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【にじいろWS 2023-2月】冬眠? 空間あそび - テープのインスタレーション

2023年2月21日 火曜日投稿

春が来るまで、落ち葉にくるまりひと眠り。さて、そんな空間あそびとは?

「三寒四温」なんていう言葉を古いひとは想い出すのですが、
いよいよ春の訪れももうすぐですね。
自然のなかに生息する無数の生き物たちも、長い冬眠から目覚めの準備をはじめているかもしれません。
もっとも、深く静かな穴のなかでぬくぬくと落ち葉にくるまりながら眠っている生き物たちには、まだちょっと春は先延ばし、というところでしょうか。
今回のにじいろワークショップは、そんな生き物たちの冬眠の情景を思い浮かべながら、〈インスタレーション( Installation )〉を体験します。

年中クラスの子どもたちは初めての〈インスタレーション〉ですが、年長クラスの子どもたちは一昨年の10月に「クモの巣」を想定した〈インスタレーション〉を行っています。
〈インスタレーション〉とは、空間そのものをひとつのアート作品としてとらえる、ということです。
さて、今回はいつものホールが、子どもたちの想像力と創造力でどんなアート空間に仕上がるのか楽しみです。

円すい形のお家に、子どもたちはどんな光景が見えるのでしょうか

子どもたちが入室する直前まで、先生と保育士はワークショップの準備で大わらわでした。
それというのも、今回の〈インスタレーション〉は大仕掛けだからです。
では、準備のようすを簡単に記しておきましょう。

まずは黄、オレンジ、赤、ピンクなどいくつかの色のすずらんテープを用意します。
すずらんテープは、色ごとに一定の長さで十数本ずつ切り分けます。
切り分けるその一定の長さとは、天井から床面までです。
ただし、天井から床面まで垂直に測った長さではなく、ホールの天井中央の一点を起点にして、そこから斜めに床面へ降ろした長さです。
当然、斜線の傾きがゆるやかなほど無限に長くなるので、ここは床面の幅に応じた斜線の傾きを想定し、その長さ測りました。

次に、各色十数本ずつ切り分けられたすずらんテープを、同色でまとめて束ねます。
黄、オレンジ、赤、ピンクで4つの束ができあがりました。
最後に、同色ごとに束ねた一方の端の部分のみをひとつに結びます。
1本ずつばらばらだったすずらんテープも、これできれいにまとまりました。
実は、これが今回のワークショップの土台となり、これをつくるのに先生や保育士が天井と床面を測り、すずらんテープを切り分け、ひとつに束ね・・・とその準備に追われていたのです。
でも、以上で準備OKです。

というところで、年中クラスの子どもたちの登場です。
大きな声でごあいさつをすませると、先生は準備しておいたすずらんテープの束を持って子どもたちの前でゆっさゆっさと大きく揺らしたり、吹き流しのようにすばやく空中を走らせて見せました。
目の前でパラパラ、ひらひら舞い踊るすずらんテープに、早くも子どもたちは大さわぎです。

ですが、ここまではいつもの序章です。
先生はそのすずらんテープの束をひとつ手に取ってホールの中央へ行き、椅子の上に立って天井に備え付けられている金具にそのすずらんテープの結んだ部分をしっかり固定しました。
この天井の金具ですが、子どもたちが乗る、揺れるなどの感覚刺激を受けて遊べる〈感覚遊具〉を支えるための特別なものです。園舎を建てる際に、このホール天井に設置しました。
今回はその金具を大いに活用させてもらいました。

先生がそのすずらんテープを天井に固定し終えると、十数本のすずらんテープがいっせいに天井から降りてきました。
その1本1本のすずらんテープを先生と保育士は床面の四方八方へ斜めに引っ張り、その1本1本を床面に養生テープでしっかり留めていきました。
天井の1点から放射線状に床面へ伸びた十数本のすずらんテープは、まるで円すいを形づくるように見えます。
あるいは、円すい形のテントの骨組みのようです。
その光景を見ていた子どもたちは、最初はなにがはじまるのか不思議そうでしたが、みるみる円すい形に仕上がってくると、「すごい、すごい」と声を上げてはしゃぎはじめました。

そこで先生は、はじめて今回のワークショップのテーマを話しました。
「この季節は、自然のなかで生きている動物や昆虫たちはまだまだ冬眠しているよね」
子どもたちは冬眠の意味を理解しているようで、
「うんうん!」とうなずきます。
「なので、今回はこの部屋いっぱいに冬眠するためのお家をつくります」
と先生は言うと、子どもたちに出来上がったばかりの円すい形の中に入るよううながしました。
子どもたちは待ってましたとばかりに入ろうとしましたが、
「ちょっと待って、その前にひとつ注意しておきます」と先生は子どもたちの動作を留め、
「このお家は壊れやすいので、1本1本のテープを蹴ったり、手で押したりしないこと」
子どもたちは「はーい」と元気よく答えたものの、どうやらまだ勢いあまって飛び込んでいきそうです。
そこでさらに「もし、このお約束が守れないなら、今日はそこで終わりにします」と。
その厳しいひとことはさすがに効いたようで、子どもたちも自ら気をつけながらゆっくり円すい形のスペースの中に入っていきました。どんなことにも守るべきルールはあります。
ことアートワークは繊細で、注意深く行動することが必要ですから、それを子どもたちにも知って欲しかったのです。

でも中に入ったら、それだけで気分は高まっていきます。
暴れないように、と自分を律しながらも、どこか落ち着かずにおともだち同士で押し合ったり、くっついたりと気持ちは今にも暴れ出しそうです。
そんな子どもたちを中に見ながら、先生と保育士は天井から縦に伸びた十数本のテープの外周に、今度は新たなすずらんテープを横にぐるぐると巻きはじめました。
円すい形のお家は、まるで色とりどりの縦糸と横糸で編みこまれたようです。

またその勢いのまま、保育士が壁部分にもほかのすずらんテープの束を固定し、同じように床面に向かって1本1本のすずらんテープを斜めに伸ばして固定し、もうひとつ新たな小さなお家をつくりました。
これでふたつの冬眠用のお家ができました。

先生は子どもたちに一旦円すい形の中から外に出るように指示し、
「いまのままじゃ、ちょっとお家が寂しいね、なにか飾りつけをしようかな?」と言いました。
子どもたちはもちろん、その意見に大賛成です。
先生は、あらかじめ用意したお花紙を子どもたちに見せました。
「このお花紙は、とってもやわらかくて、手のなかでまるめるとふわっとした形になるから、これでお花をつくったりできるよ」とお花紙の特性を話しながら花の見本をつくって見せました。
それからその花を円すい形のお家にセロテープで貼り付けました。
骨組だけだった円すいのお家が、そこだけパッと明るくなったみたいです。
子どもたちは思い思いの色のお花紙を取ると、いつものように自分だけの独創的な花をつくって貼りつけていきました。
ふたつの円すい形のお家にどんどん花が咲き、春を迎えて目覚める準備がすっかり整ったように見えます。

そんな飾り付けが終わると、先生は
「じゃ、最後にぐっすり冬眠できるように、温かな布団を敷きましょう」と言って、古新聞を子どもたちにわたしました。
子どもたちはその古新聞を折ったり、丸めたり、ひろげたりと自由にそのお家のスペースに置きはじめました。
おそらく子どもたちの目には、そこに敷き詰められたのは古新聞ではなく、温かなベッドや布団や枕に映っているのでしょう。
そのうちに、ある子が、いきなり新聞をひろげて壁に貼り付けました。
「それ、なーに?」と聞くと、
「テレビだよ!」と答えました。
その発想にはただただ脱帽です。
すると別の子が新聞をおりがみのように折って、かわいいテーブルをつくって運んできました。
もう、おとなのつまらない思考や想像力をはるかに超えています。

ワークショップの終わりは、全員で古新聞のふとんにくるまって眠りにつきました。
子どもたちが見上げたホールの天井も、きっと、いつもの天井ではない別の景色に見えていたのでしょうね。

最後のワークショップに、たくさんの想い出とアートな体験を!

今回は年中クラスの子どもたちがつくった円すい形のお家は、そのまま年長クラスの子どもたちが引き継ぐことになりました。
もちろん、年長クラスの子どもたちも同様にお家づくりをしてもらいます。
なので、天井の金具を起点にした円すい形のお家がふたつ、壁を起点にしたものがふたつと、いつもの大きなホールも子どもたちがつくったお家でいっぱいになりました。

そうそう、今回のワークショップは今期最後になります。
ですから、年長クラスの子どもたちにとっては、これがほんとうに最後のにじいろワークショップです。
いわば、2年間の集大成です。
最後の最後まで自由に、のびのびと、こころもからだもおもいっきり解放して臨んでくれたら、と先生は願っていました。

そこで、先の年中クラスでは円すい形のお家の原型づくりを先生と保育士で行いましたが、年長クラスの子どもたちは先生と保育士との共同作業で行うことにしました。
まず天井の金具にすずらんテープを固定し、そこから床面に垂れた十数本のテープ1本1本を子どもたち一人ひとりが握ります。
それから大きな円を描くように一人ひとりがひろがって、1本ずつ床面にすずらんテープを貼り付けていきました。
そうして出来上がった円すい形のお家に、年中クラスと同じように別のすずらんテープを横にぐるぐると何周も渦を巻くように張り巡らせていきました。

年長クラスの子どもたちも、やはりそこへ飾り付けをしましたが、ここは敢えて冬眠のためのお家づくりと限定せずに、
「お城でも、隠れ家でも、また別のもので良いから、お友だち同士数人でこのホールにあるお家を選んで、自由に飾り付けをしていいよ」と急きょ先生は子どもたちの自由意志に任せることにしました。

お花紙を使ってお花をつくるもよし、きれいなリボンをつくってもよし、古新聞をどんなふうに利用するもよし、もしも看板などを付けたければ短冊サイズに切った画用紙に文字や絵を描いてもよし、そんなふうに選択肢に幅を持たせました。

元気の良い男の子たちのグループは「へびのいるばしょ、きけん」などと看板を掲げて、怪しげな飾り付けをしはじめました。
女の子は数人で一番小さなお家のなかを、赤やピンクのすずらんテープをたくさん用いて華やかに飾りつけをしていました。
一番大きなお家を占領した子どもたちは、そのなかでゴロゴロ寝ころびながらふざけたり、楽しそうに笑い合っていました。
そして最後は、やっぱり古新聞をその中に敷き詰め、全員でおやすみなさい、のポーズです。
年長クラスの子どもたちそれぞれが見上げた天井もまた、いつもの景色とは違うものが見えていたことでしょう。

年長クラスのワークショップ終わりは、先生に2年間の感謝を込めたごあいさつを送りました。

年長クラスのみなさんへ
この2年間、にじいろワークショップで学んだこと、経験したことは、すぐに役立つようなものではないけれど、いつの日か必ず、どこかで支えてくれたり、元気づけてくれるはずです。
おとなになっても、また世界中のどこにいても、ここで身につけた想像力と創造力は一生失うことのない宝ものですから。

自分もアートの一部になる、そんな非日常的な世界をつくる

にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生からのコメントを紹介して、今期最後のワークショップを締めくくろうと思います。
「すずらんテープひとつで、非日常の世界に入り込める。これって、すごいことですよね。
とくに子どもたちの想像力の豊かさはおとなのそれではとうてい及ばない領域にあります。
指導の範疇をはるかに超えた、まったく予想外の発想やそれを実現化する力は毎回驚かされますが、そういう部分をむしろもっと伸ばしてあげられたらと考えています」

先生は、いつも子どもたちに寛容です。
〈のびのび〉と〈自由〉な発想やアート的な行動に対しては、子どもたちと一緒に感動し、どんな些細なことでもほめてあげることを忘れません。
もっとも、そのために最初に予定していた指導がその場の子どもたちの反応によってよく変更になるので、現場で準備をする保育士たちは大変そうですが(笑)。

そして、今回のワークショップをこんなふうに語りました。
「この〈インスタレーション〉では、自分もアートの一部になるということを体感してもらいたかったので、
それは自然に全員がこのアートの世界に溶け込んでいたのでよかったです。
逆にいえば、子どもたちがそこに居なければ成立しないアートの世界を、みごとにつくりあげてくれたな、と思います。
細かなことでいえば、天井から床面に向かってふりそそぐシャープな放射線から得られるインスピレーションをどこまで感じとってくれたかということが重要です。
今回は視覚的なことですが、普段のホールにはない状況ですからね、それだけでもかなり子どもたちには特別な光景として刺激を受けていると思います。
何気ないすずらんテープ1本でも、普段そこに見えていた景色が一転するのだ、というアート的な思考を学んでくれたらうれしいですね」

来期もまたのびのびと自由に、そしてあそびながらアート体験ができる最高のワークショップを行っていきます。

ドキュメンテーション

冬眠 ? 空間あそび ― テープのインスタレーション
冬になると動物や虫たちはどうしているのだろう?
そんな疑問からホールテントをいくつかつくり、子どもたちを遊びに誘ってみます。
テントは新聞紙やすずらんテープを骨組みとして、周りにいろいろ飾っていきます。
子どもたちから、どんな発想が出てくるでしょうか?
材料をいろいろ用意して、楽しい冬の物語を一緒に参加したいと思います。

written by OSAMU TAKAYANAGI

大雪に伴う保育園の対応について

2023年2月9日 木曜日投稿

現在、天気予報にて明日の午前8時ごろからの降雪が発表されております。夜遅くまで続く降雪により、多摩地域では気温の低下が進んだ場合、多いところで10~20センチ積もる可能性もあるとのことです。

大雪により警戒レベル3以上の発令が羽村市から出された場合は休園となります。現時点での気象庁による発表では、大雪警報が発表される可能性は「中」となっており、大雪特別警報までは示されておりません。そのため、明日は通常通り開園する予定です(保育中に大雪特別警報が発令された場合は、お迎えのご依頼をさせていただきます)。

詳細につきましては、【羽村市】風水害等発生時における市内保育施設の臨時休園等の対応について をご確認ください。

【にじいろWS 2023-1月】光の箱

2023年1月24日 火曜日投稿

冬の光を集めて、体感したことのない美しい世界を創出

冬の陽射しは穏やかで、とてもやわらかな温もりをあたえてくれます。
透き通った外気にゆらぐ淡い光の煌めきさえ、どこか愛おしい。
そんな冬の太陽からそそがれる光の束を集めて、今までに体感したことのない美しい世界をつくります。

今回は年中クラス・年長クラス共に同じ創作工程を経て、子どもたちの両手のひらに収まるほどの小さな箱をつくります。
でも、箱のなかには宝石のような輝きを放つ光がぎっしり詰まっています。
しかもそれは、つくり上げたその子だけの唯一無二の「光の箱」です。

新しい年を迎えて初めてのにじいろワークショップは、この「光の箱」を創出します。

※なお、今回参考にさせていただいたのは、大学准教授であり美術作家でもある松村泰三氏が考案した「光の箱」です。
もちろん、当園の子どもたちに応じた内容に監修し、通常のにじいろワークショップとして指導しています。
従って、ここで使用する材料や大きさなどは、一般的に流布されているテキストや指導要領とは異なります。

つくり方は簡単!でも、丁寧に、順番通りに組み立てましょう

年中クラス・年長クラス共に同じ工程を経て、この「光の箱」づくりを進めます。
そこで、今回はまず創作工程を示しておきましょう。

工作用の厚紙を幅7cm、長さ40cm+のりしろ(1.5cmほど)の帯状にしたものを、児童ひとり1枚用意します。
帯状の片面には10cm間隔に4本のたに折りを示す線を施します。

たに折り線のないもう片面にそれぞれが好きな模様をカラーペンで描きます。

模様を描いた面を外側にして、内側をたに折り線に沿って折りたたんでいきます。

四角形の箱型ができたら、のりしろを両面テープでしっかり貼り付け、正四角形の形に整えます。

帯状の面にある縁(ふち)に工作用のボンドを塗ります。ボンドは綿棒を使って丁寧に塗ります。

各辺10m以上の正方形に切ったトレーシングペーパーを1枚用意し、箱にふたをかぶせるように貼り付けます。

トレーシングペーパーを底面にして箱を置き、しっかり付着するまで押さえます。

それが乾くまでの間、アルミホイルなど鏡面加工されているペーパーを7cm幅の帯状に切ったものを数多く用意。

それを円筒のようにまるめてボンドで貼り付けます。直径は自由なので、大小さまざま円筒をいくつもつくります。これが基本の形となります。
また円筒だけではなく、四角柱でも、三角柱でも、星型やハートの形でも、円筒のようになればよいです。

それができたら、たくさんつくった円筒状のものを箱のなかに詰めていきます。

箱のなかがぎゅうぎゅう詰めになったら、それが外に出ないようまたふたをします。今度は、カラーセロハンでふたをしますが、トレーシングペーパーのように1枚で被せるのではなく、赤・黄・青・紫などいくつかの色のセロハンをそれぞれ2~3cm幅に切ったものをランダムに、縦横かまわず箱のふたになるよう貼り付けます。色の並べ方は自由ですが、いくつもの色が重なるように貼ります。

最後に、箱の縁から外にはみ出したトレーシングペーパーやカラーセロハンの余計な部分は箱の形に沿って切り落とせば完成です。
完成した「光の箱」の見方は、カラーセロハン側を太陽の光に向け、トレーシングペーパー側から箱のなかを覗くように見ます。

創作過程で、使用する材料の用途や素材の特色も学びます

今回のワークショップはいつものホールでの創作ではなく、年中クラス・年長クラス共にそれぞれのお部屋で行いました。
なので、臨む気持ちに少し変化があったかもしれません。環境って、すごく大事ですから、とくにアートに取り組むときって、なおのこと。
それを考えると、今回のようにいくつかの決められた単調な作業を繰り返し、じっくりと創作に打ち込んで完成させるような作品づくりは、日頃慣れているお部屋でよかったかもしれません。
いつもに増して、周囲に気を取られず、そのものに集中することができたように思います。

はじめる前に、先生はまず自身でつくった「光の箱」を子どもたちに見せました。
机に座る子どもたちに間近で、順番に見せて歩きました。
でも先生の手のなかにただ収まっている箱は、中身もろくに見えませんし、一見どうということのない正四角形の箱です。
子どもたちはそれがどんな意味を持つ箱なのかは誰も知りません。
先生はその箱をもって、お部屋のベランダ側にあるガラスサッシへゆっくり行くと、そのガラスに箱を押し当てました。
するとその瞬間、箱のなかにさまざまな色の模様が、きらきらと輝きながら浮かびあがって見えました。

子どもたちはいっせいに大きな歓声をあげました。
「うわ~なんだ!?」
「光ってるぞ」
さっき自分たちが見たふつうの箱のなかが、太陽の光にかざしただけで一瞬にして魔法のように輝き出したのですから、それはびっくりです。
先生はさらにガラス越しに押し当てた箱を上下左右に動かしたり、揺らしたりしました。
なんと、そのたびに箱のなかの模様も、まるで生きているように次々に輝きを変えて見えてきます。
「動いた、また変わった!」
「なにが入ってるの?」
子どもたちはその小さな箱のなかが目まぐるしく変わるたびに興奮して立ったり、座ったり。
「今日は、これをみんなにつくってもらいます」
先生はそう言うと、創作工程を順番に子どもたちに伝えながら進めていきました。

創作工程を順番に指示しながら、先生はいつものユーモアを交えて、トレーシングペーパーやカラーセロハンの使い方やその素材の特色について説明をしました。
「トレーシングペーパーは、目の前にかざして見ても普通の紙のようにその向こうは見通せないよね。でもそれを直接胸につけている名札に押し当てたら、ほら、ちゃんと名前が透けて見えてくるよ」
先生はひとりの子どもの胸の名札にそれ押し当てて見せました。
さっきまで何も見えなかった紙が、そうして見ればちゃんと名札の名前が読み取れます。
「ほんとだ!」と子どもたちは自分の名札にそれを押し当ててみました。

ある子が自分の着ている服に押し当てて
「あ、わたしの服の模様が見えたよ」と言い出しました。
その声に反応して、ほかの子どもたちも自分の洋服に描かれたプリント柄や刺繍にそれを押し当ててみました。
「見えた、見えた」とあっちこっちで連呼していました。

またカラーセロハンも目の前にかざすと、お部屋全体がそのセロハンの色に変わります。
青いセロハンをかざせば青色に、赤色をかざせば赤色に。
またまたある子が、左右の目に別々の色のセロハンをかざして見ています。
「わ~~っ、なんだこの色!?」とおおはしゃぎ。
はて、それは何色に見えたのでしょう・・・。
いずれにしても難しい説明より、こうして実際に体験して学ぶ方が、その使い方も素材感も身につくようです。

そして先生はワークショップの締めくくりに、年中クラス・年長クラス共にそれぞれ完成した「光の箱」をベランダに集めてひとつの大きなオブジェのように積み上げました。
積み上げ方次第で、まっすぐ天に向かって建つ一本の光の柱のようにも、また横につなげて美しく輝く壁のようにもなります。
「光の箱」は、まるで生きもののように、つねに流動的にうごめいていきます。

太陽からの光の恩恵は、玩具から建築まで無限大です

太陽からふりそそぐ光を利用して楽しむ玩具といえば、万華鏡を想い出します。
これはみなさんご存知かと思いますが、一般的なのは円筒のなかにガラス板が三枚、三角に組まれ、そこに小さなガラス片や色紙などが入っているもので、円筒自体を手でくるくる回しながら小さな覗き穴から見るとなかのガラス片や色紙がさまざまな模様に変化するというもの。
これも、覗き穴の反対側から入る光によって、予想できない独特な美しさを見せてくれます。

また、教会の窓などにはめ込まれたステンドグラスも、太陽の光によってさまざまな表情を魅せてくれます。
さらにいえば、こうした太陽の光を採り入れたり、それを活かした建築も世界中にたくさんあります。
今回のワークショップでは、ひとつの小さな箱づくりにすぎませんが、ここから広がる世界はかぎりなく存在するということです。
それこそ、子どもたちの未来を象徴するかのように。

では、最後ににじいろワークショップを企画・指導する松澤先生からのコメントを紹介します。
「季節的に屋外での作業は無理ですが、室内での作業でありながら屋外で太陽の陽射しや透き通った外気を感じることができるワークショップとして初めて採用した内容でした。
誰もが一連の工作工程を経ることで完成するという、ごく一般的なものですが、完成した形こそみんな同じでもそこに浮かび上がる(見える)世界はまったくのオリジナルな世界になるというのが、この『光の箱』の最大の特徴です。
特に当園の子どもたちですから、これまでの経験を活かし、一人ひとりが丁寧に取り組んでいくことでより独創性を発揮できるという点で、とても有意義な工作になったと思います。

また工作の過程で子どもたちは切ること、折ること、貼ることなど細かな作業を繰り返すので、かなり指先の訓練や素材に慣れるという点で有効な作業だったといえます。
もっとも、当園のワークショップでそれはかなり鍛えられてきているので、案外たやすくこなしていたかもしれませんね。

それより、完成した直後に子どもたちがベランダに飛び出して、太陽の光に向かって自分の『光の箱』を競い合うように高く、高く差し出している姿には胸を打たれました。
誰に促されたものでもない、自然に感情として表れたものなので、そういう内側から湧き出る思いに駆られることこそ本物ですから。
そして、それぞれの『光の箱』に映る予想もできない輝きや揺れ動く模様に歓声を上げていたことが、実は最もこのワークショップで得た純粋な体験だったのではないか、と思います」

ドキュメンテーション

光の箱
空気が澄み切って光が綺麗に見える季節です。
光の工作は昨年も行いましたが、今回は光のボックスを作ります。
比較的簡単で、よくある工作ではありますが、誰が作っても達成感のある素敵な箱が出来上がります。
窓際に置いて太陽の光が差し込む様子を楽しみます。
今回は保育室に積んで灯りを照らしてみたいと思います。

written by OSAMU TAKAYANAGI

【羽村市】発達支援講演会のお知らせ(YouTube配信)

2022年12月23日 金曜日投稿

羽村市より発達支援講演会「発達の特徴がある用事に大切なこと~子どもの心の育ち~」の周知依頼がありましたのでお知らせさせていただきます。

配信日時は、2023/1/11(水) 9:00~2/12 17:00
配信URLは https://youtu.be/KUbSFJtb_ig
となります。

詳細は下記チラシをご覧ください。

【にじいろWS 2022-12月】アルチンボルドへのオマージュ

2022年12月19日 月曜日投稿

奇想で、あやしく、魅力的?そんな画家「アルチンボルド」に挑戦!

いきなり「アルチンボルド」と言われて、すぐにそれが画家の名前とわかるひとはどれほどいるでしょうか。
ましてや、その代表的な作品を問われても・・・。
とはいえ、意外にその代表的な作品を一度はどこかで目にしているかもしれません。

「アルチンボルド」とは、16世紀(1500年代)に名を馳せたイタリア出身の画家です。
正式には、「ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo/1526―1593年)」。
神聖ローマ帝国の宮廷画家として仕え、多くの肖像画をはじめ宮廷の装飾や衣装のデザインも手がけました。
とくに彼が描いた肖像画は、花や野菜、果物、動物などを組み合わせ、それを人物の顔に模して描く〈寄せ絵〉という技法により制作されました。
〈寄せ絵〉とは、ある物を集めて一つの形とした絵のことで、近くで見ると多くの物を寄せ集めて見えますが、少し離れて見ると別の物を構成した絵に見えるというものです。
この奇抜な発想により生み出された作品は、れっきとした人物画でありながら、その構成要素として描かれた無数の植物や果物といったものがあまりにもリアルなことから静物画としても評価することができるという、なんともあやしい魅力につつまれたアートです。
そんな彼の作品は、その後、世界的に有名な画家たちに多大な影響を与えました。

今回、2022(令和4)年最後のにじいろワークショップは、そんな「アルチンボルド」と彼の作品へのオマージュ(敬意を表して)ということで、彼の作品を手本に実際の野菜や果物を素材にした肖像画の制作を行いました。そこで掲げたスローガンは“「アルチンボルド」に挑戦!”です。
はたして子どもたちは、彼の作品領域に到達するほどの肖像画を生み出せたのでしょうか。

NHKプロモーションHPより

素材は、毎日の昼食で使われる豊富な種類の食材を活かして

今回のワークショップは、まずその素材集めからはじまりました。
実際の野菜や果物を素材にするということで、毎日子どもたちが食べる昼食用の食材を活用することにしました。
もちろん、食材そのままではなく調理前に切り落とされる食用部分以外の皮や葉などです。
当園の栄養士と調理員がそのためにおよそ10日前から、使用可能なものを厳選し、丁寧に種類ごとに分けてストックしてくれました。
それら数十種類におよぶ素材が、いくつものカゴに詰められて、ホールの机上にずらっと一列に並んだ光景は圧巻です。
子どもたちは見ただけで驚きの声を上げていましたが、私たちおとなもその光景には感嘆するほどでした。
通常は処分される部位ですが、その鮮やかな切り口や自然のもつ色合いの美しさはまさに一見の価値あり、です。

食することのできない部位とはいえ、こうして用意された食材、しかも子どもたち自身がお昼に食べている実際の食材を直接見たり、触れたりする機会はなかなかないので、今回は特別にワークショップに導入する前に当園の関塚郁美栄養士から子どもたちに食物のお話をしていただきました。

早速、関塚栄養士はカゴのなかの部位をひとつつまみ上げ、
「これはなんの皮かわかるかな?」と質問しました。
子どもたちは即座に答えます。
「りんご!」
「そうだね、じゃ、これは?」
「にんじん!」
と子どもたちも家で見慣れているのでしょうか、意外に正解していきます。
でも、なかにはまったく原型がわからない食材もあり、子どもたちはその答えを聞いてびっくりすることも。
そうしたやり取りのなかで、これら全部が子どもたちのお昼に使われている食材だということを知ってさらに驚いていました。
自分たちの昼食には、これほどまでの豊富な種類の食材が使われていること。
それを毎日毎日給食室で栄養バランスや個々の体質などを考慮し、子どもたちひとりひとりに喜んでもらえるよう工夫を凝らして調理していること。
そうしたことをじかに知ることは、とても大切なことです。
年中クラス、年長クラス共に子どもたちは関塚栄養士の食物に関するお話に熱心に耳を傾けていました。

栄養士のお話が終わると、いよいよワークショップの実践開始です。

髪はリンゴの皮、鼻は長ネギ、目はたまねぎの輪切り・・・って、どんな顔!?

関塚栄養士のお話を受けて、先生もカゴのなかの素材をつまみ上げ、それを手のなかでまるめたり、伸ばしたり、ぶらぶらさせるなどしていつものように子どもたちを笑わせながらワークショップへ誘っていきました。
そして年中クラス、年長クラス共に子どもたちの気持ちが自然にワークショップモードに移ったタイミングを見計らい、全員に「アルチンボルド」の有名な肖像画(絵画)が印刷された見本の用紙を配りました。

最初は子どもたちも何気なくその肖像画を眺めていましたが、先生が
「よ~く見てごらん、なにか変でしょ、変じゃない?」と聞きました。
すると、数人の子どもたちがそれに気づいたようで
「なんだこれ、顔に野菜の絵が描いてある!」と騒ぎだしました。
どうやら、みんながそれに気づいたようです。
「そうだね、この絵の顔は野菜や果物でできてるよね」
先生はそう応えると、今度は一冊の画集を手に取りました。
それは今回のテーマに掲げた「アルチンボルド」の画集です。
そして、画集にある「アルチンボルド」自身の肖像画を見せながら、簡単に彼のことについて話しました。
子どもたちは彼の足跡などおかまいなしに、そこに描かれた彼自身の古めかしい人物の絵を見て、
「なんだ、このおじさん!」と一笑に付しました。
先生は次に、手元に配った有名な肖像画とは違う、もっと別な物を寄せ集めて構成された作品(肖像画)を見せました。
すると、おとなではちょっと眉をひそめてしまいそうな物の〈寄せ絵〉でしたが、なんとそれを見た子どもたちは大声で笑い出しました。
「なんだこりゃ、へんなの~あはははは」
子どもの持つ笑いの尺度は、まったくおとなには理解できないということを痛感します。

先生はひと通り今回のテーマについて説明し終えると、用意しておいた大きな色画用紙を1枚、子どもたちの前に敷き、机上に並んだ素材の入ったカゴの中を物色して、いくつかの野菜の切れ端を手に取り、それを色画用紙の上に置きました。
先生はそれをベースにして、次々と素材になる野菜や果物の切り捨てられた部位をカゴから取り出し、どんどん色画用紙の上に置いていきました。
リンゴの皮はもじゃもじゃ頭の髪の毛に、たまねぎの輪切れがまんまるの目に、長ねぎの切れはしは束ねて大きな鼻に・・・とみるみるうちにひとの顔に見えてきました。
子どもたちはそれをのぞき見ながら、「すごい!顔になったぞ」と大喜びです。

先生がお手本を示すやいなや、これもいつものことながら子どもたちはすぐさま自分もつくりたくてうずうずしはじめました。
「ひとり1枚、色画用紙を選んで、準備が整ったらはじめていいよ」の号令と共に、一斉に子どもたちは創作をはじめました。

はじめは素材選びです。
お目当ての素材が入っているカゴを探し、どんな色やかたちにするかで迷います。
その子どもたちのまなざしは、食品売り場で買い物に迷うお母さんのように真剣そのもの(笑)。
同じ野菜から切り落とされた部位であっても、一つとして同じ色やかたちのものはありません。
だから、それを選びだすのは個人個人の思いや趣味、感性といったもの以外にはないのです。
そしてその素材を画用紙に置く位置も、つくり上げるかたちも、盛りつける量もすべてが個人の表現であって、ほかの誰のものでもないのです。

今回のワークショップは、年中クラスと年長クラスの差があまりないように思えました。
なぜなら、すべてのことが個人に委ねられた行為そのものだからです。
そこには作品の出来栄えについての優劣はおろか、正解、不正解もないですし、遅い早いも、大小の扱いも色合いも関係ありません。
また今回ほど全員が時間を過ぎるまで手を動かし、頭を悩ませて作品づくりに没頭したワークショップはなかったかもしれません。
素材の交換は何度でも行えますし、それを定めた位置に置いても、眺めるたびに位置を変え、重ねたり盛りつけたり、取り除いたり・・・その繰り返しの連続で、誰ひとり「完成しました!」の声が聞けませんでした。
なかには1枚の画用紙では足りずに、もう1枚足して胴体部分を作成する子どももいました。
それでも、それについての良し悪しはありませんし、もちろん完成と言い切れる状態には至りませんでした。

こうしてみると、終わりのないワークショップというのも、子どもたちの体験としては有意義なことだったのではないかと思います。

箱庭療法的な要素もあり、ある意味癒しの効果が含まれている

ワークショップが終わり、子どもたちの居ないホールには個性あふれるユニークな肖像画が残されました。
今回ばかりはそのまま保存するわけにもいかず、かといってそれをすぐさま解体して処分することもできず、しばし先生も保育士もそれらを黙って眺めるばかり。
しかし、そのどれもがとびっきりの笑顔ばかりの肖像画であることに気づくと、そのひとつひとつの作品が大声で笑いあっているように見えてきました。
すると、静かなはずのホールがとてもにぎやかな空間に感じられ、不思議と温かな気持ちになりました。
はじめに掲げた〝「アルチンボルド」への挑戦!〟というスローガンは、年中クラス、年長クラス共に、この瞬間、みごとに達成されたように思えました。
はるか彼方で「アルチンボルド」も、子どもたちの積極果敢な挑戦に拍手を送っていることでしょう。

では、終わりに「にじいろワークショップ」を企画・指導する松澤先生からのコメントを紹介します。
「今回の素材となった野菜や果物といった、自然物のなかいにある美しい色合いとかたちの面白さに気づくこと、
それから素材から直接受ける感触を得ること、これが大きな目的です。
また幼児期に大切な食育という観点から、栄養士の関塚先生とのコラボができたことも良かったです。
いつもあたりまえのように食べているけれど、これほどたくさんの食材が使われているということは知らなか
ったでしょうし、同時に食べ物の尊さやありがたさも知ることができたと思います。
それに、今回の素材を集めてくれた給食室の調理員みなさんの手によって、こうした食材を切ったり、煮たり、焼いたりといろいろ工夫してつくってくれているのだとわかることは大事です。
だって、食べることは生きていく上で最も必要なことでしょ」と先生は笑った。

さらに今回の創作活動について、
「こういう創作って、ガーデニングに近い行為ですね、ガーデニングは癒しの効果があるといいますから。
なので、もっといえば〈箱庭療法*〉にも似ていると思うんです。
箱(画用紙)の中に、さまざまな道具(食材)を自分で選び、それを自分で置く、つまり配置をきめていく、こうした行為などみれば、まさにそのものですよね。
平面に描くのとは違って、物体を置くのだから置く物や配置によってひとつと同じものができないでしょ。
それが個性だし、感性だし、考え方や時々の気持ちを表現することになる。
つまり、あらゆる面からみて、セラピー的な癒しを含んでいます。
とくに言語でうまく自分を表現できない幼児たちには、とても有効な創作活動だと思います」
先生はこう述べて、今年最後のワークショップを締めました。

今年一年、本当にありがとうございました。
来年もまた、どうぞよろしくお願いいたします。

箱庭療法
心理療法の一種で、砂の入った箱の中に玩具や物を自由に置いていくことで、言葉を必要とせずにその者の気持ちを解放し、こころのなかに眠るものを表現させることで心的治療を施すこと。

ドキュメンテーション

アルチンボルドへのオマージュ
一作年に行ったアルチンボルドへのオマージュを再び行います。
私たちは食している食材をよく見てみると、面白い形や、美しい色、植物自身が身を護るための工夫がされています。実際の野菜などと、アルチンボルドの絵を眺めながら、自然物のなかにある美しさに出会い、その気づきから楽しい表現に仕上げていきます。

written by OSAMU TAKAYANAGI

あそびと環境0・1・2歳(1月号)にあおぞら保育園の様子が掲載されました

2022年12月6日 火曜日投稿

学研の保育雑誌「あそびと環境0・1・2歳」の2023年1月号での、「子どもに働きかける環境作り」という特集記事の中で、あおぞら保育園の子どもたちが遊んでいる様子が掲載されています。

☆あおぞら保育園のにじいろワークショップで、毎月ファシリテーターとしてお越しいただいている松澤綾子先生が記事の監修を行っています。

その他、雑誌等に掲載された内容はメディアへの掲載(法人HP)をご覧下さい。