街にひらくデザイン
いつも子どものあそぶ姿が見える園
園児が集うホールの壁は外に向けて2面全面が透しガラスです。全開すると、窓の外に伸びるベランダまで空間が広がり、外との隔たりがさらに開放されます。道路と園舎の間の塀は、大人の背丈より低く周囲の家並みの景観に合わせた白い格子模様で、外からも中からも隙間から様子が伺えるようになっています。
「子どもの安全」を子どもを囲って外に向かって閉ざす方向ではなく、むしろ街に開くことによって、子どもの安全を保障するという設計思想です。
窓ガラスの向こうは、向かいのお宅の屋根。隣接する家との間はほとんど壁がありません。
街に向けてもオープンキッチン
キッチンは、外に向かう2面に加えてホール側の計3面を窓ガラスにしています。おそろいのキャスケットにキュッと結んだカフェエプロンに身を包んで働く調理師さんたち。街の人も園児たちも、その姿を身近に感じ、生きる原点である「食」をおいしいにおいを感じながら目にします。
この地に長い間育まれた保育園があった歴史を引き継ぎ、保育園を街にひらき、子どもたちをこの街で共に育んでいく保育をめざします。
キッチンの窓から向かいのお宅と隣のお宅が見えます。給食のおいしいにおいも届いているかもしれません。
安心できる空間をデザイン
保育のなかのスペシャルタイム
保育園の生活は、集団のなかで展開します。大勢の友だちとたっぷりあそべる時間はもちろん大切ですが、ひとりになれる場所や静かにできる場所で心安らぐ時間も、実はとても重要です。
子どもの中には、狭い場所が好きな子や、区切られた空間で落ち着きたい子もいます。どの子もみんな、大好きな場所があって、そこへ行くと心が落ち着いたり気持ちが切り替えられたり、そんな仕掛けがあおぞら保育園にはいくつもあります。
廊下は、子どもの絵のギャラリー。一角に、ふっと登場するスペースが「DEN」(あなぐら、隠れ家などの意味)。K君は狭い空間に入ると、まず照明の色を好きな色に替え、「宇宙」図鑑の大好きなページを確認すると、またみんなのところへ戻っていくのがお決まりのパターン。
降園タイムにも、親子それぞれの楽しみ方が用意されています。園生活との境にあたるエントランスにたっぷりの図書スペース。「この絵本、読んだら帰ろうね」。
ダイナミックにあそべるデザイン
毎日が避難訓練
2階のテラスから園庭に向かって伸びる通路は、透明な板で囲われていて、ここを歩く園児の姿も外からよく見えます。非常時にはこの通路から園庭にまっすぐにすべり台で降りられるようになっています。しかし、このすべり台は避難のためだけにあるのではなく、ふだんの遊具のひとつです。2階に保育室がある2歳の子どもたちも高いところを怖がる様子もなく勢いよくすべり降りてあそんでいます。
2階のベランダから1階への避難経路は、子どもにとっては「いつものあそび場」。あそび慣れた遊具と場所は、いざというときだって足がすくみません。
「思う存分」を支える安心
表紙にある遊具「スペースリング」とこの「ホーススィング」は、あそびの中から自分の身体を認知することが出来る遊具です。乳幼児期にはこのような力を育むことが大切。この遊具でダイナミックに誰もがあそべるためには、天井の強化が必須。天井を強化し、子どもたちが安全に思いっきりあそべる空間を実現しています。
「ホーススィング」に乗るだけでは物足りなくて、どんどんぐらぐら揺らす子もいれば、落ちるのが楽しい子どもも。