の周辺に生息する生きものなどに関する絵を描いて、それをハサミで切り取り取ったら落ち葉と同じように貼り付けるように促しました。
子どもたちは、今度はそのことに夢中になりました。
独創的な植物の葉もあれば、どんぐりや木の実、昆虫や小鳥といった生きものなどを描く子、きれいな虹を描く子もいます。
それらは落ち葉と並んでマスキングテープに貼り付けられました。

そうそう、年中クラスのこどもたちは、基本的に屋内で手の届く範囲に貼ることにしたので園庭へは出ませんでした。そこでワークショップが終わったあとに園庭へ出た数人の子どもたちは、園庭の木に固定したすずらんテープにも落ち葉や描いたばかりの絵をペタペタと貼り付けていました。
アートに終わりがないように、子どもたちのアートワークにも終わりはないようです。

「フロッタージュ」技法の習得と、予期せぬアート体験に感動

年長クラスのこどもたちも、まずは先生が絵本を読み聞かせ、それをみんなで回し読み、今回のアートワークを理解したところで具体的な創作に入りました。
先に年中クラスのこどもたちがつくり上げていたものに、さらに先生と保育士たちで室内から外に伸ばすすずらんテープやマスキングテープの本数を増やしました。
そして年長クラスのこどもたちは、室内・ベランダ・園庭の木の間なら自分が思い描く場所や位置を探して自由に行き来しても良いことにしました。
これまでワークショップはテーマに応じて屋内であろうと屋外であろうと、いずれかに限られた空間(領域)内で実施してきましたが、今回は屋内から屋外に至るまでかなりの広範囲が創作の場となりました。
子どもたちは早速落ち葉を手にして、室内からベランダへ、はたまた園庭から室内へ、途中ベランダへ回り込むなど、右に左に、前から後ろへと激しく動きはじめました。
その度に靴を脱いだり履いたりとめんどうな動作を繰り返していましたが、それさえもなんだか楽しんでいるように見えました。

貼ることにも、貼る位置にも、落ち葉1枚にも、年中クラスの子どもたち同様に誰もがこだわりを持って創作に臨んでいるのがわかります。
それにしても年長クラスの子どもたちの〝描く・切る・折る・貼る〟といった基本的技術もさることながら、創作への意欲や発想、アート感覚のクオリティの高さに今回もすっかり魅せられました。

先生は後半、年長クラスの子どもたちにも画用紙に絵を描くことを促しました。
ただしそれは年中クラスの子どもたちとは違い、「フロッタージュ」という技法を教えるためです。
「フロッタージュ」とは、植物の葉やコインといった凹凸のあるものの上に薄い紙を置いて、鉛筆などでこすることによって下に置いたものの模様や形を写しとる技法のことです。
今回はテーブルの上に1枚の落ち葉を置いて、その上に画用紙をかぶせ、片方の手でしっかりそれを押さえたら、クレヨンをやや斜めにして画用紙の上からサッサと何回もこすっていきます。

最初はうまくいかずに苦戦していた子どもたちでしたが、何度も繰り返すうちにどの子もじょうずにできるようになりました。
コツさえ掴めば、あとはそれぞれがこするクレヨンの色を変えたり、下に置く葉の種類を変えたりするだけで、オリジナリティ豊かな自分だけの葉の絵ができ上ります。
それをハサミで切り取り、やはりマスキングテープに貼り付けていきます。
ちょっとリアルな、でも自然にはない色合いや変わった葉脈の見える絵がたくさん出来上がり、さらに彩りを添えました。

年長クラスの子どもたちは、最後にクラフト紙でつくった「葉っぱのプール」にダイビングです!
どうしても、それがやりたかったようで、みんな落ち葉にまみれて大はしゃぎ。
床一面に散らばった葉が、自然の野山を想起させ、ホール全体がほんものの秋景色に染まってしまったかのようでした。

ワークショップ終わりは全員で完成したインスタレーション・アートを鑑賞しました。
開け放たれた扉から室内に吹き込む風も、園庭に流れる自然の風も、すずらんテープやマスキングテープに貼られた落ち葉や子どもたちの絵を揺らしていきます。
それは、無数の枝木に生い茂る、まだ落ちることのない葉がざわざわ、かさかさと音を立てているように見えました。
また、室内に入り込む太陽光にぼんやり光る葉と、園庭全体を包む強い陽射しにまぶしく輝く葉とのコントラストを、ひとつの視点から眺められるという不思議な感動を得ることも。
室内から屋外まで区切りのないこの広々としたアート空間のなかに、いまという〈季節感〉を確かに具現化することができました。
やはり今回も、予期せぬすてきなアート体験に感動です。

アートを通じて、五感で感じる自然からの刺激やその大切さを子どもたちに伝えたい

今回のインスタレーション・アートの試みから、そういえば近年そうした作品を扱う美術館やイベントが多くなったなぁ、とあらためて思いました。
例えば半世紀以上も前に開設された「彫刻の森美術館」(神奈川県)をはじめ、1990年代にはじまった「大地の芸術祭」(新潟県)、昨今では瀬戸内海の島々が開催地となって展開するアートイベント「瀬戸内国際芸術祭」など、そのどれもが規模や展示領域の広大さからみて、インスタレーション・アートの代表格ともいえそうです。
それではいつものように、松澤先生に今回のワークショップを締めていただきましょう。

「なにか年々、自然から受ける〈季節感〉が感じにくくなっていますよね。
それって、これからの未来に生きる子どもたちにとっては、とても悲しむべきことだと思いませんか。
私たちが子どもの頃は、自然のなかから〈季節感〉を感じとることが当たり前でしたから。
今回はそんな実情を踏まえ、敢えてこうしたテーマを取り上げてみました」
先生はそんなふうに切り出すと、こう続けました。
「現代の生活者のほとんどが都会的な暮らしをしているので、自然のなかで季節ごとに変わる空気や風、匂いや音といった五感で感じる刺激からは遠くなっています。すでにそういう感覚さえ鈍くなっているのかもしれません。
なので、この〈季節感〉を具現化するにあたり、どうしても自然と同化するための天然素材が欠かせないと考えました。
そこで選んだのが〝木の葉(落ち葉)〟なんです。
これって、最も身近にあるものながら、意外とじっくり観察することも、下手をすれば手に取る機会も少ないかもしれないでしょ。
でも、この葉っぱ1枚見るだけでも、そこに命の尊さというのか、枝に生まれて、成長し、やがて朽ちて落ちていくということや、それが集まって1本の大木になり、森になり、山になりという壮大な物語さえ思い浮かべることができます。
子どもたちには、このワークショップを通じてそうしたことも伝えたかったのです」
そう言い放つ先生は特別ナチュラリストというわけではありませんが、自然から学ぶことや感じることがたくさんあることをよく知っていますし、それが人として生きていく上でとても大切なことだということも理解しています。
でも、それが時代と共に希薄になっていくことを危惧しているので、子どもたちにアートを通じてそのことを伝えたいと思うのです。

そして最後に、インスタレーション・アートについても話されました。
「子どもたちのようすを見ていて実感したのが、空間(展示領域)の仕切りをどんどん取り払って、広げれば広げるほど、それに携わる人の想像力も高まり、気持ちさえも解放されていくんだな、ということですかね。
また子どもたちにとっては1枚の画用紙に絵を描きあげることも重要ですが、アートとしての表現の仕方は無数にあって、絵を描くことだけに縛られないこと。
それから、許される範囲であるならばその空間をめいっぱい広げて、その空間をまるごと使ってなにかをカタチにすることの面白さ、すばらしさ、美しさなどを体感して欲しかったというのがあります」

今回はホールからベランダや園庭に飛び出しましたが、それをさらに延長して園内すべてにすずらんテープを伸ばしていったらどうなるのだろうか。
いや、園さえ飛び出して、落ち葉を拾った公園まですずらんテープを伸ばしていったら・・・
きっと子どもたちばかりでなく、近所のひとたちも巻き込んで大にぎわいになるかもしれない、そんなことを夢想するだけでちょっとした高揚感と解放感に満たされました。

ドキュメンテーション

美しい落ち葉が見られる季節になりました。

冬が近づくと、どうして葉は落ちてしまうのだろう、どうしてあんなにも綺麗な色なのだろうと、誰しもが思ったことがあると思います。
今回はホールのなかに落ち葉が落ちるその瞬間を再現してみようと思います。
葉の色、匂い、ゆらめき、感触、葉の音、さまざまな感覚を研ぎ澄まして、冬の訪れと自然の不思議のなかに身を置いてみましょう。

written by OSAMU TAKAYANAGI