アバター画像

HP担当陽光福祉会 の紹介

ホームページの管理者です。

歳末たすけあい運動募金(12/1~27)

注目

2024年12月1日 日曜日投稿

笑顔があふれる地域ヘ・・・

歳末たすけあい運動募金

令和6年12月1日~27日ご協力をお願いいたします!
今年も12月より歳末たすけあい運動が始まります。この募金は、「皆で明るいお正月を」という趣旨のもと、「一品持ち寄り運動」として始まり、昭和34年から共同募金運動の一環として展開されています。近年は、小地域ネットワーク活動を行っている団体への活動助成金等、地域福祉活動への募金の活用が進められています。

お問合せ

社会福祉法人羽村市社会福祉協議会
羽村市栄町2-18-1
TEL 042-554-0304

【にじいろWS 2024-11月】「お花紙のインスタレーション」カラフルな世界をつくろう

2024年11月23日 土曜日投稿

ちぎる・裂(さ)く・破(やぶ)る、それが今回の課題です

「芸術の秋」という常套句は、いつ頃から誰が言い始めたのだろう。
そんなどうでもいいことを、毎年秋が深まる季節になると考えるのですが、今年に限っていえば、11月半ばをすぎても夏のような天候が続き、台風が三つも四つも発生する始末。
こうなると果たして秋はいつ来るのやら、などと思いつつ今更ながら「芸術の秋」について調べてみました。
これが有力説だというのは、1918(大正7)年に発行された某雑誌の記事に「美術の秋」という言葉が登場したことがはじまりだとか。
その後、〝美術〟が広義でいうところの〝芸術〟という言葉に変化したのでしょう。
いずれにしても、およそ百年前の時代から、秋にはさまざまな展覧会が開かれていたということです。
さらにその理由を検索すると、〈夏は暑すぎて芸術などに没頭できないが、秋になり涼しくなってくると集中力が増し、気持ちも自然と芸術に向く〉というので「芸術の秋」が一般的に定着したらしいのですが、いまの状況からでは素直にうなずけませんね。
そういえば、今年は「芸術の秋」という言葉をあまり見聞きしないなぁ、と思ったりして。

そんな季節のなかですが、当園のにじいろワークショップは決して惑うことなく、季節に応じた、季節を感じる活動を、それにふさわしい環境のなかで行っています。
さて、今回は室内でのインスタレーションです。
秋から冬にかけて紅葉はもちろんですが、さまざまな季節特有の草花が放つ色とりどりの美しさにも魅了されます。
そこで、お花紙(おはながみ)という独特の素材を主体に、そうした草花をイメージしたカラフルなオブジェを創作します。
また、その創作過程において、〈ちぎる・裂(さ)く・破(やぶ)る〉といった、言葉で捉えると一見過剰な行為を想像してしまうようなことにも挑戦します。もちろん、想像する行為とは無縁ですが。
にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生は、
「お花紙は、美しく、手触りもよく、幼児が扱う素材としてはすばらしいものです。そこで、この素材を最適に活かせる方法をこの2~3年探ってきて、例えば引っ張ったり、水に浸したりとか・・・。
そのなかで、〈ちぎる・裂く・破る〉という行為に至り、この一年余り0歳児から2歳児を対象に他所で試行錯誤を繰り返してきたのですが、ようやく具体的なワークショップとしての展開を見い出せたので、今回はその試みを当園で実践してみようと思います」
そんなふうに、このテーマへの考えや意欲を簡単に話してくれました。

では早速、この季節の彩りや風のゆらぎ、そして自然の匂いを体感しながらのワークショップ、はじまりです。

お花紙の破片を集めて、舞い降りる花びらのシャワーを浴びよう

今回使用するお花紙は、あえて説明するまでもないと思いますが、その名の示す通り、紙で花を表現(つくる)ときに用いる定番の素材です。
一般的に見られるのは、運動会や発表会、入学式・卒業式といった学校行事のタイトルボードなどへの飾り付けで、幼稚園・保育園から小・中学校などには欠かせないアイテムといえます。
先にも触れましたが、薄くて柔らかな素材でできているので、幼児の手にもやさしい感触が残ります。
重ねて、丸めて、折りたたんで、と手のなかで自由に変化しますし、色数も豊富ですから、まさにさまざまな草花を表現するには最適な素材です。
これを主として使用しますが、いつものように、にじいろワークショップ独自の展開で進めていきます。

内容的には、今回もまた年中・年長クラス共に同じプログラムです。
もちろん年齢や経験の差が作品になんらかのかたちで表れてはくるでしょうが、結果に優劣を求めるものではないですし、あくまでも一人ひとり、またはその集団で何を感じ、何を得たか、または何を失ったかを体験として残してくれたらそれで十分です。

年中・年長クラス共に、先生はすぐさまお花紙についてのお話しをはじめました。
そして先生は1枚のお花紙を自身の顔に押し当て、そのままゆっくりと上を向きました。
それからそっとそのお花紙から手を離すと、それに向けて自分の息を吹きかけて宙に飛ばしてみせました。
子どもたちはその瞬間、ただ黙って見つめていました。誰もがそのまま落ちてくることを想定したのでしょう。
ところが、先生の吹きかけた息の勢いに乗って、落ちるどころかさらに上へと昇って行ったのです。
子どもたちは予想に反したお花紙の動きにびっくりです。
さらに先生はそれが落ちかけると、またその下から息を吹きかけて宙に飛ばしました。
「また、あがっていったぞ」と、子どもたちはますますびっくりです。

そうなると当然のごとく、子どもたちは早くそれを自分自身でやりたくてそわそわ落ち着きません。
先生は、そんな子どもたちの気持ちなどお見通し、とばかりに
「さあ、あそこ(お花紙が並ぶ場所)から好きな色を1枚だけ持って来て、みんなも同じようにやってみよう」
と促しました。
子どもたちは大喜びで好きな色のお花紙を選ぶと、ホールのあちらこちらで先生と同じようにお花紙を顔にかぶせて、自分の息で宙に飛ばしはじめました。

その一連の動作を繰り返し、どの子も上手に宙へ浮かせることができました。
その浮いたお花紙がひらひらとあちらこちらに流れて動くと、それを追いかけてホールの隅から隅まで走り回る子どもたち。
なかには、自分の顔にかぶせたその感触が気持ちよかったのか、じっとそのまま顔の上に乗せている子まで。
そのうちひとりの男の子が床に落ちたお花紙に向かって息を吹きかけたら、床を滑るように動いていくさまにハマったようで、なんと床面のお花紙にずっと息を吹きかけながらそれを追って自分も床の上を這いまわりはじめました。
とうとう、周りの子どもたちもそれにならって、みんなで床を這いながらお花紙に息を吹きかけました。

ひらひらと宙に舞うほど薄くて、顔にかぶせると気持ちいいほどやわらかで・・・どの子も、お花紙の素材を自らの皮膚感覚としてとらえることができました。

次に先生は、一旦子どもたちを集めて、1枚のお花紙を両手で持つと
「これからこのお花紙を手で破ります!」
そう言ってお花紙を破いて見せました。
それも何度も何度も細い帯状に、しかも造作なく破っていきました。

子どもたちは、またしても驚きです。
日ごろ、保育園では手で無造作に破るという行為を奨励していませんし、おそらく家庭内でもそのような行為を良しとはしないでしょう。
そんな子どもたちの目の前で、1枚のお花紙があっという間にいく枚かの細長い帯状の切れ端に変わりました。
先生の号令で、今度は子どもたちがそれを行うことになりました。
いままで吹いて飛ばしていたお花紙を、今度は破ることになったのです。
少し複雑な気持ちもあってか、周囲のお友だちの様子をうかがいながら、おそるおそる破きました。
しかしそれをはじめると、どの子も意外に楽しい気持ちが勝ったようで、どんどん破り出しました。

そこで、ひとつだけ先生は子どもたちに紙の破り方について教えました。
それは、紙には破れやすい方向と破れにくい方向があるということ。ご存知のことと思いますが、紙の製造過程でタテ目(=破れやすい)とヨコ目(=破れにくい)ができ、それによってそうしたことが起こります。
子どもたちを見ていると、偶然タテ目からたやすく破れても、ヨコ目から思うように破れないので「?」という表情をするときがありました。ということで、急きょ、先生がそんな話しをしたのです。
理屈はともかく、いつの日か、遠い昔に聞いたそんな話しを想い出してくれたらそれでいいかな。

ある程度破り終えると、先生はそれを束ねて、今度は一気に自分の頭上に宙高く放り投げました。
宙に飛び散ったお花紙の破片は、ゆっくり、ふわふわと、花びらのように舞いながら先生に降り注いで落ちていきました。

子どもたちは、またしてもそれを見た瞬間きゃっきゃと甲高い声を上げて大さわぎ。我先にと、どの子も自分の破いた破片を集めて、見様見真似で自分の頭上へと放り投げました。
同じように、それが舞いながら自分に降り注いで落ちていくと、誰もが歓喜の声を張り上げました。
そこで先生は、さらにお花紙を足して、もっとたくさん破いて、それを集めてもっと大きな花ふぶきのようにしよう、と提案しました。
子どもたちは一斉に、「今度は別の色のお花紙にしよう」、「もっと破いていいの?やったー!」などとお花紙の並ぶ場所に飛んでいきました。

先生は子どもたちの要望に応えて、何度もお花紙を追加していきました。
その都度子どもたちは大さわぎをしながら、お花紙を破き、次第にやさしく手で握ったり、丸めたり、そのうちに好きな形にちぎったり、それを裂いたりと、自由にお花紙を扱うようになりました。
今日は、いつものようにハサミなどという切る道具の力を借りることなく、両の手の指先1本1本の動かし方と、手のひらの握る力加減だけでこんなにもいろいろなことができるんだ、ということを覚えました。
床一面がいつのまにか子どもたちの破いた、ちぎった、裂いたたくさんのお花紙で埋まっていきました。
それをみんなでいくつかの大きな容器の中に集めて、みんなで一斉に宙高くに放り投げました。
また、床に子どもたちがあおむけに寝そべって、その上へ先生や保育士たちがすべての破片を放りました。
色とりどりの美しいお花紙の破片は、夏の日に浴びたシャワーのように子どもたちの頭上から降り注いできらきらと舞いながら降りていきました。

養生テープに飾り付けたら、最後はみんなで〝良いお家〟をつくろう

ここまでで、年中・年長クラス共に、お花紙という素材を知り、今まで保育園では敢えて行わなかったお花紙への〈破る〉ことから〈ちぎる〉や〈裂く〉といった行為を体験しました。
これだけであれば、先生がこの一年余り携わってきた0~2歳児の体験と変わりません。
そこで、先生はここまでの集大成として、お花紙のすべての破片を使って、ホールいっぱいのインスタレーションを展開させることを考えました。
それは、お花紙のごくごく一般的な使い方ではない、子どもたちが独自に手を加えた花々をホールの空間に咲かせて、新しい、どこにもない、不思議でカラフルな世界を構築しようという試みです。

まずは養生テープをいく本も壁から壁へとホールに張り巡らせて、そこへ子どもたちが先に破き、ちぎり、裂き、丸めたお花紙の破片を、それぞれ好きなところに、思いつくままに貼り付けることからはじめました。

ひとつひとつの破片は決して草花の形を模してはいませんが、それぞれが個性豊かに鮮やかな美しさを放っています。そんな破片が集まれば、もっと素敵に輝くはずです。
四方八方に張り巡らせた養生テープにたくさんの破片が付いて、その一本一本がカラフルな枝木に見えはじめたころ、先生と保育士たちで壁から離して、年中クラスはホールの天井に設置された金具にその一本一本をひとつに結びつけ、それぞれの養生テープの端を床面に伸ばして貼り付けました。
年長クラスのそれは、壁の一部にやはりひとつにまとめて改めて貼り付けると、その一本一本をまっすぐ床面に伸ばして貼り付けました。それから壁にも破片を貼り付けて模様を描きました。
どちらも三角柱のように、一点から裾野に広がるように養生テープが伸びて、大きな傘のような、クリスマスツリーのような、そんな形をつくりました。
その一本一本には子どもたちがお花紙でつくったオリジナルの、とてもこの世のものとは思えないようなカラフルな草花が咲き乱れていました。

それから子どもたちは飾りつけの少ない部分に付け足したり、新たに薄い布地を数枚その養生テープに貼り合わせたりして見栄えよく整えました。
すべての飾り付けが終わると、子どもたちはその下に入り込み、寝転んだり、談笑したり、自由に楽しんで、くつろぎはじめました。

そうそう、年中クラスの子どもたちにこんな一幕がありました。
クラスの中のひとりが、「ここって、いいおうち(良い、お家)だなぁ~」とつぶやきました。
するとその言葉に誰かが呼応して、「いい、おうち!」と言うと、いつのまにかほかの子どもたちもひとり、またひとりと「いい、おうち!」と連呼しはじめ、気づくと全員で、まるでそんな歌でもあるかのように節をつけて「いい、おうち!いい、おうち!いい、おうち!~♪」と大合唱になりました。
自然に湧きあがったこととはいえ、この感性のすばらしさ、またはクラス全員の協調性の高さに感動を覚えました。
最後は年中・年長クラス共に、そんな〝良いお家〟のなかで、みんな揃って写真に納まりました。

その後、また保育士らで、年中・年長クラスのつくった養生テープの飾り一本一本をエントランスにあるブックコーナに移して展示しました。
それを知った子どもたちは、好きな本を片手にその飾り付けの下に座り込んで読書を楽しんでいたようです。

子どもの目線で丁寧に考えることで、もっと幅のあるあそびにつながる

にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生は、ご承知の通り多岐にわたる活動を行っています。
特に冒頭でも触れたように、この一年余り0~2歳児を対象に〈ちぎる・裂(さ)く・破(やぶ)る〉という行為に焦点を当ててさまざまな考察を行ってきました。
改めてそのあたりのことを聞きました。
「保育の現場では、裂いたり破いたりすることを推奨する場面はけっして多くはないと思います。それはただ言葉から受けるイメージの問題かもしれませんが。
ただ、実際アートの制作現場からいえば、現実的にもっと激しく破壊するくらいのエネルギーを持って作品づくりを行うことがあります。むしろそうして殻を破っていかないと次に進まないということもありますからね。
そう考えたとき、その原初的な行為として、〈ちぎる・裂く・破る〉ということがむしろ必然的な行為のように思えたのです。
そこでまず0歳児で、次に1歳、2歳児で実際にやってみると、面白い結果を得ることができました」

先生はそんなふうに話しはじめると、続けて
「0歳児は破いたお花紙であそぶことよりも、破く行為そのものに興味があって、素材にかかわる楽しさが増したようでした。1歳児は破く行為だけではなく、そのものの感触やイメージを一人一人が楽しむ様子から表現するおもしろさが伝わってきましたし、2歳児では素材にふれて、破いて、集めて、丸めて、とかかわり方がどんどん変化していきました」
こうしたいくつかの実践体験をもとに、
「破いた小さな破片は、子どもたちがときおり拾い上げる紙くずや小石、葉っぱなどに通じているようにも感じます。〈ちぎる・裂く・破る〉行為を、子どもの目線で丁寧に考えると、もっともっと幅のあるあそびにつながっていくんじゃないかと思います」
そう話し終えて、ワークショップを笑顔で締めました。

今回のワークショップは、こうした背景をベースに展開したものだということがよくわかります。ただ、これは先生にとっての通過点であって、決して到達点ではないということもわかりました。そして、今回の結果も踏まえて、これからのワークショップがさらに楽しみになったことも事実です。

なお、今回の記事は、株式会社Gakken発行の保育情報誌『あそびと環境012歳』に掲載された松澤先生の担当記事から一部参考にさせていただきました。
先生は、2019年から年に2回~4回、上記雑誌に自らの指導・実践レポートを掲載しています。
★ご興味のある方は、ぜひ下記ホームページでどうぞ。
保育士・幼稚園教諭のための学研 保育CAN

ドキュメンテーション

今回の空間あそびはお花紙を使って華やかで明るい空間をつくってみます。0/1/2歳の造形あそびの実践をするにあたり、「裂く。ちぎる」といった行為に着目したことが起点になっています。
お花紙の薄く軽やかで鮮やかな独特な感触と見た目は、とても魅力的なものです。
多くは「お花」になって楽しませてくれる存在ですが、もっとこの素材そのものを楽しめたらと何度と挑戦してきた素材です。ふと閃いて今年は付き合い方がイメージできた年でした。
ちぎる、裂くという行為は少々乱暴に思われます。しかしながら一方で、想像をするときには必然の行為でもあると気づきます。ちぎる、破る、裂く、切る、切り離す、撚る、紙から切り離された紙の一片が軽やかに舞い、集まって花咲くような空気を感じ、空間を感じてみます。

written by OSAMU TAKAYANAGI

【こども家庭庁】SIDS対策強化月間

2024年11月10日 日曜日投稿

11 月は「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の対策強化月間です

~睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう~

乳幼児突然死症候群(SIDS)は12 月以降の冬期に発症しやすい傾向があることから、こども家庭庁は、毎年11 月を乳幼児突然死症候群(SIDS)の対策強化月間と定め、SIDSに対する社会的関心を喚起するため、発症率を低くするポイントなどの重点的な普及啓発活動を実施しています。(※対策強化月間は平成11 年度から実施しています。)
今年度の対策強化月間では、厚生労働省をはじめ、関係行政機関、関係団体などにおいて、さまざまな普及啓発活動を行うなど、SIDS の予防に関する取組等の推進を図ります。

●こども家庭庁報道発表
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/6a70c142-45ea-411f-bc39-d5df092dcb9c/f19a2920/20241023_press_6a70c142-45ea-411f-bc39-d5df092dcb9c_02.pdf
●チラシ
<https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2fdd400-7af4-456b-b278-cd4ccd287229/b4028b54/20241015_policies_boshihoken_kenkou_sids_21.pdf>

【にじいろWS 2024-10月】線路をつないで、電車を走らせよう

2024年11月3日 日曜日投稿

イメージは青梅線?さて、どんな線路にどんな電車が走るのか~出発進行!

これまでに、地元羽村市を意識したテーマのワークショップをいくつか行ってきました。
たとえば園内から望む景色の彩りをモチーフに、室内ホールの空間いっぱいにインスタレーションとして表現したり、近隣の公園から拾い集めた落ち葉や多摩川沿いの河原の石を素材として創作したことなど。

【にじいろWS 2023-10月】山をえがこう 山をつくろう

【にじいろWS 2023-11月】落ち葉が揺れるインスタレーション

にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生はそのことについて、
「いま自分が置かれている環境のなかで感じたこと、体験したことが、モノづくりの発想や原動力の源になりますからね」
と話してくれました。また、さらにこう付け加えました。
「とくにこの羽村市周辺は豊かな自然にあふれていますから、子どもたちにはそのすばらしさに目を向けて、地元のよさを実感して欲しいと思います」
そういう先生ですが、自然環境とは別に、地元ならではの、もうひとつ気になるものがあると言います。
それは羽村市を貫く一本の鉄道です。
そう、東京都立川市の立川駅から西多摩郡奥多摩町の奥多摩駅を結ぶJR東日本(東日本旅客鉄道)の青梅線です。
過去のワークショップを振り返ると、子どもたちの作品にこれまで意図せずいく度も登場していました。
インスタレーションという表現技法を採り入れてつくり出した架空の街並みや大自然の世界などには、必ずと言うほど一本の鉄道(線路)が描かれ、その中央には「羽村駅」と書かれた駅舎がありました。
特定の誰かが、ということではなく、どの世代の子も同じように、ごく当たり前にそこに在るものとして描いていました。もちろん、それが青梅線であることを子どもたちは認識しています。

ここで余談ですが、青梅線は1894(明治27)年に立川駅―青梅駅間に開業された歴史ある路線で、その当時から地元羽村駅は、拝島・福生・青梅駅と並び誕生しています。
おととし2022年で日本の鉄道開業から150年を迎えたことを考えれば、今年130年を迎えた青梅線もほぼ日本の鉄道史に匹敵します。
その頃はいま以上に雄大な自然のなかを、重々しい機関車が黙々とひとや物を運んでいたことでしょう。

その青梅線あるいは羽村駅は園からも至近距離にあり、日常生活においても地元を象徴する存在として、子どもたちにとってはそこに在ることが自然なのかもしれません。
そんな実情を踏まえ、先生はいつかこの青梅線をモチーフしたいと考えていました。
そこで今回、この青梅線をイメージした「線路をつないで、電車を走らせよう」というテーマを打ち出し、室内ホールでのインスタレーションを行うことにしました。
それに応じて、線路を走る電車も子どもたちひとり一人の手によるオリジナルの電車も創作します。
さて、どんな線路ができるのか、どんな電車が走るのか、準備ができたら出発進行!

直線・曲線の紙片(パーツ)を線路に、自然素材の木片を電車にします

まずは先生と保育士で、ワークショップの素材づくりから。
今回の主役でもある線路は、四つ切サイズの画用紙から幅7cmほどの直線や曲線の紙片(パーツ)をたくさん切り出してつくりました。
1枚1枚の紙片の長さは短いものですが、それをどんどんつなげていくことが今回のテーマですから、先生と保育士はその紙片をたくさん切り出しました。
最初はいつものホールの床面いっぱいにつなげられるほどの枚数を想定しましたが、そのホールの床面から飛び越えてしまったときのことを考えて(そんなふうに広がっていったらいいなぁという思いも込めて)、想定以上に大量の紙片を用意しました。

線路に模したこの1枚1枚の紙片ですが、そこには敢えてレールも枕木も描きませんでした。それは、子どもたちそれぞれの頭のなかでレールも枕木も自由に好きなように思い描いて欲しいからです。
そこに見えない分、レールも枕木も子どもたちの数だけ存在するって、なんだかワクワクしませんか。
ただ、線路を模した紙片の色は、多少レールを意識してグレーにしました。
かといって、あまり単色なのもおもしろくないので、グレーのなかにところどころアクセントとしていくつかの色が混ざるよう色画用紙からも同じように幅7cmほどの直線や曲線を切り出して加えました。

次に、これも今回のもうひとつの主役である電車づくりの準備です。
今回電車とする素材は、縦約4cm×横役8.5cm×幅約1cmの、自然の大木から切り出した木片です。
ちょうど子どもたちの手のひらに包み込めるサイズで、自由にらくらく操ることができる重さです。
もともと大きな木材でしたが、外部に依頼してこのサイズに切り出してもらったそうです。
それを当園の田中園長が、子どもたちが安全に活用できるようにと自ら率先してひとつひとつ丁寧にヤスリをかけて仕上げました。
これはいままでもワークショップの素材として使用してきましたが、いずれも補助的なものでした。
先生はこの木片についても、いつかメインの素材としてワークショップに採り入れたいと考えていました。

先生は木片のひとつを手に取り、
「自然素材としての木は魅力的です。ひとが創り出した製品と違って化学物質など含まれていませんし、どんな子どもでも安全に操ることができて、自らいろいろな想像をそこに投影して遊べます。だからでしょうか、いま子どもの玩具ばかりか日常品なども天然の木の製品が注目されていますよね」
と、そんな説明をしてくれました。

ひと通り準備がすんだところに、年中クラスの子どもたちが集まってきました。
先生はまず線路に模した幅7cmほどの直線や曲線に切り出した紙片のいくつかをホールの床面に並べて見せました。
1枚1枚の紙片が線路のパーツであることを説明しながら、それらを思いつくままつなげて線路をつくりました。
ひとつひとつの紙片は短いものですが、つなげていくと長い線路になります。
それも直線や曲線をつなぎ合わせると、まっすぐ延びたと思ったら急カーブになったり、S字を描いたりと、紙片のかたちやつなげ方を変えていくだけで、まったく別の線路が生まれてきます。
目の前でどんどん変化していく紙片の線路に、子どもたちはもうじっと見ているだけではおさまらないといったようすです。

線路を敷いたら、最後は自分だけのオリジナル電車とすてきな街並みをつくりましょう

先生は子どもたちの〈早くやりたい!〉の思いに応え、
「それじゃ、みんなにもやってもらいますね。どんなふうにつなげても、どこにそれを置いていくかも自分で決めていいですよ、ただし、この紙片のつなぎ目は必ずのり付けして動かないようにしてください」
先生がそう指示すると、子どもたちはたたくさんの紙片のなかから自分の好きなものを数枚選び、それぞれの思う場所へ移動してすぐに線路づくりをはじめました。

子どもたちはどんどん貼り合わせてつなげていきました。
ひとりでつなげていく子もいれば、最初からお友だちと一緒につなげる子もいます。
しばらくして先生は
「どこまでもつなげていっていいけど、線路だから最後は全部つながるようにしてね」
と、目指す完成形への指示をあらためて出しました。

ある程度線路がホールに広がったところで、先生は子どもたちにいったんその作業を止めるように言い、ホールの端にみんなを集めました。
子どもたち全員でホールに広がる線路を眺めました。そうして眺めると、いまどんなふうに線路がつながっているのか、どこに線路が密集しているのか、いないのか、または途中で途切れている線路はないかなど全体が見えてきます。
先生は、それじゃあ、みんなでここにある線路をなぞるように実際に走ってみよう!と言い、子どもたち自らつくった線路にそって走ってみました。
まっすぐな線路もあれば、くねくねと曲がりくねった線路や途中で切れた線路もあって、どんな線路が走りやすいのか、走りづらいのかということも実感としてわかりました。
そこで、少し不都合な線路はここで修正を加えることにしました。

ここまでは年中・年長クラスとも同じ作業を行いました。
ただし年長クラスのこどもたちは、年中クラスがつくった線路をそのままに、そこへさらに線路をつなげて増やすことにしました。なので、ホールの床面にはいっぱいに線路が広がっていき、それでは足らずに子どもたちは廊下にまで線路を延ばしていきました。または平らな床面を離れ、園庭へ開く扉への上がり口にまで~その段差を気にすることなく~線路をつなげていきました。
年長の子どもたちによって、平面だった線路も複雑に絡み合って、若干の起伏が現れるようになりました。

線路を敷き終えたら、次に先生は電車づくりについて、年中・年長クラス共に同様の指導を行いました。
まず先生は一個の木片の片側に電車の色や窓、ドアなどをサインペンで描き入れました。それからその裏側にも、車両の模様や乗車している人の顔などを描き入れました。
木肌しかなかった木片の表面がみるみる電車のボディに変わっていきました。
それを見ていた子どもたちは、すぐさま次にやるべき作業を了解しました。
早速ひとり一人に木片が配られ、あちらこちらで電車づくりがはじまりました。

年中・年長クラス共に電車が仕上がった子どもから、自ら敷いた線路にその手づくり電車を走らせました。
どの子も電車を指先でしっかり握り、ガタガタン、ゴーゴーとうなり声を上げながら大はしゃぎです。
なにしろ真剣な表情で、自ら紙片の線路上を電車と共に走っている姿を見たときはただただびっくりしました。
そんな光景を目の当たりにして先生は
「ITやAIが発達したこの時代、子どもたちはそんな機能を搭載したおもちゃなどいくらでも簡単に手に入るだろうし、実際家庭でもそうしたおもちゃやゲームで遊んでいるはずだけれど・・・こんないたってアナログで、しかもリモコンで動くわけでもなく、自分の手の動かさなければ微動だにしない木片を、これほどまで夢中になって遊ぶとは!?」
と、想像もしていなかったことに驚いたようすでした。

 

どこの街にもいくつもの家やビルが建ち並んでいるように、最後に線路の周辺にすてきな街をつくりました。
今回、それも線路や電車に合わせてとてもシンプルなものにしました。
まずは画用紙を二つに折って、三角屋根の家を模した形に切り取りました。
二つに折ったことで、少しの角度をつけてひろげれば、1枚の画用紙でもしっかり立つことができます。
そこにそれぞれが好きな色や模様を描いて、自分だけの家に仕上げることにしました。
これもやはり数多く切り取って子どもたちに配りました。

年中・年長クラス共に、子どもたちはさらにその家に窓や扉を切り抜いて、思い思いの家をつくりはじめました。
そして、出来上がった子から線路を中心に好きな場所に置きました。
ホールの床いっぱいに敷かれた線路と、その上を走るたくさんの電車、そしてその沿線に並ぶ個性豊かな家々。
見ているうちに、架空の街並みというより、どこか現実に存在する街の景色に見えてきました。
にぎやかな商店街や近くを走り抜ける色とりどりの電車の轟音、それにかぶさるように聞こえてくる子どもたちの明るい笑い声。
年中・年長クラス共に、ワークショップ終わりに全員で自分たちのつくり上げた線路のある風景を鑑賞しました。

 

 

年中・年長クラス共に、自分でつくった家と電車は子どもたちの希望で持ち帰ることにしました。
子どもたちがクラスに戻った後、先生や田中園長、中村主任保育士らがホールの床面に残された線路を見ながら、
「このまま捨てるのも忍びないので、中央に残った一部分をエントランスにあるブックコーナーの床に敷いてみませんか」ということで即決し、早速一部分をそのまま移動させました。
当日お迎えに来た保護者の方々がそれを見て、子どもたちからそのいきさつなどを聞いて感心したり、なかには子どもたちが帰り際にまた遊びはじめたりしていたようです。

アートの世界から子どもたちの遊びまで、鉄道が与えた多大なる影響

松澤先生は、ワークショップの直前にこう話していました。
「初めて試みるテーマに不安も期待もあるのですが、やはり一度は取り上げたいテーマだったので、これを手掛かりにまた新たなテーマのヒントが得られればいいかな、と思います。もっとも子どもたちがこのストレートなテーマにどんな反応を示すのか、それにもよるけれど…。
でも鉄道って夢がありますよね、特に子どもにとってはどこまでも走って行けるような、そんな無限大の夢が」

またしても話しは逸れますが、世界初の蒸気機関車は1804年に英国で試走され、1825年に実用化されたといいます。
これを機に、欧州では鉄道を描いた絵画が数多く生まれ、いまでも高い評価を得た作品が世界中に残されています。それまではまったく存在しなかった鉄道ですから、当然モチーフとしては時代の最先端というわけです。
つまり鉄道の誕生は、アートにも多大なる影響を与えたということです。当然、それは日本画壇でも然り、浮世絵にまで登場してきました。
またアートばかりか文学にもそれは表れます。例えば、夏目漱石の有名な小説『三四郎(1908・明治41年)』の冒頭は、ご存知のように汽車の中の描写からはじまります。

もう少し続けると、昭和の子どもたちは、
♪~運転手は君だ/車掌は僕だ/あとの四人が電車のお客~
と唄いながら「電車ごっこ(文部省唱歌:1932・昭和7年)」という遊びに夢中になったものです。
また、こんな歌もよく唄いました。
♪~線路は続くよ どこまでも/野を越え山越え 谷越えて(中略)/ 楽しい旅の夢 つないでる
一般的に知る『線路はつづくよ、どこまでも(NHKみんなのうた:1962・昭和37年)』ですが、これは実はアメリカ民謡で、原題は「 I’ve Been Working on the Railroad」という黒人労働者による堤防工事についての歌です。
いまはおそらく、「電車ごっこ」などはしない(知らない)でしょうし、『線路はつづくよ、どこまでも』を唄うことなどないのでしょう。
それでも先に記しましたが、子どもたちが木片の電車を手に、夢中で遊ぶ姿は、ある意味「電車ごっこ」に近い姿だったのかもしれません。

 

話しを戻しますが、松澤先生は、先にも述べたように木片についてもこだわりを持っていて、
「一枚の、なんの変哲もない木片ですが、この一枚には想像力を喚起する無限の力が備わっていると思うんです。ただ見るだけで、またそれを手に取って木のぬくもりを感じるだけで、ふいにあれもこれもと新しい想像が芽生えてくるんです。だから最新の、いわば流行のおもちゃと違って、普遍性があり、飽きるということがない。
でも、正直子どもたちの反応はどうかな?と心配もしていたのですが、結果はご覧の通りで、むしろこれほどまでに木片に対して愛着を持って、我を忘れて真剣に遊ぶとは思いもしませんでした。
そう思うと、子どもたちが本来持っている創造力の高さ、逞しさのようなものに圧倒されますし、ほんとうの遊びというものを子どもたち自身は知っているのかもしれませんね。
これには、今回ほんとうに驚きと感動さえ受けました。今回は子どもたちに脱帽です」
そんなふうに笑って、話しを終えました。

ドキュメンテーション

保育園の近くにある青梅線の線路、おそらく子どもたちも慣れ親しんだ景色だと思います。
線路の向こうに見える奥多摩の山々の稜線も冬に向けて美しく見えてきます。
今回は、その景色を感じながら、線路(道)に見立てた紙を繋げ、子どもの書き出す景色を広く展開させていくことに挑戦します。
線路(道)を繋げて、自分の持っている紙を繋げて、四角ではない、俯瞰された町が出来上がったら面白いと思います。

written by OSAMU TAKAYANAGI

【羽村市】愛情はむらまつり(11/16・17)

2024年10月18日 金曜日投稿

ヒノトントンZOOからはむらのおすすめスポットへ

はむら家族プロジェクトの一環でヒノトントンZOOを会場に「愛情はむらまつり」を開催します。
親子で遊びながら新たな羽村の魅力を発見できるイベントやプレゼントを用意します。
ぜひ、お越しください。はむりんにも会えますよ!

日時

11月16日(土曜日)・17日(日曜日)午前9時30分から午後3時30分

https://www.city.hamura.tokyo.jp/0000019026.html

【にじいろWS 2024-09月】ボディペイントまたはフィンガーペイント

2024年9月22日 日曜日投稿

この夏最後は、日常では味わえない、いま、ここでしか体験できないこと

今年の夏は、列島各地で40度を超える暑さに見舞われました。
年々この暑さも厳しさを増し、おとなはもちろんですが、子どもたちも心身共に疲弊することが多くなりました。
テレビ・ラジオ等で〈危険な暑さ〉と報じられれば、不要不急の外出を控えるしかありません。
いつもなら子どもたちのにぎやかな笑い声につつまれる近所の公園でさえ、早朝から夕方までひっそりと静まりかえり、公園内の遊具も微動だにせず、強い日差しにじっと耐えているように見えました。
考えてみれば、コロナからはじまってこの数年、小さな子どもたちが当たり前に体験してきたことができなくなり、あれもこれもと我慢ばかりを強いられてきたように思います。

にじいろワークショップを企画・指導する松澤先生は、こうした現状を、常に子どもたちの目線で捉え、この数年ずっと胸を痛めてきました。
「この夏最後のワークショップは、あまり難しく考えず、子どもたちが無我夢中になって、思いっ切りこころもからだも解放できるものにしましょう。理屈ぬきで純粋に、それでいて日常では味わえない、いま、ここでしか体験できないこと」
先生はそんなことを思いました。
そこで過去の事例をふり返ってみたら、ちょうど昨年も一昨年もこの季節に行っていて、もっとも子どもたちが大はしゃぎをしたテーマがありました。
それが、今回の「ボディペイトまたはフィンガーペイント」です。
昨年は「ボディペイントを起点に、新たな〈アート〉体験を(※2023年7月)」、一昨年は「フィンガーペイント・大きなにじ(※2023年7月)」というテーマで行いました。
いずれも日常でこんな体験はできませんし、ましてやおとなになってからなどもってのほか。
そして、なによりも、このにじいろワークショップでしかできないことでもあります。

年長クラスの子どもたちは二度目の体験ですが、年中クラスの子どもたちは初めての体験です。
とはいえ毎回趣向を凝らす先生のこと、二度目であろうと初めてであろうと、つまるところ今回も、今回限りの「ボディペイントまたはフィンガーペイント」となることは間違いありません。
さて、先生の思うようなこの夏最後のワークショップとなったのでしょうか。

フィンガー(指)からボディ(全身)へ、絵の具まみれの最高の想い出

昨年は、やはり猛暑続きだったために、本来なら屋外で行いたいワークショップでしたが、やむを得ずいつものホールにブルーシートを敷き詰めて実施しました。
一昨年は、2階のバルコニーにサンシェードを張り、その下で行いました。
今回は悩んだ末、やはり屋外で行うことを選択して、一昨年同様2階のバルコニーで行うことにしました。
保育士たちは朝早くからその準備におおわらわです。
まずは強烈な日差しを遮るため、2階バルコニーにサンシェードを張りつける作業を。

次に子どもたちが室内から裸足でサンシェードの下に入り込める動線を確保し、それからワークショップ終了後に暑さで火照ったからだを一気に水で冷やせるようシャワーの準備も整えました。
またこのシャワーは、全身が汚れることを想定して、その汚れを洗い流すことにも使います。
そして仕上げは、サンシェードの影になるバルコニーの床面にブルーシートを貼る作業です。
このブルーシートの上が年中・年長クラス共に子どもたちの作業エリアになります。
これで、ちょっとしたに〈じいろワークショップ屋外教室〉の完成です。

最初にサンシェードの下に集まったのは年中クラスの子どもたち。
その足元のブルーシートの中央には、端から端までロール状のクラフト紙が長い一本の道のように貼り付けてあります。これはあらかじめ先生と保育士が準備したものです。
これが、今回の年中クラスの子どもたちが描く、大きくて長いキャンバスということです。
手づくり感たっぷりの屋外教室や、この長く延びた1枚のクラフト紙を目の当たりにした子どもたちは、少々落ち着かない面持ちで立ちすくんでいましたが、先生はすかさず
「このクラフト紙を挟むように、人数を半分に分けて両側に座りましょう」と声をかけました。
子どもたちは保育士の指示のもと、クラフト紙を挟んで両側に向かい合うように座っていきました。

先生は、先に用意しておいた黄色の絵の具の入った溶き皿を手にして、大きめな筆先をそれにたっぷり浸し、子どもたちの前にあるクラフト紙の端へその黄色の絵の具を一滴垂らしました。一滴といっても、とても大きなかたまりです。
それを、子どもたちの人数分、子どもたちの目の前に一滴ずつ等間隔に垂らしていきました。
もちろんそれはクラフト紙を挟んだ両側の子どもたちの目の前にですから、垂らし終わるとクラフト紙には黄色くてやや大きな点の線がまっすぐに二列出来ました。

子どもたちは目の前に垂らされた黄色い大きな点のかたまりをじっと見ていましたが、これからどうなっていくのかさっぱりわからないままです。
先生はそんな子どもたちと一緒に座り、まずは自分の人差し指を一本掲げると、
「おかあさん指、こうやって1本出してみよう」
そう言って、子どもたちにも人差し指を1本掲げるように促しました。
上手に人差し指を出せない子には、
「あれれ、おかあさん指がいなくなっちゃったかな?それならおにいさん指(中指)でもいいよ」
と言って、先生は両手の二本の指を掲げ、
「はい、それじゃあ、みんなでお指の体操開始!」
先生は自分の指を揺らしたり、折り曲げたり、最後は全部の指を握って、伸ばして・・・。
子どもたちもそれを真似て、忙しく両手の指を動かしました。
子どもたちは、いつのまにか笑い顔に変わり、気持ちも和んでいきました。
初めて体験することには、それについてくどくど話しをするより、まずは楽しんでワークショップに臨むことが大事、そんな先生の言葉通りにさっきまでの不安なようすがいまは見られません。

先生はそのままの流れで、
「では、おかあさん指でも、おにいさん指でもいいので、それを目の前にある黄色の絵の具のかたまりに差し入れて、その指でグルグルグルって混ぜてみようか」
そう言って、まずは見本を示しました。
最初は少し戸惑っていた子どもたちでしたが、誰もがそっと指を差し入れ、同じように指でグルグルと円を描くように混ぜていきました。
はじめる前は、「ほんとに指でさわっていいの?」という気持ちがそれぞれの表情に出ていましたが、いざはじめてみると、それはどんどんエスカレートして、おかあさん指どころか両手の全部の指が黄色に染まる子もいました。

さらに先生は、
「その黄色の絵の具のかたまりから、今度はおとなりのお友だちの前にある黄色の絵の具のかたまりへ指でつなげてみるよ」
そういうと、黄色に染まった指先をクラフト紙から離れないように横へ滑らせて、となりのお友だちの黄色の絵の具のかたまりに指を差し入れました。
すると、ふたつの黄色のかたまりが線でつながって見えました。
もちろんその線は、いま指でクラフト紙の上を滑らせながら描いたものです。
子どもたちはここまで来たら躊躇(ちゅうちょ)しません。
みんなが一斉に指の絵筆で、黄色の絵の具のかたまり同士を結んでいきました。
最初は点在していた黄色の絵の具のかたまりが、あっという間に一本の線になりました。
それもその線は太くなったり、細くなったり、まっすぐなものからジグザグなものまで、その子の指のかたちや大きさ、クラフト紙への滑らせ方など、ひとりの力では絶対に描けないおもしろい一本の長い線になりました。

子どもたち全員がその時点ですでに裸足の足、両手のひら、あるいは顔の一部にまで黄色の絵の具に染まっていました。そればかりか、今日は汚れても良い服装に着替えています、ということで臨んでいるとはいえ、どうしてそこまで衣服が黄色く汚れるの?と思わず笑ってしまうような子どもたちばかりでした。
そして当然のごとく、誰もがほんとうに満足そうでした。
もっとも、普段の生活でこんなことをしたら、絶対に叱られますからね。
でも、ここまでやっても、子どもたちの表情やしぐさから「これで終わりなの?」という無言のメッセージを強烈に感じました。
そんなことを思って見ていたら、先生はなんと
「今度は自分の手のひらや足を使って、いろいろな色の絵の具をもっとたくさんここ(クラフト紙)に塗っていこうか」
そう言って緑・紫・赤・青色の絵の具をどんどん加えていきました。
子どもたちは「待ってました!」とばかりに、足や両手で加えられた色も混ぜ合わせてクラフト紙の上に模様を描いていきました。

最後は、クラフト紙の上に両手、両足を投げ出して、ついには寝ころぶ始末。
先生も子どもたちをあおるように
「次は足でいくよ、今度は両手で」
と号令をかけながら自らの足や手でバタバタ、すりすりとして絵の具まみれになっていました。
とうとう太目の絵筆まで持ち込み、子どもたちは自分の足や手に絵の具を塗り込んで、それをクラフト紙に押し付けるなど、なにからなにまで絵の具まみれの状態です。
周囲で見守っていたはずの保育士も、なぜかあちらこちらが絵の具で染まっています。
ただただこの光景に圧倒されながらも、なぜか小気味よいものを感じました。

ワークショップ終わりは、子どもたち全員のとびきりの笑顔を保育士が写真に収めました。
年中クラスの子どもたちにとっては、冒頭で触れた先生の「夏の最後は・・・思いっ切りこころもからだも解放できる」ものになったようですし、きっとこの先、こんな経験は二度とないでしょうから、最高の想い出になったに違いありません。

最初は特殊加工の天板をキャンバスに、最後は自らのからだがキャンバスに!?

年長クラスは二度目のテーマになりますが、やはり前回とは異なるかたちではじまりました。
まず、サンシェードの下、ブルーシート内に当園の机を4脚持ち込み、それらを等間隔に並べました。
年長クラスの子どもたちが今回キャンバスにするのは、この机の天板部分です。
天板には熱や水分、油汚れなどに強いとされる特殊加工が施されているので、クラフト紙のように絵の具を吸収しない分、そのはじかれ方や混ざり方によって得られる特別な体験も今回の狙いにあります。

年長クラスの子どもたちは、机1脚につき4~5人が使えるように分けられました。
状況は昨年とは違いますが、「ボディペイトまたはフィンガーペイント」のテーマに一人ひとりの記憶がよみがえってきたようです。

クラフト紙は使用しませんが、はじまりは年中クラスと同じです。
先生は黄色の絵の具の入った溶き皿を手にして、一つの天板に5~6滴のかたまりを垂らしながら4脚分の机をまわります。

すでに経験のある年長クラスの子どもたちは、それを指先や手のひらで広げていくことは承知しています。
ただし、今回は年中クラスだった時とは違い、むやみやたらと指先や手のひらで絵の具を混ぜ合わせることはせずに、ひとつのルールをつくりました。
それは、自分の目の前にある黄色の絵の具のかたまりと、その対角線上にあるかたまりとを線で結んでいくこととしました。それは絵の具の色が変わっても同じルールです。

去年は先ほどの年中クラスの子どもたちのように、勝手に思うままグルグルと混ぜ合わせればよかったのが、今回は一度頭のなかで同じ天板のどこにあるかたまりと結んでいくかを考えなければなりません。
別の色の絵の具が加わるたびに複雑な線が天板の上を走りまわります。それもできるかぎり意味なく混ざり合うことを避けるようにしていきます。
こうして4脚すべての天板の上に出来上がった絵柄をきれいに並べて、みんなで眺めてみることにしました。
どの机の天板に描かれた絵柄もとても鮮やかな色彩で構成され、子どもたちの工夫の跡が見てとれました。
もちろん、これに関しても〝完成形〟などありませんので、これはこれで一旦終了としました。

子どもたちはホッとするのと同時に、やはり何か物足りなさを感じているように見えました。
すると、またまた先生はそんな気持ちはお見通し、とばかりに
「よく頑張って仕上げました!なので、ここからはお待ちかねの、机の上の絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜていいですよ」と大きな声で促しました。
子どもたちはその声にすぐさま反応して、全員目の前の天板の絵柄を両手で、文字通りぐちゃぐちゃにかき混ぜました。
さっきまでの鮮やかな絵柄は一瞬にして消え去り、どの机の天板も何色だったのかさえわからないほどくすんだ濃いグレーとも黒ともいえない色彩になりました。
それにクラフト紙と違い、天板の上はツルツルに滑るので、手の動きもなめらかで、感触も気持ちよさそうです。

しばらくして、先生はまた一旦それを止めて
「このぐちゃぐちゃになった天板の上に、指先で好きな模様を線で描いてごらん」と言いました。
今度は好きな絵が描けると喜んで、どの子も指先を器用に使って線画を描きはじめました。

それが出来上がったら、その線画の上に真っ白な画用紙を1枚かぶせて上から軽くこすると、グレーがかった色彩を背景にした線画がくっきりと写し取れていました。子どもたちはその予期せぬ作品づくりに驚きました。
それからは自分の線画を急いで仕上げ、どの子もその作品づくりに励みました。

気づけば、年中クラスの子どもたち同様に、いつの間にか両手はもちろんのこと、ぐちゃぐちゃにかき混ぜた際に飛び散った絵の具に衣服や足までもが汚れに汚れていました。
先生は、ワークショップの終わり時間を見計らい、
「年長さんも、本当はこれが一番やりたかったんだよね、さあ、最後は絵の具を自分のからだがキャンバスだと思って好きなだけ塗っていいよ」と先生が発すると、子どもたちは一斉に歓声を挙げながら自らのからだに絵の具を塗り出しました。
もうどの子も全身絵の具まみれです。そして年中クラス同様に、最後は保育士の写真撮影に、全員そろって笑顔の「ハイ、ポーズ!」で締めくくりました。

年中・年長共にワークショップ終了と共に、どの子も汚れた衣服を脱ぎ、シャワーを浴び、気持ちよさそうにさっぱりときれいな服装に着替えて教室に戻りました。

非日常を体験できるという、子どもたちにとってほんとうに素敵な環境

そんな子どもたちを見送っていた松澤先生に、今回もお話しを聞きました。
「今期もこれまでに多くの体験を通して、子どもたちは遊びながらでも知らず知らずのうちにたくさんのことを学び、身につけてきました。
そのために、時には難しいテーマにも挑戦してもらったので、今回はワークショップの後半に向けての小休止という意味合いもこめて、子どもたちがただただ終始はしゃいで、遊んで、めちゃくちゃになって、誰もが純粋に〝楽しかった!おもしろかった!〟って言えるようなものにしたかったので・・・」
こう切り出すと、さらに続けて
「今回年中クラスの子どもたちは初めての体験だったから、最初はほんとに指で触ってもいいの?という、多分叱られるんじゃないか、っていう気持ちがあったんだと思うけど、やりはじめたら止まらない勢いでしたね、もう今日はこれだけやらせて~って感じで。
年長クラスにはちょっとルール付けをして、色と色を工夫しながら結んでいって、そこに出来る色彩やカタチの面白さなどを体感してもらえたらいいかな、と思ってやりましたが、結局年長さんたちも最後はアレがしたいんですよね(笑)。だから、終わり間際にはどの子も手放しで大騒ぎしてましたからね」
先生は笑いながら、そう話しました。

それから、
「普通の生活のなかではこんなことはできないことですからね、いわば非日常を体験したと言っても過言じゃないです。この先、こんな経験をさせてくれる場も機会もほぼないのが現実ですから、本当に子どもたちにとっては貴重な時間だったと思います。
それに絵の具って、学校の授業で今後も使うことはあっても、意外にその感触までは知らないひとがほとんどでしょ。これだけ指先や全身でその感触を体感できるって、ここ以外ではあり得ないことなんです。
そうそうできないという理由は簡単で、第一に手間暇かかる、準備もですが、絵の具まみれになった後始末が大変だから。
それが、ここでは園長をはじめ保育士たちがみんな子どもたちと一緒になって、このことに真剣に取り組んでいるし、協力的だし、また愉しんでもくれていますからね。それって、なによりも大事なことだし、子どもたちにとってもほんとうに素敵な環境だと思います」
最後に指導経験が豊富な先生ならではの意見も聞くことができました。

こうしてこの夏最後のワークショップは無事に終了しました。きっと、どの子にとっても、もうこれから先にそうそう体験できない素敵な夏の想い出として、いつまでもこころに残ってくれるような気がします。

ドキュメンテーション

絵筆で思い切り汚れて遊ぶ経験はこの先どれくらいあるだろう。
汚れてしまう、そんな少しの罪悪感でも感じてしまう子がいるかもしれませんが、解放して様々な感覚を手にいれよう。

【用意】

  • 絵の具(黄色、青、紫、緑、白など)
  • ボディソープ(泡でも泡でなくても)
  • 絵の具を入れる容器
  • 筆・筆洗器
  • 汚れてもよい服装
  • 養生シート
  • ブルーシート
  • 厚口のクラフト紙ロールなど

written by OSAMU TAKAYANAGI

【羽村市】公園イベント情報

2024年9月5日 木曜日投稿

①ヤギ除草

市内公園にて、安全でエコな除草である「ヤギ除草」を実施します。
一生懸命に草を食べるヤギさんにぜひ会いに来てください。

<スケジュール>

  • ◎9月10日(火) 10時00分~正午 S&Dスポーツパーク富士見
  • ◎9月12日(木) 10時00分~正午 グリーントリム公園

②ポットラックピクニックvol.6

「ポットラックピクニック」に遊びに来ませんか?
今回は「防災」をテーマに、子どもも大人も楽しみながら学べる内容になっています。
ぜひ、ふらっと遊びに来てください!

  • 【日時】9月16日(月祝) 13:00~20:00
  • 【会場】S&Dスポーツパーク富士見 子ども広場
  • 【内容】防災カフェ、リラックス系ブランコシート、手づくりおもちゃ教室、キッチンカー出店など

※各プログラムで開催時間が異なります。詳細は公式サイトをご確認ください。

https://www.city.hamura.tokyo.jp/prsite/cmsfiles/contents/0000018/18457/vol6.pdf

今日(8/30)は通常通り開園します

2024年8月30日 金曜日投稿

今日(8/30)は通常通り開園します。
登園の際には雨にくれぐれもお気をつけください。
なお、保育中に警戒レベル3以上の発令が羽村市から出された場合、一斉メールにてお迎えのご依頼をさせていただきます。

詳細につきましては、下記ページをご確認ください。
https://aozora.sunshine.ed.jp/fusui/