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【にじいろWS 2022-1月】雪のデザイン

2022年1月20日 木曜日投稿

自然が織りなす美しいデザイン「雪の結晶」を描く

2022(令和4)年1月、年明け初めての「にじいろワークショップ」です。
ところで、今年は早々から雪のニュースが多いですね。
今回ワークショップを行った一週間ほど前(1月6日)、関東南部でも雪が降りました。
東京都心でも雪が積もり(最大で10cmほどですが)、通勤や通学に支障をきたして外出時はほんとうに大変でした。降りやんだあとも路面の凍結で、すべって大ケガをして病院に搬送されたひともたくさんいました。
雪に慣れていない首都圏のひとにはかなり厳しい日になったようです。

でも、当園の子どもたちにその日のことを聞くと、おとなとはまったく違う反応でした。
「降ったよ、でも少しだけだから、つまらなかった」
「もっといっぱい降れば、雪合戦ができたのに」
「大きな雪だるまをつくりたかったなぁ」
子どもたちにとっては、困るどころか、少しの雪では物足りなかったようです。

さて今回は、そんな雪がテーマです。
雪といっても、自然が織りなす美しいデザイン「雪の結晶」をモチーフに描くワークショップです。

空のなかで手をつなぎ、くっついて・・・生まれます

まずは、一週間ほど前に降った雪のはなしで盛り上がり、
「雪の歌といえば・・・」と先生がこんなメロディを口ずさみました。
♪~ありの~ままの~すがたみせるのよ~
すると子どもたちも即座に反応し、次の歌詞を大合唱です。
そうディズニー映画でヒットした『アナと雪の女王』の“Let It Go ありのままで”。
さすがに子どもたちはよく知っています。
では、お父さん、お母さんの世代はどんな歌を思い出すでしょうか?
そんなことを子どもたちと思い浮かべるのも楽しいのでは。

さて、いつものように子どもたちの気持ちがのって来たところで、ワークショップのはじまりです。
子どもたちに1枚の「雪の結晶」を集めた写真のプリントを配りました。
先生が「雪の結晶って知ってる?」とたずねます。
ほとんどの子がそのものの存在は知っているようです。
でも、それをこんなふうに見るのははじめてのこと。
「あ、きれい!」
「なんだ、これ!?」
「星みたい」
「へんてこなカタチをしてる」
子どもたちはいつものようにそのプリントを見ながら楽しそうに言いあっています。

「いろんな形があるでしょ、でもこれ、みんな雪の結晶だよ」
と先生が子どもたちに伝えます。
子どもたちは、模様も大きさもちがうのに、どれもが同じ雪の結晶だったことに驚いたようすです。

「だけど、よーくみてごらん、どれもが同じつくりをしているの、わかる?」
と先生は続けます。
「みんな、線でつながってる!」
「クモの巣みたいだ」
「なんだか矢印がいっぱいあるよ!?」
子どもたちはおもいおもいに見たこと、感じたことを発言していきます。

「そうだね、クモの巣みたいに見えるね、みんな線でつながっているし、矢印みたいだね。
でもね、よく見ていくと、どれもが同じ〈六角形〉をしているのがわかるかな?」
先生は、そう言うと〈六角形〉に切り取った黒い紙を掲げて見せました。
「これが、〈六角形〉というかたちです」と六つの角を順番に指でさしながら、説明していきます。
すると子どもたちは先に配られたプリントの写真と見比べてそのことに気づいたようです。
先生と同じように角をひとつずつ指さしながら
「ほんとだ!六つある、〈六角形〉だ!」
子どもたちは新しい発見に大喜びです。

さらに先生は、雪の結晶がどうしてできるのかをおもしろく、わかりやすくはなしました。
「先生はいま水(の分子)で、雲のなかにいます。雲のなかは冷蔵庫みたいに冷たくて、寒くて、一人でいたら凍りそう」
と言いながら、前にすわる子どもに手招きをして
「〇〇くんも先生と同じ水(の分子)ね、だからいっしょに手をつなごう!」
と左右の手それぞれをつなぎました。
「ほら、くっついた。さあ、これで手は全部で何本?」と周りにいる子どもたちに聞きました。
「4本!」子どもたちはいっせいに答えます。
先生は「そうだね、じゃ、〇〇さんも水(の分子)になって手をつなごう!」
とまた手前の子どもを呼ぶと、今度は先生の片方の手と新しく加わった子の片方の手をつなぎ、その子のもう片方の手は先に呼ばれた子の手とつなぎました。
これで三人それぞれの左右の手がひとつにつながりました。
「ぴったりくっついたよ、三人仲よくいっしょだね。それじゃ、いま全部で何本の手になったかな?」
「1本、2本、3本・・・6本!」またまた先生の質問に子どもたちは答えます。
「そう、6本」先生はそう笑顔で応えると、三人は手をつないだまま立ち上がりました。
すると、三人のまんなかにできた空間(スペース)が、六つの角を持つダイヤモンドのような形に見えました。
先生は子どもたちに言います。
「こうやって、水(の分子)が氷のように冷たい雲のなかで手をつないで、仲よくくっついてできたのが、雪の結晶だよ」
そして、
「よく見てごらん、先生たちのまんなかにできた、このかたちが〈六角形〉になった」
子どもたちは立ち上がり、それを見ておどろいたり、感心したり。
「ほんとだ!すご~い、雪の結晶だ」

「ハーイ、じゃ、きょうはみんなに、この雪の結晶を描いてもらいます」
先生は子どもたちにそう言って、用意した黒画用紙、絵の具の入ったパレットと筆、筆洗器を配りはじめました。

ひとの個性といっしょです、ひとつとして同じデザインはありません

先生はお手本用の黒画用紙を1枚持って中央にすわると、子どもたちはその周囲に集まりました。
黒画用紙を床にひろげ、その横には白、赤、青、緑、黄色の絵の具が入ったパレットを置いて、筆を1本握ると
「描きはじめる前に、まず画用紙をよく見てね。まんなかに小さな点(穴)があるのを確かめること」
と画用紙の中央の小さな点を指でさしました。
「それから、その周りに六つの点(穴)があるのも確認してね」
と、画用紙の中心から周囲にある点もひとつひとつ指でさしていきました。
子どもたちに配った黒い画用紙も、あらかじめ中心と六角形の六つの頂点に、千枚通し(工具)で小さな点が打って(開けて)あります。
光にかざせばわかる程度の、ほんとうに小さな点(穴)です。

「それがわかったら、描きはじめるよ」と先生が言い、まずは白の絵の具に筆をつけました。
「最初はこの中心の点から出発しますね。それを、まわりの六つの、どの点でもいいので結びます」と言いながら、筆を中心に置いて、その周りに打ったひとつの点まで1本の直線で結びました。
「こんなふうに、中心から六つの点まで6本の線を結んでいきます」
これで雪の結晶を成す、中心点から周囲に向かって伸びる6本の線ができました。
「次は、この線にどんな模様を描き入れていこうかな。さっきみんなに渡した雪の結晶のプリントを見るといいよ」
と、そのプリントを参考にしながら、さまざまな模様を描きくわえていきました。
先生オリジナルの、きれいな雪の結晶が仕上がりました。
子どもたちはもう慣れたものです。そこまで先生が描くと、いつもの「描きたい!描きたい!」コールです。

早速、子どもたちは配られた黒画用紙の中心点を指でさがし、その周囲の六つの点も確かめました。
そして、筆に絵の具をなじませて、中心点から周囲に打った点までまっすぐに線を描きました。
どの子も6本、いろいろな色を使って、じょうずに描けました。
あとは、それぞれが思いのままに飾りつけていきます。

プリントや先生のお手本を見ながら慎重に、ゆっくり描く子。
大胆な色使いで、一気に6本の線に飾りを描く子。
雪の結晶だけでは物足りないのか、その周りに雪の模様まで描きこむ子。
雪の結晶が、ひとつとして同じ模様にならないのと同様に、子どもたちの個性もひとつとして同じものはありません。そう考えれば、このテーマはもっとも個性の出るワークショップともいえます。

そうそう、実は、絵の具を入れたパレットを使うのは、今回がはじめての体験でした。
でも、先生がお手本を描くときにしっかり見ていたからか、それともこれまでワークショップで絵の具の使い方に慣れていたせいか、どの子も上手にパレットを使いこなしていました。
子どもたちのなかには、パレットのなかで色が混ざり合って違う色に変化することに興味を覚えた子もいました。
「絵を描くことに集中しなさい」などとは言いません。絵を描くって、そんなふうに、絵を描く以外にもたくさんのことを学んだり、体験したり、考えたりできるから楽しいのです。それこそが、〈アート〉です。

こうしてでき上ったたくさんの個性豊かな雪の結晶は、園のなかでいつまでもとけずにきらきらと輝き続けることでしょう。

雪の結晶は、「かみさまのおくりもの」です

「きれいだね/きらきらかがやく/かみさまのおくりもの」
こんなすてきな文を書いたのは詩人の谷川俊太郎さんです。
これは、写真家の吉田六郎さんが撮影した雪の結晶の写真ひとつひとつに、谷川さんが言葉をつけた『きらきら』(アリス出版)という本に収められているものです。
吉田六郎さんは写真家であり、科学教育映画の監督でもあります。
おはなしが少しそれますが、吉田六郎さんは、世界で最初に雪の結晶のしくみを解明した物理学者の中谷宇吉郎先生と出会って以来、この雪の結晶に魅せられて後半生をその撮影にささげたそうです。
もし、この本を目にする機会があれば一度手に取ってみてはいかかでしょうか。絵本のように子どもがひとりでも読めるものです。
また、興味があれば、中谷宇吉郎先生の著作『雪と人生』(角川ソフィア文庫)もお薦めです。
「雪は天から送られた手紙である」という名言を残された、中谷先生の随筆集です。
専門的な難しい内容の本ではありませんので、拾い読みしても楽しい一冊です。

ワークショップのなかでも先生がそれとなく子どもたちに伝えましたが、もし次に雪の降る日があれば、ぜひ一度親子で雪の結晶を見てください。黒や紺色といった色の濃い布や紙等の上に雪を置き、文具として購入できる程度の虫メガネが1本あれば、とても不思議で、美しい世界をのぞき見ることができますから。

ドキュメンテーション

雪のデザイン
自然界には自然の法則に従ってできる美しいデザインがあふれています。
冬に子どもたちが楽しみにしている雪にも一定の法則があり、そこに美しさが宿ります。
しかし、実は結晶には様々な形があるのです。
美しさの法則を見つけ、デザインを学び、描いてみます!

written by OSAMU TAKAYANAGI

【羽村市】オミクロン株の急速拡大に伴う保育施設の利用について

2022年1月14日 金曜日投稿

事務連絡
令和4年1月14日

市内保育施設利用者 各位

羽村市子ども家庭部子育て支援課長

オミクロン株の急速拡大に伴う保育施設の利用について

 日頃より羽村市の行政運営並びにコロナ禍における保育施設等の運営に、ご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染症につきましては、令和4年1月以降、都内の新規感染者数が急増しています。新規感染者は若い方も増えおり、感染者との接触歴が不明な方が急増しています。
 こうした状況を受け、令和4年1月11日に東京都から「オミクロン株の急速拡大に伴う緊急対応」の協力依頼と要請がありました。保育施設等については、基本的な感染防止策の実施を徹底するよう協力を依頼されています。
 このことから、保育施設の利用にあたりましては、過日配布しました「コロナ禍における保育施設利用ガイドライン(第2版)」に基づき、ルールを守ってご利用いただきますよう、改めてお
願いいたします。
 特に、以下についてご確認のうえ、ご留意ください。

  • お子さんや同居のご家族に風邪症状等の体調不良が見られる場合は、必ず登園を控えてください。
  • お子さんや同居のご家族がPCR検査を受けた場合は、園に報告してください。

 また、施設での感染拡大の状況によっては、緊急に休園とする場合があります。

 臨時休園となった場合は、感染拡大のリスクを抑制する観点から、他の保育施設での代替保育は実施できません。自宅保育等で対応できるよう、あらかじめご準備くだいますようお願いいたします。

 保育施設では、引き続き、子どもの安全を第一に保育を実施してまいりますので、保護者のみなさまにおかれましても、これまで以上にご家庭での感染予防を徹底するとともに、体調管理にご注意いただきますようお願いいたします。
 ご不明な点等がございましたら下記担当までお問い合わせください。

【問合せ】
子育て支援課保育・幼稚園係
電話 042-555-1111 内線 231

【にじいろWS 2021-12月】冬至の野菜を見つめて 墨絵

2021年12月22日 水曜日投稿

冬至の野菜をモチーフに、視て、触れて、食するアートワーク

12月に入り、2021(令和3)年もあとわずかです。
日没が早まり、一日の終わりを告げる時間帯も早くなりました。
お迎えの時間にもなると、もうあたりは真っ暗です。
こうした日常のありふれたことで、冬の到来と一年の終わりを実感する方は多いでしょう。
そんな時節を象徴することのひとつに「冬至」があります。
存知の通り、「冬至」とは1年でもっとも太陽の出ている時間が短くて、夜が長い日です。
天文学的には、毎年12月22日ごろに観られる現象ですが、今年は22日(水曜日)がそれに当たります。

そこで、今回のワークショップは、この「冬至」をテーマにしたアートワークです。
もちろん、いつものように難しいことを学ぶのではなく、子どもたちには、「冬至」ということをこころとからだで感じとってもらいました。
また今回は、子どもたちの毎日を〈食〉の面からサポートしている当園の栄養士をはじめ、調理を担当している先生方の協力を得て、古くから伝えられてきた「冬至」に食する野菜をモチーフにしました。

視て、触れて、描いて、最後は給食で食する。そんな、まるごと体感型のワークショップです。

かぼちゃに大根…まじまじ見たことありますか?

フロアに集合した子どもたちに、先生が最初に発したのは、
「今日はスペシャルゲストたちが来てくれましたよ!」という唐突な言葉でした。
そんな言い回しにきょとんとする子どもたち。
その直後、みんなの視線がとらえたのは、なんと新聞紙の上に並べられたいくつもの野菜でした。
「紹介しま~す、採れたてのカボチャ、さわやかな香りのゆず、太くておおきな大根です」
と、先生はいたってまじめに、でも楽しそうに紹介しました。
子どもたちは呆気にとられた風でしたが、徐々に笑い声に変わりました。
日頃から目にする野菜ばかりなので、「これ、な~に?」と言う子はいません。でも、目の前であらためてまじまじと見せられたのは初めてのようです。

さて、今回のワークショップはこれら野菜をモチーフします。
なので、いつもの進行とは違い、先生より先に当園の栄養士のおはなしからはじまりました。

室内に用意された1脚の長テーブル。
その上には、調理用のまな板と包丁、それからかぼちゃとゆず。
子どもたちはそのテーブルの手前には座り、テーブルの向かいには栄養士が座りました。
これから何がはじまるのか、子どもたちは静かにまっすぐな視線を栄養士に向けています。
栄養士は、いつもと勝手が違うのでちょっと緊張気味。
でも、かぼちゃやゆずを手に取り〈食〉の話をはじめると、緊張した姿はどこへやら、饒舌な話し方に変わりました。

近づく「冬至」のおはなし、本来の収穫からすれば夏野菜であるはずのかぼちゃを、どうしてこの時期に食べるのか、ゆずの効能から食べ方など、ほかにも大根についてなど興味深い話が次々に飛び出します。
そしておはなしの最後にかぼちゃとゆずに包丁を入れ、それぞれをふたつに切り分けました。
切り分けられたふたつの野菜の断面なんて、そうそう眺めることはないでしょうから。

「まんなかに小さなタネがみえるでしょ」とかぼちゃの断面を子どもたちに向ける栄養士。
「ほんとだ!」と真剣に見つめる子どもたち。
「中身に栄養がいっぱい詰まってるんだよ」と言いながら、さらに説明を加えていきます。
「すげえ~きれい」と、野菜の断面の美しさに見とれる子もいます。
こうした新鮮できれいな野菜が毎日の給食に使われている、そんな当たり前のことだけれど、あらためて実感した子どもたちは、誰もが〈食〉に関心を示したようでした。

栄養士の話が一通り終わると、いよいよ本日のワークショップのスタートです。

墨絵の世界を体感し、色彩を加えてより個性的な作品に

栄養士からバトンを受けて、再び先生の登場です。
まずは、おなじみの前説から・・・。
野菜のおはなしを引き継いでおおきな大根を1本手に取ると、なんと民話の世界へと子どもたちを誘います。
ロシアの民話で有名な『おおきなかぶ』ならぬ、『おおきな“大根”』に話を転じて、「うんとこしょ、どっこいしょ、まだぬけない、〇〇くん、〇〇ちゃんも手伝って!」と子どもたち全員を巻き込み、ちょっとしたお芝居のごとく大騒ぎ。

これで子どもたちの気持ちが、一気にいつものワークショップに切り替わりました。
いつもながらですが、これって落語でいうところの〈まくら〉に似ていませんか?
〈まくら〉とは、おはなしの最初に、お客の気持ちを一気に落語の世界に引き込むために語る、ちょっとした前説のようなもの。
でも、こういうことってアートワークにも必要なことです。日常から、スーッとアートの世界に入りこむための入り口づくりとして・・・。

先生の前説が終わり、子どもたちの気持ちがひとつの方向に向くと、先生はその大根を床に置き、その周りに子どもたちを集めました。
先生は、その大根の形に添うように1枚の長方形の和紙(障子紙)を置き、これからはじめることを話しました。
「この大根をこの紙に描いていきます。ただし、今日はこの道具を使って描きます」と、先生は筆と墨汁を差し出しました。
それから墨について、簡単に説明しました。
「(なたね)油や松の根を燃やしてできたもの(油煙)をにかわで練って・・・」と。
これはいま学ばなくてもいいことです。でも、きちんと説明し、一度は耳に覚えさせておくことも大事です。

そんな風に話しながら、墨の入った容器をひとりひとりに回して、墨のもつ独特な匂いをかいでもらいました。
「ゲッ、臭~っ!」と言う子、なんとも形容しがたいという子、意外にイイ香りかも、という顔をする子、さまざまな感想がでます。感想は個人個人違っていい。直接体感することこそが大切です。

先生はゆっくり筆を墨に浸すと、大根をじっくり見て、解説を交えながら葉の部分、身の部分と順々に、ときに大胆に、ときに繊細に筆を進めていきます。
子どもたちは先生の筆の動きに合わせるように、うわぁ~とか、へぇ~とか言葉をもらします。それでも大根を描くその筆先の動きから、誰ひとりとして目をそらすことはありません。

先生が描き上げた大根の絵を掲げて見せると、どこからともなく拍手や「先生、うまい!」なんて言う声が。

先生が見本を描いている間に、保育士たちはモチーフにする野菜(大根、かぼちゃ、ゆず)を中央に置き、それを取り囲むように和紙と墨を入れた皿、それに筆を用意します。これを人数分3グループに分けて準備しました。

子どもたちがそれぞれの位置につくと、当然のことながらそのモチーフとなる野菜の見え方に違いがでます。例えば大根が真横に見える子、葉の部分が手前に見える子、それが奥に見える子、かぼちゃが手前で大根が奥に見える子、またその逆も。
だからといって、子どもたちの筆は動きをとめません。むしろどんどん筆を走らせます。
これって、意外に慣れていない子どもには難しいことです。一年、二年とワークショップに参加してきた子どもたちならではの成果の表れでしょうか。

和紙一面にひとつの野菜を大きく描く子、それぞれの野菜を均等にバランスよく描く子、なかにはその描く線が和紙からはみ出る子。
特に、墨と筆の特性が如実に表れるので、水気が少ないとカサカサな線になり、水気が多いとにじむ線になります。
しかし、偶然にせよ必然にせよ、そこに表れた線はどれもが正解です。
アートの世界には、間違いなどありません。答えは無数にあり、すべてが正解です。
したがって、どの子の描く絵も、個性豊かですばらしい作品です。

実は、これで完成ではありません。
さらに、この墨で描いた絵に色彩を施します。つまり、色を塗っていくのです。
墨絵の世界も美しいですが、今回はモチーフの持つ色味により近づけるように描きます。
先生が先ほどと同様に子どもたちを集めて見本を示し、その間に墨が乾くのを待って、子どもたちは自分の墨一色の絵に鮮やかな色を重ねて、最終の仕上げに入ります。

大根の身はよく見ると白色ばかりではありません、葉に近い部分はやや緑色をしていますし、表面もつるつるではなく、茶褐色の点々も、傷も、へこみさえあってでこぼこしています。だから、その部分は黒っぽく見えるかもしれません。
かぼちゃもゆずも、表面はけっして一色ではなく、さまざまな色が混ざっています。ふたつに切った断面も、中身が何層にも重なっていて、タネもあるし、色だって同系色でも明るさや暗さがあります。
子どもたちはモチーフをじっくり見つめ、たくさんの色を加えて完成に至りました。

食べることも、食を知ることも、すべてがアートへの活力

今年最後のワークショップは「冬至」をテーマに、墨で描くという描画の技法を覚えました。そしてさらに、モチーフとなるもの(今回は野菜ですが)をじっくり視るということを体感しました。
そのことによって、観察する力が自然と備わり、それを繰り返すことでその力は高まります。
子どもたちは無意識ながら、今回その観察する力を養ったはずです。

また、〈食〉についても貴重なおはなしを聞き、野菜についても知ることができました。
家庭ではもちろんこと、園の給食でも食すること、それに関連する食材のことなどは、ともすれば話題になりにくい事柄ですが、健康でいきいきとした毎日を過ごすにあたっては、おろそかにできないことです。
食べることが生きる活力であれば、それに関わることを知りつくすこともりっぱなアートワークの一環です。
特に子どもたちには、そのことを日々のなかで身につけてほしいと考えています。

今年もコロナウィルスの影響で、さまざまな物事が厳しい状況下にありました。
それでも、子どもたちの元気な笑顔とやる気満々の姿勢に、先生や保育士らスタッフ一同励まされてきたように思います。
来年もまた、アートを通じて明るい未来を築けますように!

ドキュメンテーション

今回は、調理の先生方とのコラボレーション企画です。
これまで様々な経験をしてきたワークですが、今回は「食」に着目し、特にこの時期に古くから伝え食されている、冬至の野菜に着目します。
調理の観点から「食」素材についての話を聴き、アートの観点では、その姿、形、色、艶、香り、感触などをよく観て、感じ、描くことを目指します。
観察して「描く」ことは、自身の中の平穏や辛抱強さなども必要となるものです。
その姿に面白さを見い出し、また描くという行為を静かに真剣に遂行するそんな姿を経験して欲しいと思います。

 

written by OSAMU TAKAYANAGI

【動画】保育展 ホップの会「桃太郎」

2021年11月28日 日曜日投稿

今年の保育展は「展示」のみの開催となりました。
そこで、毎年大ホールにて開催していた「ホップの会(羽村市の男性保育士の会)」の公演の代わりとして、
桃太郎(劇)の動画を作成したそうです。

お子さんと一緒に是非ご覧いただければと思います。

【にじいろWS 2021-11月】羊毛と石のペーパーウエイト

2021年11月25日 木曜日投稿

自然素材と石との絶妙なコラボ !?

11月も半ばを過ぎると、当園から望む山の木々も色あざやかな衣装へと衣替えです。
そんな季節のなか、年中・年長クラスの子どもたちが多摩川沿いの河原までお散歩をしました。
お散歩の目的?それはもちろん、穏やかな日差しを浴びながら、おいしい空気を頂きに!
・・・ですが、実はもうひとつ。
お散歩を兼ねて、今回のワークショップの材料を取りに、いや、正確には“拾い”に行きました。

子どもたちが拾うのは、河原にある石ころです。
足もとにゴロゴロ、ゴツゴツと敷き詰められた、あのごく普通の石ころ一つです。
ただし、その石ころは、子どもたちひとりひとりが自分の意思で、自分が最も気に入ったものを選びます。
決まりごとは、手のひらに乗るくらいの大きさであること。それ以外は、色も形もすべて自由です。

この時点では、その石ころをどのように使うかは伝えていませんので、子どもたちは純粋に自分の好みに合った、自分だけの石ころ探しに夢中でした。
石ころだらけのいつもの河原ですが、どうやら子どもたちの目には、この時ばかりは宝の山のように映って見えていたに違いありません。
持ち帰った石を改めて見ると、子どもたちそれぞれの個性や嗜好がはっきり表れていることに感心します。

そして今回は、石ころに加え、さらに重要な材料を用意しました。
それは、温もりのある柔らかな繊維として、これからの季節の装いには欠かせない素材でもある羊毛です。
今回のワークショップは、この羊毛という自然素材の特性を生かし、子どもたちが拾ってきた石ころとの絶妙なコラボによって、世界に二つとない、自分だけのオリジナル〈ペーパーウエイト〉をつくります。

羊毛のお話しと、羽根のような素材におおはしゃぎ!

子どもたちは河原で拾った自分の石ころを一つ、小さなビニール袋の中に大事に入れて集合しました。
お行儀よく座る子どもたちの前には、虹のように色とりどりに染められた毛糸の束が並んでいます。

先生はまず、そのなかの一番太い白色の束を取り出し、それを1本の綱のように長く伸ばして、ぶらぶらと揺らしました。
それを見て子どもたちは「サルの尻尾だ」とか「ゾウの鼻みたい」といって大笑い。
すると今度は、それを枕ほどの塊に丸めて胸に抱きかかえました。
これにはみんなが「あかちゃんのだっこだ」と声をそろえて答えました。
ただの白い毛糸の束なのに、子どもたちにはさまざまなものに見えるようです。

「では、ここで問題!」と先生はその毛糸の塊を掲げて、
「これは動物の毛だけど、なんの動物だがわかるかな?」と聞きました。
ウマだとおもうひと?ゾウだとおもうひと?サルだとおもうひと?
次々に出す動物の名前に、子どもたちはバラバラに手を上げて答えます。
正解は・・・と、先生は一冊の絵本を取り出しました。

それは園の書棚にある『ペレのあたらしいふく』(エルサ・ベスコフ作/おのでらゆりこ絵/福音館)です。
物語は、子羊の世話をする男の子ペレが、羊や近所の人たちの協力で青い服を手に入れるまでのお話です。
子どもたちはそれを見て、すぐに「ひつじ!」とわかりました。
でも、誰もが羊の毛と聞いてびっくりしています。
絵本にも描かれているように、羊の毛は白くてゴアゴアしているのに、目の前の羊の毛は糸のように長くて、柔らかそうで、色だって白ばかりか、赤、黄、青、オレンジ、茶・・・それに黒だって。
先生は、そこで子どもたちに易しく、おかしく、こんな説明をしました。
「羊さんは外で飼われているから、刈ったばかりの毛は泥だらけで汚いし、オシッコやウンチの匂いだってするかもね。だからよーく洗ってきれいにして、1本1本の毛を柔らかく伸ばして。色だっていろんな色がある方がいいでしょ?だから染色という色をつける作業もして。それでこんなふうになるんだよ」
子どもたちは笑いながらも、先生の話に興味深く耳を傾けていました。

次に先生は羊毛の束をひとつ持って、両手で左右に強く引っ張って切り離そうとしました。でも、その束はまったく切れません。今度は優しく、そうっと左右に引っ張ると、スーッとふたつに切れて分かれました。
「羊の毛は、こうやって優しくしないと、ちぎれないんだよ」と先生はその特性を教えました。

また別の束から、手のなかに収まるくらいの小さな塊を切り取ると、それを指で紙のようにうす~く、うす~くたいらに広げ、頭より高い位置から静かに落としました。
すると、それはまるで鳥の羽根のようにふわふわと、空中に漂うようにゆっくり落ちていきました。
子どもたちはそれを不思議そうに眺めていましたが、いつものことながら、もう見ているだけじゃおさまりません。
先生は即座に「じゃ、みんなでやってみよう!」と、羊毛を小さな塊に切り分けて子どもたちに渡しました。
子どもたちは先生にならって、その小さな羊毛をうすく広げ、思い思いに空中に投げ出しました。
どんなに強く投げても、落ちるときはゆっくり落ちます。なかには、それを口もとにおき、ふーっと息を吹きかけて飛ばしてみせる子どもたちもいました。
しばらくは、自分の放ったそれを追って、部屋中を飛んだり跳ねたりおおはしゃぎです。

こうして子どもたちは、羊毛という素材がどんなものかを体感しました。
でも、ちょっと待ってください、これで終了ではありませんよ、ここからが本番の「羊毛と石のペーパーウエイト」づくりですからね。

世界にたった一つだけ、その価値はなにものにも代えがたい

最初に子どもたちは、羊毛を小さな塊に切り分けて、色別に入れた箱から自分で使いたい材料を選びます。
それを長さ10~15㎝ほどのひも状にうすく伸ばし、石ころにぐるりと一回り巻き付けます。石ころにぴったりと貼り付くように、きつく巻き付けます。
それができたら、また別の好きな色を選び、同じようにひも状にうすく伸ばし、それをまたまた石ころに巻き付けます。いく度もそれを繰り返し、縦にひと巻き、横にひと巻き、斜めにひと巻きと、石ころにぐるぐると巻いていきます。石ころの表面が見えなくなるまで巻き続けます。
そこまでできたら、そのままビニール袋に入れ、中性洗剤を直接そのものに数滴たらします。
石ころを包んだ羊毛に中性洗剤が染み込んだら、ビニール袋の上から両手でそれを包み込むようにして、ゴシゴシ、ギュッギュと力いっぱいこすり続けます。
じわじわとビニール袋の内側に泡が出はじめたたら、そっと袋のなかに手を入れ、石ころの表面に巻き付けた羊毛がはがれていないかを確認します。
しっかり巻き付いているのがわかったら袋から取り出し、乾いたタオルで水気を拭きます。
そのまま乾かしておいて、表面から水分がなくなれば完成です。

最後まで黙々と仕上げる子、途中でちょっと飽きてしまう子、材料選びに長い時間迷う子、石に巻くのが終わってしまい、羊毛だけをうすく伸ばしてクルクルと器用に丸めてボールを作る子。
向き合う姿勢はさまざまですが、どの子も最後までしっかり仕上げました。

完成した作品を手に取ればわかりますが、中身は硬い石なのに、表面に羊毛を巻いたことで、とても柔らかで温かな手触りになります。見た目にも、冷たい塊というよりは、人肌のような温もりと自然界の美しさを感じます。
これは、共に自然から生まれた素材であることも要因ではないかと思います。
さらにこの作品について言うなら、石ころの形や色や大きさが違うように、選ぶ羊毛の色も巻き方も二つと同じもが存在しないのですから、これこそまさに世界にたった一つだけの〈ペーパーウエイト〉です。従って、その価値はほかのなにものにも代えがたいといえます。

これは蛇足ですが、小さな〈アート〉作品として生活空間に置けば、装飾品のひとつとして十分に楽しむこともできますので、完成した作品を眺めながら、「どんな風に使おうか?」などと、親子であれこれ想像して会話を交わすだけでも素敵な時間を過ごせるはずです。

太古の昔、ひとは自分の思いを「石」に託した

いまはアスファルトの道路が主流となり、石ころばかりが転がっている、いわゆる砂利道のような道路を見かけなくなりました。
少し時代を遡れば、どこにでもごく普通に石ころがありました。だから子どもたちのあいだでも、石蹴りなど石を使う遊びが多くありました。そんな遊びをする子どもも見なくなりました。
今回のように河原で石ころに触れるという行為は、自然のなかの木や草花と触れることと同じです。
実際に手で触れた石の感触や目で見たさまざまな石の色や形は、きっと子どもたちの心に深く残っていくでしょう。想像力がたくましく、純粋で感受性が豊かだった幼い日の記憶とともに。

最後に、「石」にまつわるおはなしをご紹介します。
それは、「石文(いしぶみ)」というものです。
まだ文字というものがなかった太古の昔、ひとはその時々の気持ちを石に託して相手に送ったといわれています。つまり、その石の持つ手触りや形で自分の思いや状況を伝えた、石の手紙(文)です。
これは、ドラマの脚本や小説などを書いた作家の向田邦子(1929~1981年)さんのエッセイに書かれていますので、ご存知の方も多いかと思います。
ここにその一部を抜粋し、今回のワークショップを閉じることにします。

「昔、ひとがまだ文字を知らなかったころ、遠くにいる恋人へ気持を伝えるのに石を使った、と聞いたことがある。男は、自分の気持ちにピッタリの石を探して旅人にことづける。受け取った女は、目を閉じて掌に石を包み込む。尖った石だと、病気か気持がすさんでいるのかと心がふさぎ、丸いスベスベした石だと、息災だな、と安心した」―向田邦子著『男どき女どき』収録「無口な手紙」より。

ドキュメンテーション

気温が下がり、モコモコの洋服やパジャマなどを出す季節になりました。
昨今ではペットポトルをリサイクルした洋服が身近に感じられるようにもなっていますが、
人は太古から、自然界の恩恵を受けて生きてきました。
肌や体を守る繊維は、植物や動物の毛や革で作られていたものです。

今回は、思わず手に取りたくなる柔らかくて温かい素材
羊の毛に焦点をあててみます。
羊の毛が私たちの生活に実は身近にあることを知り、
その素材の特性を感じ、加工する体験をしてみます。

お散歩で行った先で、自分の手に馴染む石を拾い
石と羊毛のコラボです。

written by OSAMU TAKAYANAGI