【にじいろWS 2021-9月】ボディペイント

2021年9月29日 水曜日投稿


それは、“からだに絵を描こう!”ということ。

からだ(素肌)に直接、塗料などで絵や模様を描くことを「ボディペインティング (body painting) 」といいます。1960年代以降、それが「アート表現」のひとつとして、欧米などで認知されるようになりました。
もともとはもっと古い時代に、アプリジニというオーストラリア大陸やその周辺諸島に住んでいた先住民や、ネイティブ・アメリカンといったアメリカ大陸に住む先住民のひとたちが、自らのからだにペイントをする習慣があったといわれています。それは時に美しく、時に雄々しく、また宗教的な意味合いもあってのことだったようです。
もちろん、今回のワークショップは、そんな難しいものではありません。
今年6月のワークショップで、園内にある外階段や通路のガラス壁面をキャンバスにしましたが、今回はなんと、自分の〈からだ〉をキャンバスにします。
つまり、「ボディペイント」とは、“からだに絵を描こう!”ということです。

足に模様を描くだけで、なんだか別の生きものみたい。

9月後半にもなると、朝晩の冷え込みに秋の気配を感じます。でも、昼間はまだまだ暑さの厳しい日が続いています。そこで今回は、太陽の日差しをからだいっぱいに浴びて楽しめる、この夏最後のワークショップとなりました。
場所は保育園の2階テラスです。
そこに大きなブルーシートを敷き、4色ほどの絵の具とその容器、そして絵筆を数十本。
そうそう、絵の具にはボディソープを混ぜ合わせます。これ、実は素肌に付いた絵の具を洗い落とすのに、効果バツグンだそうです。
さあ、これで準備はすべて整いました。

参加する子どもたちは、あらかじめ汚れてもよい服装(半袖のシャツと半パンなど)に着替え、全員裸足でテラスに集合です。
着替えを済ませた時点で、どうやら子どもたちのテンションは上がりはじめたようです。いつもの服を脱ぎ捨てただけでも、なにか開放感のようなものを感じたのでしょう。子どもたちのこころとからだは、いつだって正直です。
「よろしくおねがいします!」と大きな声で先生へのごあいさつ。
元気あふれるその声に、じっとしてなどいられない、そんな子どもたちのエネルギーを感じました。

さて、先生も子どもたち同様に裸足になって、ひざあたりまでズボンをまくり上げました。
ではいつものように、先生がまずは「ボディペイント」のお手本を示します。
用意した容器の中の絵の具に筆を浸し、ぐるぐるとかき混ぜながら、先生自身の左足をゆっくり子どもたちの前に差し出します。次に、絵の具に浸した筆で、そのつま先からすねのあたりまで、地肌に直接幾何学的な模様を描きだしました。それも迷うことなく、一気に。
子どもたちは、先生がいきなり自分の足に模様を描いたことに、ただただびっくりです。
そんな子どもたちをよそに、今度は右足を出し、同じように地肌に模様を描きました。
描き上げると今度は、その模様だらけの両足を強調するようにバタバタと動かし、子どもたちの周りを駆け回って、飛んだり、跳ねたり。
子どもたちはそれを見て、キャッキャッ、キャッキャッと大騒ぎ。なぜって、動き回る先生の足は、なんだか別の生きものが暴れているように見えるからです。でも、足に模様を描いただけなのに不思議です。
しばらく興奮して騒いでいた子どもたちも、ここまでやれば、さすがにもう慣れたもの。
「ボクもやりたい!」「ワタシもやる!」と、いつもの“やる!やる!コール”の大合唱です。

体感した「アート表現」は、夏の想い出として記憶に残ります。

いよいよ「ボディペイント」のはじまりです。
おそるおそる筆先を手につける子、速攻で両足を塗りはじめる子、無我夢中で模様を描く子、絵の具をぐちゃぐちゃにこねまわす子。やり方に決まりはありません。自分のペースで、自分の思うように、自分の好きなところに描いたり、塗ったりすればいいのです。だって、キャンバスは自分自身の〈からだ〉なのだから。

最初は年中クラスの子どもたちでしたが、短時間のうちにほとんどの子の両手両足が、カラフルな模様で埋めつくされました。はじめのひと筆に迷っていた子も、周りの勢いに押されてか、やりはじめたら止まらずにあっという間に模様だらけです。
遠くから眺めると、半袖や半ズボンだった子どもたちが、まるで色とりどりの長袖や長ズボンをはいているようでした。 足もとも裸足のはずが、いつの間に靴下をはいたの?それとも靴?えっ、それ絵の具なの!?・・・なんてマンガのような光景に大笑い。
なかにはつま先からももの上まで、片足全部真っ白に塗った子もいました。クルっと回転をすれば、バレリーナの白いタイツを思い出します。
自分の手足だけでは満足しなかったのか、着ているTシャツにまでいくつもの模様を描きだした子もいました。

年長クラスの子どもたちは、曲線や幾何学模様より、具象的な絵を描きこむ子が多くいました。
ひとまず、何を描こうかな、と考えてから描きだします。
数人の女の子は、指の爪にいろいろ色を上手に塗りました。これは、お母さんの影響かな? 手くびにブレスレットや時計を描く子もいます。いま何時ですか?と思わず声をかけました。
腕に大好きなアニメのキャラクターを描く子や、両足一面に花や樹木、太陽など自然の風景を描きこむ子もいました。
そのうち数人の子どもたちが、半袖姿の保育士の両腕に、余すところなくびっしり絵の具を塗りはじめました。
「かわいいね」「きれいだね」などと子どもたちに言われては、保育士も自らキャンバスとして応じるしかありません。でも確かに、それは素敵なアートでしたし、子どもたちの豊かな発想力とセンスの良さに思わず脱帽です。

いずれのクラスも、完成後はひとりひとり台の上に立ち、「ボディペイント」の発表会です。どの子の手足も個性的で鮮やかにペイントされ、前衛的な絵画作品か、最高にオシャレな衣服をまとっているようでした。最後にとっておきのポーズを決めて、今日のワークショップは終了です。

その後、子どもたちはからだに描いた絵や模様を、シャワーできれいに洗い流しました。
からだに描かれた「ボディペイント」は消えましたが、体感した「アート表現」のおもしろさは、この先ずっと大切な夏の想い出として記憶に残ることでしょう。

世界大会も開催される「ボディペイント」は、おとなも楽しめます。

さまざまなイベントやテーマパークで、またはサッカーなどのスポーツ観戦で、自分の顔に国旗や愛らしいマーク、キャラクターなどを描いているひとを見たことがありませんか?
これらは顔に描く「フェイスペインティング」といいますが、これも「ボディペイント」のひとつです。
または地方で、自分のお腹全面にひとの顔を描き、本当の顔は編み笠などに隠して通りを練り歩くという愉快なお祭りがあります。そのお腹を揺らす、膨らますなどして動かすたびに、描かれた顔が変形するので、見るひとたちの笑いを誘います。これだって「アート表現」としてとらえれば、まさに今回のワークショップのテーマである、自分の“からだに絵を描こう!”だと思います。
いまでは「ザ・ワールド・ボディペインティング・フェスティバル(World Bodypainting Festival)」という、世界で最も美しく華やかなボディペイントを決める国際大会も毎年オーストリアで開催されています。 「ボディペイント」は子どもばかりか、おとなも楽しめる「アート表現」です。ぜひ一度、お子さまと一緒に楽しんでみてください。意外に、自宅で簡単にできるストレス解消法かもしれません。

ドキュメンテーション

夏の終わり、まだ気候が寒くならないうちに、思いきって、心と身体を解放する絵の具遊びを行います。
絵の具には、ボディソープを混ぜることで、洗う際に簡単に落とすことができます。
最初から思い切り汚すのでは なく、ゆっくり開放的な方向に向かいます。
無理なく、個人のペースを大事にしながらやりたいと思います。

written by OSAMU TAKAYANAGI