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【にじいろWS 2022-7月】フィンガーペイント・大きなにじ

2022年8月4日 木曜日投稿

指で直接ふれた絵の具の感触や色彩など、それを五感に残すだけでいい

激しい雨、そして連日の猛暑、さらにはコロナの急増。
子どもたちにとっては楽しみな夏到来というこの時期ですが、なんとなく気分が晴れません。
こんな毎日では、子どもたちだってストレスが溜まるばかり。
そこで今回のワークショップは、からだとこころを自由にのびのびと解放し、思う存分アートを楽しむことができる〈フィンガーペイント〉を行いました。

〈フィンガーペイント〉とは、文字が示すとおり、手や指に直接絵の具をつけて、そのまま画用紙などに色を塗ったり、絵を描いたりすることです。またそうした指での絵画技法のことを〈フィンガーペインティング〉といいます。
少し専門的なことを言えば、〈フィンガーペインティング〉は1930年頃に医学療法の一環として紹介されました。その後、児童心理学者が「アートセラピー(※さまざまなアートによって心を癒やす治療法)」として導入したのがはじまりだといいます。
つまり、子どもにとって、こころの成長を促進する効果があるということです。
もちろん、今回のワークショップはそうした学術的な知識は一切不要です、これはあくまでも参考までに。

ところで、年長クラスの子どもたちは、昨年9月に〈ボディペイント〉というワークショップを体験しています。
それは自分の手足やからだをキャンバスに見立て、筆を使って色を塗ったり絵を描いたりしました。

でも今回は、筆の代わりに自分の指や手を使って大きな紙やそれに類するものに色を塗ったり絵を描いたりします。
一見どちらも同じようですが、表現する技法はあきらかに違います。
もっとも当の子どもたちにとって、それがどちらであっても気にとめる必要はありません。
いずれの場合でも、皮膚が絵の具から直接受ける感触や色彩、それによってふくらんだ想像力など、そうした体験で得たすべてのことが自分の五感にしっかり残されていれば、それだけでいいのですから。

手指だけで七色を重ね、大きな〝にじ(虹)〟を描こう!

今回、先生は〈フィンガーペイント〉を行うにあたり、一人ひとりでそれを楽しむのではなく、全員でひとつのテーマに基づいた作品を作り上げるということを試みました。
それは、「にじいろワークショップ」にちなみ、七色の絵の具を使って、大きな〝にじ(虹)〟を描こうというものです。

虹の色は一般的に、赤・橙(だいだい)・黃・緑・青・藍・紫の七色とされています。
それらは自然が織りなす色彩ですから、その色をすべてそろえるというのは不可能なので、先生はその七色に近い色をそれぞれ用意しました。
そして、一色ごとにチューブからひねり出した絵の具のかたまりを、色ごとに7つの容器に分け入れ、そのひとつひとつにボディソープ(※洗い落ちも早く、感触も滑らかに)を流し込みました。
7つの容器に入ったそれぞれの色の絵の具と白いボディソープをクルクルと筆でかきまぜると、みるみるうちにきれいな七色の液体ができあがりました。
これで七色の絵の具は準備完了です。

まずは年中クラスの子どもたちです。
2階のバルコニーが今日のワークショップの教室ですが、その床面に大判のクラフト用紙をいく枚かつなぎ合わせて作った超特大クラフト用紙を敷きつめました。
これが、子どもたちが今回描くキャンバス地です。
子どもたちはいつものごあいさつを終えると、一列に並びながらその超特大クラフト用紙のまわりをぐるりと囲み、ちょうど誰もが均等の間隔をとれたところで床に座りました。
「なにするの?」とみんなけげんな顔で、目の前にひろがったクラフト用紙を見わたしています。

先生はそんな子どもたちに、“にじ”のおはなしをしながら準備しておいた絵の具(最初は黄色)の容器を取り出し、子どもたちが囲むクラフト用紙の上、つまり子どもたち一人ひとりの目の前に色のしずくを点々とたらしていきました。
たらし終わった色のしずくもまた、子どもたちの目の前をぐるりと一周しています。
子どもたちはよけいにわけがわかりません。

次に先生は、目の前にたらした水たまりのような黄色の絵の具に自分の指先を直接入れ、絵の具の感触を楽しむようにゆっくりと指になじませると、いきなりその指をとなりのしずくへと滑らせていきました。
すると、目の前のしずくととなりのしずくが黄色の太い線で結ばれました。
「お~っ」とどこからともなく子どもたちのおどろきの声がもれます。

すっかりワークショップになれた子どもたちは、さっそくそれを真似て、となり同士の黄色の水たまりのようなしずくを指先だけで次々に結んでいきました。
となり同士の色のしずくがどんどんつながって、いつの間にか子どもたちの目の前にぐるりと大きな四角い黄色の帯が描かれました。
実はこのとき、年中クラスの子どもたちは初めてその指で、その手で直接絵の具に触れたのです。
無意識だったけど、その感触はきっと忘れないでしょう。

その次の色はみどりです。
同じように、ひとしずくずつ子どもたちの前にたらし、それを指でなぞってとなりからとなりへとつないでいきました。
こうして順々に七つの色の帯が重なって描かれていくと、いつのまにか子どもたちの目の前には大きな〝にじ(虹)〟が現れました。
子どもたちからは達成感に満ちた歓声があがりましたが、それもつかの間、〝にじ〟ができ上るやいなや、待ってました!とばかりに、余った絵の具を先生からもらって〝にじ〟の上へさらに色を重ねはじめました。

それも指先どころか手のひら、足の裏、そのうち全身でクラフト用紙の上を転がりながら・・・そりゃあもう容赦なく。
とうとう手作りの超特大クラフト用紙もボロボロに千切れて、あちらこちらでめくりあがる始末。
なかには保育士の手や足にまで絵の具を塗りだす子どもたちまで。
もはや全身絵の具だらけで、キャッキャッと大さわぎです。
でも、そんなほんとうに楽しそうに遊ぶ子どもたちを見て、先生や保育士も自然と笑顔になりました。

さすがに年長クラスは、より完成度の高いアート作品に仕上げました

年長クラスの子どもたちも、年中クラスと同様の手順ではじめます。
でも、やはり一年分の経験もあるし、手指に残る絵の具の感触もすぐさまよみがえってくるなずです。
そこで先生は、より完成度の高い大きな〝にじ(虹)〟を描くことを目標にしました。

年長クラスの子どもたちも2階のバルコニーが今回の教室ですが、そこには透明で大判の養生シートをやはりいく枚かつなげて作った、これまた特大の養生シートを敷きつめました。
これが年長クラスのキャンバスですが、紙に描きなれた子どもたちには新しい感触が得られたはずです。

子どもたちは、その特大の養生シートを囲んで座りました。
そして先生は最初に黄色の入った容器を取り出し、ひとしずくずつ子どもたちの目の前にある養生シートの上にたらしていきます。
その水たまりになった黄色の絵の具に先生の指先を差し入れ、ゆっくり指になじませると、その指をとなりのしずくへと滑らせていきました。こうすることで目の前のしずくととなりのしずくが黄色の太い線で結ばれます。
ここまでは、年中クラスとまったく同じです。

子どもたちがそれをはじめようとしたとき、先生は言いました。
「これから、この太い線を重ねて〝にじ〟をつくるんだからね、きれいな線で結んでいこうね、あわてずにゆっくりでいいから」
年長クラスの子どもたちには、描きだす前にテーマをしっかり伝えます。
それがしっかり理解できることを先生も、子どもたちもわかっています。

ほんの少し子どもたちの気持ちに緊張感が入ります。
でも、ただの遊びでは得られない気持ちですし、それがまた楽しさに深みを増します。

同じように七色の絵の具が順番に、ゆっくり重なっていきます。
年長クラスの子どもたちは、むずかしい理屈ではなく、アートへの取り組みを心得てきたようです。
誰ひとりとして、その色の重なりを邪魔したりはしません。むしろ、みんなで一色ごと、慎重に、そしてきれいに塗り重ねていきました。

そして、ほんとうに美しく大きな〝にじ(虹)〟が子どもたちの目の前に現れると、やはり歓声があがりました。
手指による繊細な作業によって、色と色の重なる部分に鮮やかなグラデーション(色調の段階的な変化)さえ見えています。
子どもたちも、その完成度の高い作品に満足気な笑顔を浮かべていました。

ということで、やはり最後はその完成された大きな〝にじ〟の上に、今度はそれぞれが自由に色を塗り重ねていくことに。
さすがにこうした場面でも年長クラスのこどもたちは半端ないです。
年中クラスの子どもたち以上に手足から顔、衣服まで全身絵の具だらけになって大あばれです。
こうなると、もはやはじまる前の子どもたちの面影などありません。
しかしそんな光景を、またしても先生や保育士たちはほほえましく眺めていました。
子どもが本来そうであるように、すべてから解放されて、飛んだり、跳ねたり、転げ回るという、ただ単純なそのことに感動さえ覚えるのです。
そろそろ終わりの時間です。では、最後に全員で写真撮影~ハイ、ポーズ!

年中クラスも年長クラスの子どもたちも、ワークショップ終了とともに絵の具だらけになった服を脱ぎ、気持ちよさそうにシャワーを浴びて手足や顔についた絵の具を洗いおとしていました。
夏のはじまりの、ほんのひと時の体験でしたが、きっといつまでもからだやこころの記憶として残ることでしょう。

こころとからだの解放、それが一番の成果かもしれません

子どもたちがよくおとなから叱られることに、「汚しちゃダメ!」という、汚すという行為への禁止をうながされることがあると思います。
それは社会に生きるひとたちの基本的なルールのようなものですし、人としても当然のことに違いありません。
でも、わが身を振り返ると、小さいころは確かによくこのことで叱られましたが、おとなになるに従って、自ら汚すような行為はしませんし、逆にそう言って叱る立場に代わっています。

今回のワークショップは、ある意味「汚しましょう!」と子どもたちに奨励するような行為です。
しかも、自らの手指を汚し、最終的にはからだ全身(衣服もふくめて)を汚すことを良しとしました。
このことによって、子どもたちのなかで禁止されていたことのひとつが解放され、短い時間でしたが自由になったと感じることがあれば、それがなによりの成果だったのではないでしょうか。

さて今回も、「にじいろワークショップ」を企画・指導する松澤先生に今回のワークショップについて語っていただきました。
「子どもたち、とくに未就学のこの子たちは、いまこのコロナ禍でかつてないほどのストレスや不安に駆られています。だから、せめてこうしたワークショップに参加することで少しでもその心身を解放してあげたい、という思いでいます。そういう意味では、大成功だったといえるでしょう。
また〈フィンガーペイント〉の狙いである、筆などの道具に頼らず、美しい線やものの形にこだわることなく、自らの指や手の感覚だけで何かを自由に表現するということにおいても、子どもたち自身達成感を得ることができたと思います。
ただ反省すべき点があるとすれば、汚してもいい服装での参加でしたが、最後はからだ全体を使って絵の具にまみれていましたから、こんなことなら水着で参加してもらえばよかったかな、って(笑)」

ドキュメンテーション

「フィンガーペイント・大きなにじ」

大きな紙、またはシートにダイナミックなフィンガーペイントを行います。
初めは「虹」から、最後は全ての色が混ざり合います。心を開放させて、絵の具の色の混ざりや感触を、身体を使い存分に楽しみます。

written by OSAMU TAKAYANAGI

【羽村市】コロナ禍における保育施設利用ガイドライン(第5版)

2022年8月2日 火曜日投稿

コロナ禍における保育施設利用ガイドライン(第5版)

 保育施設では、子どもたちの安全に十分配慮して運営していますが、集団感染が発生するリスクを完全に防ぐことはできません。 集団で園生活を送るということは、ご自身のお子さんが感染するリスクがあると同時に、他のお子さんを感染させてしまうリスクもあ りますので、お互いに ルールを守って ご利用いただきますようお願いします 。

1 保育施設利用にあたっての留意事項

(1) 園児および同居家族 の 朝夕の検温、体調チェックは必ず行ってください 。 園児に発熱(37.5℃以上)や呼吸器症状等の風邪症状が見られる 場合 は 、症状が治まり24時間が経過するまで お預かりできません 。また、園児の体調が良好な場合でも、同居家族に風邪症状が見られる場合は登園を控えてください。 なお、呼吸器症状が 新型コロナウイルス 感染症に起因するものでないと医師が判断した場合はこの限りではありません。

(2) 保育施設で感染者が確認された場合、濃厚接触者の特定は行いません。 感染者を特定できる情報を除いてお知らせをいたしますので、お子さんの体調にご留意願います。 登園に関する制限はありませんので、健康状態を観察し、判断いただくようお願いいたします。

(3) 園児の感染が確認された場合、または濃厚接触者に特定された場合(保育施設以外で園児が感染者と接触した、同居家族の感染が確認されたなど)は、速やかに園に連絡してください。

(4) 園児が陽性者となり、症状がある場合は発症日を0日目として最低10日間、無症状の場合は検査日を0日目として7日間が療養期間となります。また濃厚接触者となった場合は、最後に感染者と濃厚接触した日を0日目として5日間が待機期間となります。

(5) 園児が医師の診断によりPCR検査を受けることとなった場合は、速やかに園に連絡してください。PCR検査で陰性が確認されるまではお預かりすることができません。ただし、保健所から指導があった場合は、そちらを優先します。

(6) 園児の同居家族が濃厚接触者に特定された場合や、医師の診断によりPCR検査を受けることとなった場合については、園児が濃厚接触者に特定されなければ登園可能とします。ただし、濃厚接触者に特定された、若しくはPCR検査を受けた同居家族の方による園児の送迎については、指定された待機期間中はご遠慮ください。

(7) 園内の過密状態を少しでも軽減するため、保育時間(保育標準時間の場合は午前7時~午後6時、保育短時間の場合は午前8時30分~午後4時30分)にかかわらず、勤務先の出退勤時間に応じた送迎にご協力ください。

2 情報の共有等

(1) 「1 保育施設利用にあたっての留意事項」に沿って情報提供いただいた内容は、園と市で情報共有させていただきます。また、園児に兄弟姉妹がいる場合は、必要に応じて、学童クラブ担当、小中学校等へ情報提供する場合がありますのでご承知おきください。

(2) 園児が新型コロナウイルスに感染した場合は、個人名やクラス名等は伏せた上で、感染の経過等について、園の連絡網等により保護者の皆さまへ情報提供します。

3 臨時休園

(1) 園児及び園職員が5名以上同一の感染源から感染したと疑われる場合は、濃厚接触者の特定、保健所による調査などの対応を行います。その際、施設の消毒や濃厚接触者の特定のため直ちに休園となる場合があります。

(2) 臨時休園となった場合は、感染拡大のリスクを抑制する観点から他の保育施設での代替保育は実施できませんので、自宅保育等で対応できるようあらかじめご準備くださいますようお願いします。

(3) 市が羽村市社会福祉協議会に委託実施しているファミリー・サポート・センター事業では、サービスを提供する協力会員とサービスを受ける利用会員による共助の仕組みとなっており、日時等の条件が合えばお子さんをお預かりすることができます(有料)。
利用にあたっては、事前に利用会員登録が必要となりますので、利用する可能性がある場合は、羽村市社会福祉協議会(電話042-554-0304)で登録手続きをお願いします(平日のみの受付となりますのでご注意ください。)。詳しくは、市または社会福祉協議会の公式サイトでご確認ください。

4 人権尊重、個人情報の保護

感染された方の詮索、園児等への差別や偏見、SNS等でのむやみな情報拡散などが起こらないよう十分ご配慮ください。

5 新型コロナウイルス相談窓口

【平日 午前9時~午後5時】西多摩保健所(0428-22-6141)
【平日・土日・夜間】東京都発熱相談センター(03-5320-4592または03-6258-5780)

【羽村市】新型コロナウイルス感染症に対応した保育施設の利用について

2022年8月2日 火曜日投稿

事務連絡
令和4年8月2日

市内保育施設利用者 各位

羽村市子ども家庭部子育て支援課長

新型コロナウイルス感染症に対応した保育施設の利用について

 日頃より羽村市の行政運営にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染症については、国や東京都において、オミクロン株の特徴を踏まえ、濃厚接触者の特定や行動制限についての見直しが行われました。市におきましても、国や東京都の見直しに基づき、「コロナ禍における保育施設利用ガイドライン」の見直しを行いました。
 これまで同様、保育施設については通常保育を継続しますが、保育施設の利用にあたりましては「コロナ禍における保育施設利用ガイドライン」に基づき、ルールを守ってご利用いただきますようお願いします。
 特に、以下についてご確認のうえ、ご留意ください。

  • ○お子さんや同居のご家族がPCR検査を受けた場合や園児が感染者・濃厚接触者となった場合は、園に報告してください。
  • ○保育施設において感染者が発生した場合、濃厚接触者の特定は行いません(同一の感染源から5名以上感染したと思われる場合を除きます)。
  • ○お子さんや同居のご家族に風邪症状等の体調不良が見られる場合は、必ず登園を控えてください。この場合も、園へご連絡をお願いいたします。

 また、施設での感染拡大の状況によっては、緊急に休園とする場合があります。
 臨時休園となった場合は、感染拡大のリスクを抑制する観点から、他の保育施設での代替保育は実施できません。自宅保育等で対応できるよう、あらかじめご準備くだいますようお願いいたします。
 なお、今回、ガイドラインの内容の一部を更新した「コロナ禍における保育施設利用ガイドライン(第5版)」を添付しましたので改めてご確認ください(更新箇所は赤字で表示しています。)。
保育施設では、引き続き、子どもの安全を第一に保育を実施してまいりますので、保護者のみなさまにおかれましても、日頃からご家庭での感染予防を徹底するなどご協力をお願いします。
ご不明な点等がございましたら下記担当までお問い合わせください。

【問合せ】
子育て支援課保育・幼稚園係
電話 042-555-1111 内線 241

あそびと環境0・1・2歳(8月号)にあおぞら保育園の様子が掲載されました

2022年7月6日 水曜日投稿

学研の保育雑誌「あそびと環境0・1・2歳」の2022年8月号での、「子どもに働きかける環境作り」という特集記事の中で、あおぞら保育園の子どもたちが遊んでいる様子が掲載されています。

☆あおぞら保育園のにじいろワークショップで、毎月ファシリテーターとしてお越しいただいている松澤綾子先生が記事の監修を行っています。

その他、雑誌等に掲載された内容はメディアへの掲載(法人HP)をご覧下さい。

【にじいろWS 2022-6月】「土粘土あそび」

2022年6月28日 火曜日投稿

土あそびの感覚で、立体表現としての〈アート〉を体験

今年は例年になく最短で梅雨が明けました。
ようやく思いっきり外あそびができると喜んでいた子どもたちでしたが、かつてないほどの猛暑日続きで、長時間におよぶ外あそびは難しいかもしれません。
それでも子どもたちは、雨の日同様に室内でたくさんのあそびを楽しんでいます。
今回のワークショップは、そんな子どもたちに、室内でのあそびの要素も取り入れた「土粘土(つちねんど)」による造形活動をおこないました。

園のなかでの粘土あそびは、なにも特別なことではありません。
子どもたちには両手でつかめるほどの粘土の塊と、B4~A3判ていどの大きさの粘土板(プラスチック製)がひとりひとりに与えられています。
それを各自がのばす、まるめる、ちぎるなど思い思いのやり方で、いろいろなかたちに変化させてあそびます。
通常保育園で使うのは、「あぶら粘土」です。
水分などを加える必要もなく、乾燥することがないので硬くなりにくく、簡単に何度でもかたちを変えられることができるので一般的な学校の教材としても用いられています。
ほかに、水や糊を原料とする粘土で、乾燥させると硬くなり、しかも軽量で着色もしやすいという「紙(かみ)粘土」も手軽に楽しめる粘土として幅広い層に人気があります。
今回教材として使用する粘土は「土(つち)粘土」といいます。
文字通り土を原料にした粘土で、乾燥すると硬くて重くなりますが、再度水分を与えるとまた柔らかくなるので、何度もかたちを変えることができます。
また、その感触も土あそびに近いものがあるので、自然と触れ合う感覚が得られます。
重量があるのでしっかりとした造形物として成り立つことから、立体表現としての〈アート〉活動にとても適した粘土でもあります。

まずは手のひらに、指先に、しっかりなじませることからはじめます

元気よく室内に入ってきたのは年中クラスの子どもたちです。
もちろん「土粘土」によるワークショップは初体験。
子どもたちは大きな声で先生にごあいさつをすませると、前回同様に先生と一緒に全身を動かしながら、からだとこころをほぐします。
でも、どうやら子どもたちは足もとに広がった透明なビニールシートと、その端に置いてある大きなたらいが気になるようです。
これらは今回のワークショップのもので、床などが汚れないよう床面いっぱいに敷いた養生シートと、水に浸して柔らかな状態にしている土粘土が入ったたらいです。

先生はさっそく子どもたちをその養生シートの上にあるたらいの周りに集めて、なかに入った土粘土のかたまりを見せました。
水に浸ったいくつもの四角い灰色の塊(土粘土)に、子どもたちの視線は釘付けです。
その塊の表面をそっと手のひらでなでたり、指で恐る恐る突いてみる子もいます。
先生はその塊をたらいの中からひとつ持ち上げると、それを持ったままシートの中央に座りました。
子どもたちもその周囲に座わり、先生が手にした塊をじっと見つめています。
そこで先生は、それが土粘土という特別な粘土であること、それからその扱い方とあそび(つくり)方を教えました。
さらに1本のタコ糸を出して、土粘土の塊にぐるりと巻き付けると、タコ糸の両端をゆっくり左右に引っ張りました。するとその土粘土の塊が、まるで包丁でお豆腐を切るように、なめらかにきれいに切り分けられました。
子どもたちはそれを見て、「わ~っ」と歓声を上げました。
これなら硬い粘土を力まかせに乱暴に千切らなくても、簡単にいくつにでも切ることができます。
ここまで覚えたら、あとは子どもたちの自主性に任せて創作開始です。

子どもたちはいくつかのグループに分かれ、そのグループ内で土粘土の塊を当分に分け合いました。
はじめは土粘土の感触を確かめるように手のひらで転がしたり握ったりしていましたが、それが徐々に指先にまでなじんでくると、もう一気に自分の思うように変形させていきました。
お団子のように丸い球状のようなものをいくつも並べる子。
1本の棒状にこねながら、ヘビのように、紐のようにどんどん長く細く伸ばす子。
お砂場であそぶように高い山のようなものをつくる子。
足でどかどかと土粘土の塊がたいらになるほど踏みつける子。
また、タコ糸の先に小さな土粘土の塊を下げてぶらぶらさせている子がいたので、「なにをしてるの?」と聞くと、「釣り!」と答えました。
きっと、家庭生活ではそういうあそびもしているのだな、なんて園以外の顔をのぞかせる子もいました。

先生はひと通り子どもたちがつくりあげた造形物を見て、次のあそび方を提案しました。
「それじゃあ、この土粘土にこんなモノ(道具)を加えてみようか」
先生はそう言うと、半分の長さに切ったストロー数本と、長さが約10cm×5㎝で厚み1cmほどの長方形の板の切れ端を取り出し、よくねりこんだ一握り程度の土粘土にそれらを加えて新しいかたちをつくりはじめました。

違う素材のモノを加えるだけで、想像力はさらに高まります

先生は土粘土にストローを刺しました。細い煙突のようでもあり、柱のようでもあり、数本並べて刺すと誕生日のケーキに立てたろうそくのようにも見えました。
また土粘土を土台にして長方形の板の切れ端を立てると、木製の塀ができ上りました。
その塀をまっすぐ並べて囲えば、小さな家になりました。
さまざまなかたちに変化した土粘土ですが、それに全く違う素材のものを加えることで予期せぬ効果(かたち)が表れますし、子どもたちの想像力はさらに高まります。

年中クラスの子どもたちはそれを見るなり、その新たなモノ(道具)を手に持って、それぞれがつくっていた土粘土の造形物にどんどん加えていきました。
四方八方へ競い合うように、5本、10本とストローを刺していく子どもたち。
板の切れ端も同様で、何枚も重ねたり並べてみたりと、新たなモノ(道具)が加わったことで今までにないアイデアが次々に湧き出てくるようです。

先生は最後にもうひとつだけ子どもたちに提案しました。
それは、ひとりひとりが個人的に造形物をつくって楽しむこともいいけれど、その造形物を集めてこのビニールシートの上に「みんなの町」をつくろう、というものでした。
偶然、数人の子どもたちが長く伸ばした土粘土を線路のように床面に貼り付けて、その線路の上にストローを目印にした駅舎をいくつか置き、その駅舎の間を板の切れ端を電車に見立てて走らせていたのです。
そこで、この線路を床面いっぱいにもっと長くつなげて、たくさんの駅舎やビルや山までもつくっちゃおう!というのです。

ところが、その途中で誰かがその線路に沿って歩きはじめました。
それを真似て、いつのまにか全員で、その床につくったさまざまな線路の上をなぞるように歩き出してしまいました。きゃっきゃと大声で騒ぎ、子どもたち自身の足で力強く踏みながら、それこそ電車のように何周も何周も。
子どもたちの想像の世界は、ほんとうに自由奔放で豊かです。
そんな光景を見ていた先生や保育士たち周囲のおとなたちも、思わず子どもたちと一緒に笑い出してしました。

年長クラスの子どもたちは昨年に次いで二度目の土粘土あそびです。
それでも一年経てば、子どもたちは成長し、その分想像力もたくましく育っていますから、ほぼ新しい体験と言ってもいいでしょう。

ワークショップの内容は年中クラスと同じですが、進め方やあそび方はレベルを上げて指導します。
当然レベルアップしたものに十分応える子どもたちですし、日頃からつくること、想像することに長けたクラスで、なによりもそういうことが大好きな子どもたちです。
まさに“好きこそ物の上手なれ”でしょうか。

そんな年長クラスの子どもたちは、土粘土以外のモノ(道具)をプラスすることで、より複雑な構造物をつくり出しました。
そして最終的に、年中クラスの子どもたちが到達できなかった「みんなの町」づくりは、年中クラスの子どもたちから引き継ぐかたちで見事に達成することができました。

「はむら」と土粘土で文字をつくった駅名の表示板もあります。
線路も途中途切れることなく、ビニールシートいっぱいに繋がり、大きな駅舎もたくさんできました。
線路の沿線にはエイやサメ、カミツキガメまでいる水族館や板の切れ端に乗ったお寿司がいくつも並んでいるお寿司屋さんも見えます。
線路脇の道を走るのは未来の乗り物でしょうか?不思議なスタイルの車もあります。
またユニークな顔のオブジェも線路脇に建っていて、バラエティ豊かな景色がつくられました。
年長クラスの子どもたちは全員でそんな「みんなの町」のパノラマをゆっくり一周し、そこに出現したさまざまな創造物を鑑賞しました。

ただひたすら粘土をこねることで、生まれ出てくるもの

今回のワークショップは、美術学校でいえば「彫塑」という専門課程に属するものです。
子どもたちが扱ったように、柔らかな粘土で何度でもやり直しながら最終的な形を作成していきます。
よく「彫刻」と同類に考える方がいますが、あきらかに似て非なるものです。
「彫刻」は、簡単に言えば石や木など硬質の素材から、ノミなどを使い彫り刻みながら形をつくっていくので、これはある意味やり直しができないことから、かなり高度な技術力が必要になってきます。
そう考えると、今回のワークショップは、高校や大学で学ぶ専門課程と同じことを4~5歳の子どもたちが体験したということでしょうか。
それはちょっと言いすぎかもしれませんが、〈アート〉とはなんとも不思議でおかしな世界に思えてきます。

さて最後になりましたが、「にじいろワークショップ」を企画・指導する松澤先生は、
今回のワークショップをこう振り返りました。
「まず、粘土をこねること。
何の意図も結果も求めず、ただひたすらこねる。
そこから手の感触や自由にかたちを変えていく粘土と向き合いながら
自分の思いやかたちを考えていく。
つまり自分のなかから湧き出るものではなく、
粘土という自分の外側から受ける刺激によって生まれるもの(こと)。
そういうことを今日のワークショップから感じとって欲しい。

それから、粘土だけではなく、そこに新たなモノ(道具)・・・
今回でいえばストローや板の切れ端などをプラスすることで、
粘土以外のモノ(道具)に触発されて、さらに想像力が膨らみ
まったく予想もしなかった自分の思いやかたちへ発展するという
そんな面白い体験にもなったと思う。
これから何かをつくるときに、無意識にでも
そういう発想の仕方が生きてくるはずです」

粘土あそびは、その多くが個人での単独な遊びになってしまうのが実情です。
松澤先生のワークショップは、それを最終的に全員がひとつのもの(形)を目指して作り上げていくという・・・
そんな通常にある個の粘土あそびから全の粘土あそびへと昇華させる新たな試みがひとつの特徴です。

ドキュメンテーション

「土粘土あそび」

土にふれ、その特性を感じながらダイナミックに心のままに土粘土でのあそびを行います。
粘土は力の加減によって、さまざまな状態に姿を変えます。それを楽しみ、あそびに展開できるような時間にしたいと思います。

written by OSAMU TAKAYANAGI

「教育美術」6月号にて保育園美術館の取り組みが紹介されました

2022年6月13日 月曜日投稿

公益財団法人 教育美術振興会が発行している「教育美術」2022年6月号での杉浦先生による「美術館を学びの場として活用する試み」というコラムの中で、あおぞら保育園にて行われている「保育園美術館」の取り組みが紹介されています。

【羽村市】新型コロナウイルス感染症に対応した保育施設の利用 について

2022年5月27日 金曜日投稿

事務連絡
令和4年5月27日

市内保育施設利用者 各位

羽村市子ども家庭部子育て支援課長

新型コロナウイルス感染症に対応した保育施設の利用について

 日頃より羽村市の行政運営にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染症はいまだ収束には至っておらず、今後も感染症対策を実施していく必要があります。
 これまで同様、保育施設については通常保育を継続しますが、保育施設の利用にあたりましては「コロナ禍における保育施設利用ガイドライン(第4版」に基づき、ルールを守ってご利用いただきますようお願いします。
 なお、国の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の変更等に伴い、熱中症などへの対策を踏まえ、以下のとおり対応してまいりますので、ご理解ご協力をお願いいたします。

  • ◆2歳未満(乳幼児)は、引き続き、マスクの着用は奨めません。
  • ◆2歳以上は、個々の発達の状況や体調等を踏まえる必要があることから、他者との身体的距離にかかわらず、マスク着用を一律には求めません。
  • ※施設内に感染者が生じている場合など、施設管理者の判断により、可能な範囲で、マスクの着用を求める場合があります。
  • ◆お子さんや同居のご家族に風邪症状等の体調不良が見られる場合は、必ず登園を控えてください。
  • ◆お子さんや同居のご家族がPCR検査を受けた場合や濃厚接触者となった場合は、園に報告してください。

 また、施設での感染拡大の状況によっては、緊急に休園とする場合があります。
 臨時休園となった場合は、感染拡大のリスクを抑制する観点から、他の保育施設での代替保育は実施できません。自宅保育等で対応できるよう、あらかじめご準備くだいますようお願いいたします。
 保育施設では、引き続き、子どもの安全を第一に保育を実施してまいりますので、保護者のみなさまにおかれましても、日頃からご家庭での感染予防を徹底するなどご協力をお願いします。
 ご不明な点等がございましたら下記担当までお問い合わせください。

【問合せ】
子育て支援課保育・幼稚園係
電話 042-555-1111 内線 241

 

【にじいろWS 2022-5月】「透明なキャンバス テラスでお絵描き」クレヨン編

2022年5月23日 月曜日投稿

室内とテラスを仕切る透明なガラスサッシ、それが今回のキャンバス

「透明なキャンバス」という言葉に聞き覚えのある方は多いと思います。
実は、昨年6月に〈テラスで描こう、透明なキャンバス〉というテーマで、当園2階から園庭に通じる外通路と外階段にあるガラスの壁面をキャンバスにして絵を描くというワークショップを行いました。
そう、テーマだけをみれば、その続編ともいえます。


でも、今回そのキャンバスとなるのは昨年と違い、いつもワークショップを行う室内とそれにつながる室外のテラスを仕切る透明なガラスサッシがキャンバス(支持体*)になります。
部屋の形状に沿うように横長に広がって連なる大きなガラスサッシは、まさにお絵描き用のキャンバスにはぴったりかもしれません。
その横長に連なるガラスサッシをちょうど半分に分け、室内から見て左側を年中クラス、右側を年長クラスのスペースとしました。
また、絵を描くために使用する画材も、昨年はアクリル絵の具と筆でしたが、今回は専用のガラスクレヨンを用います。
これは日常園で使うクレヨンと変わらないので、子どもたちにとっては手に馴染んだ画材といえます。

年長クラスの子どもたちは昨年のそれを覚えていたようで、「すぐにやりたい(描きたい)!」と勢いよく集まって来たのですが、どうもようすが違うのですぐに「あれ?」という表情になりました。
そして今回初めて透明なガラスにお絵描きをする年中クラスの子どもたちは、なにをするのかやや不安そうです。
いずれにしても、今回の透明なガラスのキャンパスに描くワークショップはただの続編ではなさそうです。

*支持体(Support):絵画においては、絵の具を塗るために使用するキャンバスや画用紙などを指します。

年中クラスがガラスいっぱいに描いたのは、植物の成長物語

今回2回目のワークショップとなる年中クラスの子どもたちは、室内に入って先生の顔を見るなり、
「アヤコせんせ~い!」と大きな声で呼びかけました。
先生の名前は、まっさきに覚えたようです。
とはいえ、まだまだ「何をするのかな?」と戸惑うようすは隠せません。
そこで先生は、まず子どもたちと一緒にあそびながら全身を動かし、からだとこころをほぐしていきます。
〈アート〉活動だって、こころとからだのストレッチはとても重要ですから。

からだもこころも整えたら、いよいよはじまりです。
子どもたちは全員テラスへ出て、室内とテラスを仕切っている透明なガラスサッシに沿って一列にまっすぐ並びました。
そして、そのガラスサッシ越しに室内を眺めると、そこには先生がひとり、1本のクレヨンを持って立っているのが見えました。
先生はゆっくりガラスに近づくと、そのクレヨンで、なんと目の前にある透明なガラスに絵を描きはじめました。
赤い丸や三角、花の絵など、それもガラスの向こうに立ち並ぶ子どもたちの目の前に。
一瞬それに驚く子どもたちでしたが、そのうち目の前に描かれた絵を見て笑い声が出はじめました。
なにしろ、子どもたちの目の前にあるガラスの反対側から、次々に絵が描かれていくなんて、見たこともない不思議な体験でしたから。

そんなふうに絵を描き終えると、先生も子どもたちのいるテラスに出て、
「いま先生が描いたように、みんなも目の前のガラスに好きな絵をいっぱい描いてください!」
と大きな声で促しました。
もちろん、年中クラスの子どもたちはガラスに絵を描くなんてはじめてですから、「え~っ?」と誰もがまだ不安そうな声を上げました。
すると、子どもたちと一緒にテラスに立っていた園長が、
「今日はいいよ、どんどん描いてね」とニコニコしながら言いました。
そう言われたら、もう躊躇する子などはひとりもいません。
先生が用意したいくつもの色のクレヨンからそれぞれが好きな色を選び、思い思いの絵をいっせいにガラスへ描きはじめました。
ひとや動物の絵、月や星、太陽、幾何学模様(?)、いくつもの色を重ねた色彩の塊など、みるみるガラスは子どもたちの自由な〈アート〉で埋まっていきました。

短時間で仕上げたそのようすを見て先生は、
「ずいぶん早く描けたね、みんなじょうずですごいなぁ」とほめると、さらに
「それじゃ、今度は先生がみんなに描いて欲しいもの(テーマ)をいいます」そう付け加え、
クレヨンで埋め尽くされたガラスサッシを濡れた雑巾で拭きました。
数回拭き取ると、もとのように透明なガラスサッシに戻ります。

いま描いたのは、まずはガラスに描くことに慣れること、それからどれくらい描いていけるのか、そんなことを見極めるためです。
先生はあらためて新しい絵を描きはじめました。
それは、緑色の小さな花の芽の絵でした。
そこから次第にツルが伸びていき、やがて葉が出て花が咲く・・・そんな植物が成長していく絵です。
この植物の成長する姿(ようす)を子どもたちに描いてもらおうというのが、先生が掲げたテーマでした。


ちょっと難しいんじゃないかな、というおとなの心配をよそに、子どもたちは先生の絵を見ながら感嘆の声を上げると、またしてもすぐさま見よう見真似で描きはじめました。

いつの間にか子どもたちの目の前のガラスには、新しく誕生した芽、そこから空に向かって伸びていくツルと葉、その先に咲き乱れるきれいな花々という、植物の成長物語が表れました。

反転して見た世界は、ウラ?オモテ?どっちがほんと!?

年長クラスの子どもたちは一度同じような体験をしているので、テラスの外からいきなり描きはじめることにしました。
さすがに絵を描くのはお手の物とばかりに、どんどんガラスがクレヨン画で埋まっていきます。
年長クラスの子どもたちには、誤って描いた線や色、別の絵を描きたいときなどに濡れた雑巾を使ってきれいに拭き取る方法を教えました。
それを覚えると、右手にクレヨン、左手に濡れた雑巾を持って、器用に描いたり消したりする子もいました。

どの子も描いては消してまた描いてという動作に慣れたころ、テラス側から描いた絵を室内側から眺めてみることにしました。
描きかけの絵や完成した絵を、それぞれが室内とテラスを行ったり来たりして眺めます。
それを繰り返すうちに、
「なにか変だぞ」と子どもたちは気づきました。
目の前から見て正しいと思って描いていたはずの絵が、反対側から見ると左のものは右に、右のものは左に。
つまり、テラス側を正面と思って描いたはずの絵が、室内側からは反転して見えたのです。
こんな風に自分が描いた絵を反転して眺めることなどありませんから、誰もが新鮮な驚きを感じたはずです。

しばらくして、今度は先生がテラス側から描いた子どもたちの絵に対して、室内側から絵を描き足してみました。
その先生が描いた絵は、子どもたちから眺めると反転して見えます。
それを見た子どもたちは先生を真似て、テラス側から描いた自分の絵に、室内側から描いた自分の絵を重ねはじめました。
はたして、自分で描いた絵はどっちがオモテだったのか、ウラだったのか?
オモテだと思って描いたものが、実はウラだったかもしれない、そんな奇妙で複雑な絵が表れました。
昨年のワークショップでは、通路内のガラス壁に描いた絵をすぐにウラ側から眺めることはできませんでした。
ましてやウラ側からオモテ側の絵に重ねて描き足すなんて。
なので、昨年同じようなワークショップを受けた年長クラスの子どもたちも、これはまったく新しい体験なのです。

さらに先生はテラス側で黙々と絵を描いている子どもの反対(室内)側にいくと、その子の描く絵と対峙するかのようにその絵とは違う形や色で絵を重ねていきました。
それに気づいたその子は、まるで先生とコラボをするかのように、またそこにテラス側から違う形と色を描きました。先生も負けじと、またしてもその絵に別の形と色を足していきます。
そんなふたりのお絵描きの応酬を見ていると、言葉ひとつ発することはないものの、ガラス越しでも〈アート〉を媒介に確かなコミュニケーションがとれていることに感動しました。

描くことに向き合う、真剣な子どもたちのまなざし

こうして、年中クラスと年長クラスの子どもたちは、ガラスサッシという透明なキャンバスいっぱいに鮮やかな〈アート〉作品を描きました。
今回は昨年とは異なる支持体や画材を活用したことで、先に記したような新しい発見や感動がたくさんありました。
なかでも―これはおとなの目線での気づきですが―子どもたちが絵を描いている、まさにその時、どれほど真剣なまなざしで向き合っているのか、今回初めて見ることができました。
なぜなら、通常は画用紙などのように反対側から見ることのない支持体を使用するので、真正面から子どもたちの視線や手の動きを見ることはほぼ不可能です。
それが、両側から眺めることのできるガラスという支持体であったがために、それを見ることが可能になったのです。
もし今後このような機会があれば、お子さんが無我夢中で絵を描いている姿を横から眺めるだけではなく、真正面から見てあげてください。きっと、今まで気づかなかったお子さんのまなざしに出会うはずです。

今回を振り返り、「にじいろワークショップ」企画・指導の松澤先生は、
「常に新しい試みを加味して実践しているので、子どもたちの反応をひとつひとつ見ながら、そこで得たものをいかに今後につなげていくか。いわば毎回毎回が試行錯誤と発見の連続、それから反省の繰り返しですよ」
とにこやかに話してくれました。
子どもたち自身も、昨年体験して得たものと、今年のそれは大きく違うでしょう。
掲げるテーマは例え続編と称しても、当然ワークショップの内容は子どもたちと同じように日々成長し、変化し続けていくものです。
このワークショップに参加する私自身も、先生の言葉以上に試行錯誤と発見、そして反省の日々です。

※なお、今回のワークショップの作品は、当園ホームページ内の職員投稿「あおぞら美術館へようこそ(5/14)」でも紹介しています。

ドキュメンテーション

「透明キャンバス テラスでお絵描き」クレヨン編
テラスにお絵かきをします。
透明な画面での描画、描いた絵と向こうの景色がかさなって見えるかな。クレヨンの重なりが見えるかな。
クレヨンと絵の具も併用するか、またテーマ「花」「好きなもの」などと決めて導入するか相談したいと思います。

written by OSAMU TAKAYANAGI